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ラズベリーチーズケーキとコーヒー

作者: まかろん

何か、あっという間の25年だったなぁ…


スマホの写真フォルダーを見ながら、呟く。


気に入ったものはプリントアウトして、手作りのアルバムに貼り付けている。


大好きなラズベリーチーズケーキとコーヒーとアルバム制作。


私の好きな時間。



あ、これ、4歳位だったかな…


懐かしいなぁ…

『ママ、くもってどこからくるの?』


『うーん、どこからだろうね…』


『パパならしってる?』


『うーん…どうだろうね…』


ここ最近、マイの質問攻めが増えた。


年少組、当たり前の時期。


私も元教員として発達心理学の心得くらいはあるから、頭では『なぜなぜ期』があることくらい理解してたし、その分、何も心得のないママ達より楽に子育て出来ると思い込んでた。


…現実は、そう甘くない。


なぜ?どうして?


マイの質問に1日にどれだけ付き合えば、この子は満足してくれるんだろう…


私のマイへの回答も、次第にぞんざいになっていった。




『…ねえ、ママはマイのこと、きらい?』


ある日突然、マイに言われた。


『ううん、大好きだよ!』


『うそ…』


今にも泣き出しそうなマイ…


『ウソじゃないよ!』


『じゃあ、なんでママはマイがきいてるのに ちゃんと こたえてくれないの?マイ、わからないから ママにきいてるのに…』


…………


言葉を失った。


娘はまだ4歳。


頭では「どんなに小さくても、子どもはちょっとした親の表情でも、親の心情を見抜く」と"知ってた"。


分かってた………"つもり"だった。


知識はあっても、それが目の前の我が子と結びついていなかった。


こんな子どもに、わたしの気持ちなんて分かるはずない…そう思ってた。


でも………


そんな私の気持ちは、マイに見事に見抜かれていた。


私のぞんざいな回答から『面倒臭い』という苛ついた気持ちを感じ取っていた。


…まだ4歳だと侮っていたけど…娘には、全部見透かされているんだ…


ゾクッとした。



じゃあ、どうすれば?


どうすればマイも納得するし、私もイライラしなくて済むんだろう…



暫くして、私はまずマイに謝ろうと、そしてひとつ提案してみようと決めた。


『…マイ、ごめんね、ママも知らない事が沢山あるから、沢山質問されると困っちゃうんだ。』


『ママは おとななのに、しらないの?』


『そうよ、だからマイ、これからは分からない事があったら、ママと一緒にタブレットで調べてみようか?』


『うん!』



それから…


『ママぁ、どうして おそらはあおいの?』


と、タブレットを抱えたマイが質問してくるようになった。


『じゃあ、調べてみようか?』


『うん!』

娘はあれから『自ら学ぶ』事が好きになった。


タブレットと並行して絵本も沢山読んでいたのもあり、小学校に上がって以降は図書館や書店に通っては、好きな本を読み漁っていた。


そして、大学を卒業し、就職し…


素敵な人とめぐり逢えた。


マイは明日、私たちの元を巣立つ。


このアルバムと共に。


これが最後か…


自然と涙が出た。


ラズベリーチーズケーキとコーヒーと…


明日以降は、何をお供にしようか…

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