章前
以前書いた小説です。
今の感覚からすると古臭いと思われますが
ご高覧賜ると嬉しいです。
もう死のう。
子供のころから、そんなことばかり考えて生きてきた。
『死ぬと言っている奴に限って、本当に死んだ例はない』と言われるし、小さい時から死のう死のうと思い続けて高校まで生き延びてしまったオレがいうのも説得力のない話だが、生と自殺の間にある壁は、なにがあっても壊れないほど厚くもなければ指が届かないほど高いわけでもない。心の中の本能的な躊躇が少し弱まれば、いくらでも乗り越えられる代物だ。
自分の体が、昔から大嫌いだった。
だから自分が大嫌いだった。
普通に生きられるわけでもなく、かといって障害を認められて手を差し伸べられるわけでもない。歯を食いしばって頑張ってきたが、分かったことはこの苦しみは一生続くという現実と、いくら苦しみに耐えたところで誰にも理解されない事実だけだった。
機会が欲しい。
今までの、取るに足らない葛藤やわずかな臆病さに負けて逃してしまったタイミングに勝る死の機会が欲しい。
今度こそ、きちんと死んでみせるから。
オレがどれだけ苦しんでいたか、きちんと証明してみせるから。
自分の回りの人間がどれだけオレの苦しみに無関心だったのか、薄情だったのか、むしろ加虐的だったのか、明確に示してやるから。
いつからか、そんな思いが頭から離れなくなっていた。
そして、彼女と出会った。