表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/36

第3話


 時刻は深夜2時。


 あたりはすっかり寝静まり、家の明かりもほとんど消えている。

 ボクたちは、急遽決行することになった散歩に出かけていた。

 夜になると途端に冷え込むため、上着も必要だ。


 結葉は、前にピクニックに行ったときに着ていた黒ワンピース姿。

 お気に入りなのか、何回か学校にも着ていた気がする。


「ねぇ、柊」

「なに?」

「この時間帯って、幽霊が一番出やすいんだって」

「だ、だ、だから……?」

「もしかして~、お化け怖いの?」

「ち、違うよ! 結葉が急に変なこと言うからびっくりしただけだよ!」

「やっぱり怖いんだ! もう柊可愛すぎ!」

「うわっ!」

「どれだけ私を悶えさせれば気が済むの? すりすりすり!」

「やめろって!」


 人がいないからいいものの、外で抱き着いてくるのはやめてくれ……!

 端から見たら、人目を憚らずにイチャイチャするバカップルに見えていることだろう。

 恥ずかしさが込み上げて、思わず顔が火照ってしまう。


 そんなとき、


「ワン! ワン! ワン! ワン!」

「うわっ! びっくりした!」


 通りがかった家の庭から、夜中にも関わらず、犬が大声で叫んできた。

 泥棒と勘違いしたのかもしれない。

 こちらに向かって走って来ようとするが、鎖に繋がれているため途中で食い止められる。

 別に悪いことをしたわけでもないのに、本能が働いて「逃げなきゃ!」という気分にかられる。



「……」



「結葉?」


 こんなとき、結葉ならなんだかんだ笑いながら犬をあやすものだと思っていた。

 しかし、結葉の目は、生き物に対して向けるようなそれではなかった。


 そう。言い表すのなら、ゴミを見るかのような。


 顔は無感情なのに、どこか憎しみめいたものも感じ取れる。


「……柊は私が守る」

「ん? 何か言った?」

「……私と柊の時間を邪魔しないで」


 結葉が口を開いているのは分かるが、ぼそぼそと呟くので、内容までは聞き取れない。


 すると突然、近くにあった大きめの石を持ち上げる。


 段々と犬に近づく。


「ワン! ワン! ワン! ワン!」

「おい、それでどうするつもり?」


 ちょっと胸騒ぎがしたので、結葉に尋ねる。



「……」



 こちらを振り向いてくれた。

 いつもの笑顔だった。

 しかし、彼女の口はいっこうに開こうとしない。



「結葉……」



 今宵は満月。


 雲に隠された世界が徐々に鮮明になっていく。


 月の明かりに照らされた彼女の姿は、黒い天使そのものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ