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プロローグ9 【異世界への出発】

 後はマウンテンバイクの納品までは実験1を繰り返すだけだ。パソコンに向かう。[ボーナスポイント確定]を開く。≪START≫ ボタンをクリックするとスロットが回りだす。≪停止≫ボタンをクリックするとドラムが止まりメッセージが表示される。

 『あなたのボーナスポイントは“193”となりました。

  <Yes>をクリックするとボーナスポイントが確定します。本当にOKですか?』

<No>をクリックしてキャンセルする。

 一昨日の晩から何回繰り返しただろう。3,000回は楽に超えているはずだ。1,000回ほど実行すると今回のBPの最大値は1,206だった。記録は更新したが未だ数値は低い。4桁の数値なので上限は、9,999 だと推測してるが、確証はないのでどんどん自信はなくなっていく。


 いや昨日だってステータスの基本値は、諦めていた時に突然良い数値が出たのだった。そうだ。赤文字や金文字の数値が出現したのだった。実験1のボーナスポイントも良い数値が出現したら 色が変わるはずだ。諦めずにクリック、クリック、キャンセルを繰り返す。


 ≪START≫ ≪停止≫  75 <No> 、≪START≫ ≪停止≫ 391 <No>

 ≪START≫ ≪停止≫ 118 <No> 、≪START≫ ≪停止≫ 316 <No>

 クリック、クリック、駄目、キャンセル、クリック、クリック、駄目、キャンセル、

 クリック、クリック、駄目、キャンセル、クリック、クリック、駄目、キャンセル、



 良い数値が出ないまま、時間になり呼鈴が鳴った。事前に連絡が無かったので全部揃ったのだろう。玄関を開ける。


 「こんばんは。先代、お久し振りです。」


と、挨拶が輪唱される。一人は無理だと思っていたが、5人もゾロゾロやってくるとは思わなかった。家にあがれと薦めるが、説明に時間かかるからと断られた。トラックからマウンテンバイクとカートを降ろして、早速説明が始めようとする。


 「ちょっと待ってくれ。これはシルバーカートでなくて、車椅子の大改造かオーダーメイドの特注品だろ?」

 「そうとも言いますね。」

 「そうとしか見えないぞ。」

 「本体と積載品の重量で200キロオーバーを想定すると車椅子を改造した方が早かったので仕方なかったんですよ。」

 「何で200キロオーバーなんだ? 私は積載重量は100キロと言ったはずだが?」

 「先代がシルバーカートと仰ってたので、100キロ積載した後に座るつもりだと思ったからです。」


 確かに、私はそういう風に想定して後輩に注文していた。反論できない。おとなしく説明を受けることにする。まずは、カートとバイクの使い方と連結のやり方のレクチャーを受ける。


 「荷台のこことここを横にスライドさせてロックすると広くなるので、大きい物も積めます。」

 「次に荷台の後ろに連結器があるので、これも後ろにスライドさせてロックしてください。ここにカートの連結金具を引っ掛けて閉じて、ここもロックしてください。次にカートの左右にある連結棒を伸ばしてバイクの左右にある連結金具と接続してください。これでカートとバイクが連結完了です。」

 「3点で連結するのか?」

 「カートと荷物で150キロを想定すると、1点だけの連結は危険すぎるとの判断です。」

 「後は念のための付属で、泥除けシートがあります。カートの下の横棒を上に引っ張って連結器のここに引っ掛けてください。カート自体が防水で泥汚れにも強いですがおまけの機能です。雨の降っている時や、路面の濡れているときにバイクに連結しないのが一番なんですけどね。」

 「カートの収納部分ですが、2段仕様になってます。安定性のため下段の収納部分は一番重い百科事典専用にしました。事典を積んでクッションと留め具で丁度のサイズとなってます。」

 「事典は今日遅くに入手したのじゃないのか? 現物無い状態でよく作れたな。」

 「サイズや重量はネットで調べたら判りますから、比較的簡単ですよ。」


 説明を聞いてると、頑張りすぎだとビックリしてしまう。連結部分は会社で造ると聞いてたからある程度は想像できていたが、このカート(運搬具)は想定外だ。上段はこれも本棚にもなれる収納部分となっている。収納部分の背面が折りたたみが出来る椅子部分となている。椅子は折り畳むと蓋をして収納できるようになっている。椅子を収納した部分はカートからはずすことも出来るとは本当に感心してしまった。


 マウンテンバイクに実際に試乗してみる。次に百科事典を載せたカートも実際に押したり引っ張ったりしてみる。アスファルトのような舗装された道の上なら問題はなかった。次にバイクとカートの連結の練習も行う。カートの椅子部分の収納と組み立てもやってみる。最後に連結したままバイクに乗ってみる。発進は、ギアを軽くしないと重すぎて無理だが、一度勢いがつくと大丈夫のようだ。

 後は悪路でどうなるかだが、こればかりは異世界に行ってみないと判らない。無理のような予感がしてたまらないのだが、異世界では15歳と若く体力はあるはずなので、案外大丈夫かもしれない。


 「先代、乗り心地はどうでしょう?」

 「思ってたより乗り心地は良くて、満足してるよ。急な我儘で時間足りなかったのに、大変だっただろう。本当に感謝する。ありがとう。」

 「やめてください。先代が頼ってくれて嬉しかったぐらいです。」

 「そうですよ。先代の我儘は珍しいですから、かえって力入ってしまっただけですからね。」

 「会社の他の奴らも、先代の為だって頑張りましたから。」


 社交辞令だとしても嬉しい台詞だった。最後にカートを部屋に運んでもらい、レジャーシートの上に置いてもらう。


 「では先代、失礼します。」

 「また、会社に顔出してくださいね。」


 等々、後輩や元会社の若手が挨拶して帰って行った。実際に会って顔を見ると、もう会えなくなるから寂しい気持ちになったが、気付かれないように私も笑顔で挨拶して見送った。




 カートは既に下段には百科事典が収納して固定してあるので、上段にその他の持参する本を収納する。上段の空いている部分にはタオルや冬用のスキーウェアを入れると隙間なく収納できた。大き目の3WAYバッグに、購入してきた残りのグッズを入れる。これはゴミ入れみたいなものだ。使用途中のサランラップ、ゴミ袋、アルミホイル等の台所関係や、机の引き出しの中にあった文具用品等を詰め込んだ。最後に家の中を見回って、ここに残しておいても捨てるような物を集めてシートの上に並べる。不要な物はそのまま段ボール箱に移し、役に立つかもしれない物はバッグに入れる。クーラーは冷凍品等なので朝に行う。


 後は実験1しかない。

 クリック、クリック、駄目、キャンセル、クリック、クリック、駄目、キャンセル、

 クリック、クリック、駄目、キャンセル、クリック、クリック、駄目、キャンセル、

 クリック、クリック、駄目、キャンセル、クリック、クリック、駄目、キャンセル、

 クリック、クリック、駄目、キャンセル、クリック、クリック、駄目、キャンセル、


 明日の8時が出発の期限だから徹夜もやむなしだけど、やりたくはない。そう考えていると、やっと出ました。ボーナスポイント 2,190。 色付きではないけど初の2,000以上である。出発までにこれ以上の数値が出るとは思えない。<Yes>をクリックして確定させる。SP画面の初期画面が自動で開いて、私の所有ポイントが表示された。



 1.初期ポイント   種族:人間       ポイント:100

 2.獲得ポイント   年齢:015      ポイント:150

            ジョブ数:3      ポイント:140

            レベルアップ回数:0  ポイント:0

 3.イベントポイント イベント回数:0    ポイント:0

 4.ボーナス                 ポイント:2,190

 5.合  計                 ポイント:2,580

 6.残  高                 ポイント:2,530



 サービス選択を検討してみる。成長速度のアップとステータスのアップ以外は緊急性は無いように思う。成長速度10倍にするときの必要ポイントが 1,020 ジョブプラスでジョブ数を9にするにはポイントが1,260-60=1,200が必要なので、SPの残高は310だ。SPを80使ってアイテムボックスを強化し、残高230を保留しておく。これが第一案である。

 第二案は 2540-70=2470 を消費しジョブ数を10にして、残り60を消費し成長速度600%にするかだな。一番ステータスの低い自由民でもジョブプラスするだけでステータスが+120されるのだから、ジョブプラスを優先した方が良いようだ。

 獲得ステータス値と固有技を見て追加するジョブは、戦士・兵士・傭兵・楯使いの戦闘職と薬師・収集士・商人を選んでみた。再設定で何度もやり直せるので、気楽に選択できるのは嬉しいよね。

 SP60を消費して経験値アップを後4つ取得する。これでSP残高も丁度 0 になる。


 長かった実験も終わり、SPの配分をして取得するスキルの選択も終了した。出発の直前にクーラーの積み込みを終了すれば、準備も終わりになる。重要なものを忘れている気がして不安もあるが、こればかりはきりがないであろう。

 これは結婚するときや会社を設立したときと同様で、準備期間が1ケ月や1年があっても不安はなくならないし、完全な準備など出来るものではないからだ。ただ購入したのに持参するの忘れるような単純ミスだけはしないように気を付ける。それだけは注意しよう。

 電気を消して布団にもぐりこむ。若かったら興奮して眠れないだろうが、年寄はこういうとき楽だね。すんなり寝ることに成功する。





 朝目を覚める。今日は異世界への出発日だ。資源ゴミを出した後、牛丼屋に行く。異世界に行く前の最後の御馳走は、牛丼だ。生まれて初めて、生卵を2個注文し醤油を混ぜた後、ツユダクの牛丼にぶっかけてかきこんで食べる、生卵2個を同時とはなんという贅沢なんだろう。

 帰りにコンビニでおにぎりやサンドイッチと牛乳とコーヒーを買う。

 

 家に帰るとクーラーボックスの準備を完了させる。クーラーボックスはハンドルとホイール(車輪)が付いた60リットルタイプだ。冷やしたペットボトルは縦置きにする。乾燥させた計量カップや冷やした調味料はタッパや分別袋に入れる。コンビニで買ったおにぎりや昨日作ったゆで卵等もタッパに入れてクーラーに入れる。包丁は段ボールで作ったケースに入れてガムテープで固定する。最後に凍らせた蓄冷材やポリタンク容器を隙間や上に載せて終了だ。


 後輩への依頼状・委任状・遺言書・通帳・印鑑をまとめて、机の上に置いてある。もし忘れている事があってもあいつなら無事にこなすだろう。 異世界への転生が失敗した時は苦しい言い訳をしなくてはならないが、何故か失敗する予感がわいてこない。そろそろ出発の時間だ。


 半袖のシャツとジーパンに着替える。迷彩服とベストを重ねて着る。サバイバルナイフは専用ホルスターで右足に装着する。ウエストポーチには催涙スプレーを入れておく。特殊警棒とスタンガンは専用のショルダーホルダーに装着しベストの下に目立たぬようにしている。サングラスや小物はベストのポケットやウエストポーチに入れる。念のため500mlのペットボトルをズボンのポケットに入れる。格好はこれでいいかな。

 パソコンの前にレジャーシートを開きマウンテンバイクを置いてある。バイクとシルバーカートは連結済である。シートの上で靴を履きかえる。中型のリュックをかつぎ、小型のリュックは首にかける。本当に重いぞ。3WAYバッグは前輪カゴに載せる。ヘルメットをかぶる。クーラーは便利グッズのロープを結び左手でつかんでいる。



 パソコンを起動して最終のアイテム設定画面を開く。残っている宝箱は3つしか残ってなかった。

真ん中でも選ぶかな。クリックする。メッセージが現れるが、以前見たものとは違っている。


 『2名拒否されましたのであなたが最後になりました。特別サービスです。

  3つの宝箱をプレゼントしますので全てクリックしてください。

  自動で異世界にジャンプします。』


 残り物に福があったと喜ぶべきなのか。これで幸運を使い切ったとかはないよな。時計を見る。もうすぐ8時で残り時間は殆どない。思い悩む時間はもうないよな。部屋の中を見回してみる。最後に机の上の写真を見る。


「いってきます。」


と声かけてから、残りの宝箱をクリックする。


 私の体も用意したバイクやカートも、私のいた部屋とか見る物すべてが光っていく。全ての色が薄くなって単色の輝く黄色に染まり前後左右の感覚が無くなった時、体が浮いてどこかに吸い込まれていく感覚を覚える。周りの世界は全て黄色に溶けて何も見えないが眩しくはない。不思議な感覚を楽しんでいると一瞬すべてが真っ黒になる。


 異世界に到着したのだ。理由はないが私はそう確信していた。これから第2の人生が始まったのだ。

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