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冥土の土産はメイドと共にあり  作者: 宮呂くろ
3/7

あなたの命、いただきます

―――――目を開けたら、そこはメイドカフェでした。



「…じゃねーよ!俺の家だよ!」

「あら、またどうしたの?皐月君、そんなにはしゃいじゃって…。」


「いわいやいやいや、いやを何回いいましたか?じゃなくて…」

あわあわするなってほうが無理がある。


落ち着け、俺。

深呼吸、深呼吸。

スーハースーハー。


クールに決めろ。

手を机に置いて考える。



ふと、机を見る。


兄弟が背中を合わせてどんぐりの背比べ。2〜3ミリごとに毎年刻まれてきた柱が、匠の手にかかったら…

「なんということでしょう!…でもなくて!!」


「ご主人さま、お茶をお持ちします!」

玄関のところの台所で、お湯を出すのに四苦八苦してた女の子がこっちを振り向いた。


ちなみにヤカンのそこは持ち手じゃないよ。

お湯出るところだから間違えないでね。

もっといえば今君が鷲掴みできるくらいだから、多分お湯じゃないよね。


よく見ると机におかれたお茶は、湯気も出ていない。

きっと、夏のプールの温度くらいじゃないだろうか。



「あの頃は、好きな娘のスク水がすごく眩しく見えたっけな…。」

「スク水…スクール水着のことでしょうか?

申し訳ございません、スクール水着はもっていないんです。」

くっそぉ…喋るってことはやっぱり幻じゃないのか。


ちなみに俺は裸エプロン派だからそんなのいらない。

いや待てよ…スク水の上にメイドエプロンてのも…


「はいはい皐月君、妄想やめー!とりあえず紹介しますね。

こちら神無月かんなづき ゆうさん。

玄関に長いこと待っていたみたいで詳しく話を聞いてみたら、メイドとして皐月君のとこで働くってことじゃない!皐月君も隅にはおけないわねー。

だから鍵は開けさせてもらったわよー。

ふふ、そしたら私はこれで失礼するわねー。」


皐月君またねーと立ち去る水無月さん。

勝手に鍵を開けて知らない人を入れちゃうなんて、俺にはプライバシーってものがないのか・・・。


「こほん!皐月様、神無月 遊と申します。

廃れるめいどきょうかいを憂いた、めいどマスターの命により派遣されました。

めいどきょうかいでは、独身男性から無作為にモニターを選ばせていただいてまして、

見事!皐月様が選ばれました。

今後は皐月様の命を頂きまして、御奉仕させて頂きますのでよろしくお願い致します!」


背筋をピンとのばす姿が愛らしい。

メイド協会?メイドマスター?

いやいやそんなことより今なんて…。


「あ、今なんて言ったっけ?」

「はい!御奉仕させて頂きますね、でしょうか?」


「違う違う。皐月様の、の後。」

「皐月様のめい、頂きまして…?」

「そう!それ。」

もしかして朝の謎の便箋って…



「手紙とかって出してくれたりしました?」

「はい!」

確かに便せんのこのファンシー具合は、目の前のメイドさんに一致する。


絹みたいに白い髪が印象的だ。

目もくりくりしてて、顔立ち、佇まいから小動物を連想させる。


うん、こりゃ森である日くまさんに出会って、スタコラサッサと逃げる

はめになりそうな女の子だ。

はっきり言って俺、卯月里 皐月の好みど真ん中、100点満点の100点、

花丸あげちゃう。



「そうか・・・。この命って命令のことだったのか。」

ちょっとほっとした。

こんなにかわいい女の子と、一つ屋根の下で過ごせちゃうなんてラッキーだ。


灰色の大学生活が、一気に薔薇色だ。

俺は、期待に胸を膨らませていた・・・のが勘違いだと知ることになるのはすぐのことだった。


「それでは、お命頂戴いたします!」

かわいらしくも殺気だった声が部屋に響き渡った。

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