第8話 受付のロズレッド
よろしくお願いします。
「では次にクエストについての説明をしますね」
「あ、お願いします」
自分の特殊なスキルのことを考えていた僕はもう一度受付の言葉に耳を傾ける。
「クエストの難易度ですが先ほどから言うように、プレートの色と大きく関係しています。同プレート内の依頼であればFランクの冒険者の方がEランクのクエストを、Dランクの方ならFランクとEランクのクエストはもちろんCランクの依頼も受けることが出来るという訳です」
「なるほど……」
つまり自分の実力をちゃんと知っておかなければいけないという訳だ。
自分の実力を見誤って一つ上のランクのクエストを受けたために、大きな怪我や最悪の事態に陥ったとしても、個人の責任であることには間違いない。
このギルドのシステムはそういうことなのだろう。
「クエストの難易度を簡単に説明するなら、この街から離れていけばいく程難しくなっていくと思ってくださって大丈夫です」
「離れていけばいく程……?」
「はい、この街から遠く離れたところに『迷宮』があるのですが、そこに近付くにつれてモンスターたちも強くなっていき、迷宮内部に至っては『変異型』と呼ばれるモンスターも出ます」
「……?」
僕は聞きなれない単語に思わず首を捻る。
「えっと、迷宮ってところのクエストを受けようと思ったら、どのランクからなんですか?」
せめてそれだけを聞いておこうと僕は尋ねる。
「Sランクの冒険者にのみ、迷宮の探索が許可、依頼されています」
「あ、そうなんですか」
それを聞いて拍子抜けした。
どう背伸びしたって僕には関係なさそうな話だ。
それなら特に詳しく聞いたところであまり意味はない。
「因みにここみたいな街って何個かあるんですか?」
「はい、街はここの他にも何個もあります。先ほど説明した迷宮を、中心にして円を描くようにそれぞれの街が点在しています」
「じゃあそこに行くには迷宮に近付かないようにして、迂回していけば特に問題はないんですね?」
「はい、その通りです。あと街よりももっと大きな王都が一つだけあります」
「なるほど……」
名前から聞くに、全ての街を統治する都みたいなものだろうか。
日本で言えば、「街」が「県」だとするなら、「都」が「日本」といったところか。
「色々教えてくださってありがとうございます。因みにこれからクエストを受けられますか?」
「もちろん大丈夫ですよ。どの系統のクエストをお受けになりますか? 討伐系、採取系、雑用系、などがありますが……」
「うーん……」
僕は少しだけ悩む。
今日せっかく人里に来ることが出来たのに、あまり街から外に出たくない。
「えっと、雑用系でお願いします」
となるとやっぱりこれだ。
「えっ」
しかし何故か受付の女の子は驚いたような声をあげる。
「どうかしましたか?」
「い、いえなんでもありません。雑用系ですね」
僕が聞き返すと慌てて否定するが、雑用系を選んだのは何か間違いだっただろうか。
ただ、既におすすめのクエストを選び始めている今、別のを選びなおすのも忍びない。
「えっと、このクエストがおすすめですね」
そういって一枚のクエスト用紙を差し出してくる女の子。
見てみるとどうやら荷物運びのクエストらしい。
これなら色々「描」いたら結構早く済むかもしれない。
報酬を見てみても案外いい感じっぽいし、一度これを受けてみよう。
「じゃあこれでお願いします」
僕がそう言うと、受付の女の子は書類に手をかざすように示す。
言われた通り手をかざすとこれまで通り、一瞬だけ光ってすぐに収まる。
やはり色々なものをこの手順で済ませるのだろう。
便利なものだ。
クエストの受注が終わったので、僕は早速受付を離れる。
「あ、そういえば、名前聞いてませんでしたね」
そこで僕は受付の女の子の名前を聞いていなかったことを思い出す。
「これは失礼しました。私はロズレッドと申します。お見知りおきを」
赤い薔薇のような髪と瞳の女の子、ロズレッドさんは薄く頬笑みながら軽く頭を下げた。