暗殺予約、いただきます
「あなたの命をいただきます。」
ドアポストに入ったそれは、デフォルメされたTheクマさんの描かれた
かわいい便せんにこれまたかわいい文字で書かれていた。
ここは6畳一間のアパートの一室。
胡坐をかき、腕を組み考える男がいた。
「ふむ。」
正直意味が分からなかった。
卯月里 皐月20歳、彼女なし現在鋭意募集中。
人から感謝されることはあれど、
殺されるようなことはない・・・はずだ。
「もしかして、あれか――。」
ふと頭に浮かんだのは郷里の両親。
卯月里の家は宗教学者としてちょっとはその界隈では有名らしいんだが、もしかしてそれか?
確かにそっち方面のエセエッセイ、エセ論文の発表の後は、危ないから家を出るなと言われたこともあったけどさ。
「うーん、まったく頭が回らん。」
いや、でもそんなことこっち出てきてから一回も言ってないし誰も知らないはず―――。
熟考に熟考を重ねたが、それでも答えは出ない。
何分考えていただろう。
はっと時計を見る。
時刻はもうすぐ8時30分を回ろうとしていた。
朝の講義は、9時からだ!
「いやこんなことをしている場合ではない!」
俺は大学にもっていく鞄にその便せんを押し込み、急いで外に出た。
―――――――――――――――――――――――
「あらー。皐月君、今日は特に急いでいるわねー?」
カギをガチャガチャやってると、ちょっぴり間の抜けた声が聞こえてきた。
「あ、水無月さん。おはようございます!」
おお今日も抜群のプロポーション。
薄手のニットセーターに腰回りが強調され、
ゴムボールみたいな双丘に押し上げられたニット。そんなニットの悲鳴が今にも聞こえてきそうでなんとも―――。
「えっちだ・・・・。」
「え?」
しまった。声に出していたようだ。
「えち・・・エチュードを奏でるには最高の天気ですね!!!」
「皐月君、楽器なんてやってたかしら?」
「最近始めたんですよー、あははは・・・。」
くっそお、これでごまかせたか。
若干声が上ずってしまった。
ここまで築き上げてきた好青年のイメージが崩れてしまうのは阻止したい。
「ふふ、夜遅くはやめてね?そういえば、時間大丈夫?急いでるんじゃないの?」
「ほんとだ!ごめん、水無月さん。行ってきます!」
ふうどうやらごまかせたようだ。
足早にその場を離れ、わが学び舎へと向かった。
「うーん、大丈夫かしら?」
「—――。」
そんな俺の後ろを付ける影が一つ。
・・・と、その陰にまとわりつくにゃんこが1匹、2匹、3匹・・・。
「もう…だめ、離れなさい!」
ニャーン、ごろごろごろ。
「ああー!見失っちゃうー!」
俺の耳には届かなかったのはいうまでもない。