プロローグ2 【異世界への準備2】
拙い小説ですが、ブックマークが3人ついて嬉しいです。
やっと次を投稿できました。
私が異世界に行く準備を始めるに当たって考えたのが、勿論この異世界への転生が不可能だという可能性だ。このメールが悪戯の可能性の方が絶対に高いのだ。だから転生が不可能だった場合、準備したものが全て無駄になってしまうだろう。その危険を避けるため、こちらの世界でも使える物で準備することを第一原則とする。
例えばマウンテンバイクは、丁度自転車も持ってないから無駄にならないはずだしこちらでも役に立つはずだ。シルバーカートは今は元気で不要でも、もっと年取って足腰が弱ったら必要になるだろう。百科事典も居間に置いて家具代わりに重宝するはずだ。そうに決まっている。
そして2番目に準備が無駄になる場合は、異世界への転生は成功するが異世界にこちらの世界の物を持っていけないときだ。というか、異世界に行くときは裸一貫で何も持っていけないと考えるのが合理的なのだと思う。異世界からの招待状にも異世界に物を持参できるということは一切載ってない。ネルギーコストを考えても、異世界に物を移動させるのは無駄だと思う。
異世界に転生する小説などを読んで、納得のいかない点がそこなのだ。異世界に着いて裸で困ったという話は殆ど読んだことがない。赤ん坊で転生した場合を除けば、少なくとも着ていた学生服やスーツや下着はそのままなのがセオリーなのだ。そのくせ普通はポケットに入ってる携帯や財布のことに言及している小説はあまり無いのは矛盾だよな。
ただし私も裸一貫で転生されるのは願い下げである。
そこはご都合主義を発揮して、着用している服のように体に触れているものは、転生と同時に持参できる法則を無理やり仮説として組み立てることにする。矛盾していようがご都合主義だろうがこの法則を前提に異世界に行く準備をすることにした。この法則が成り立たないときは、異世界に裸で到着することになる。
さて次の準備を始めよう。
まずはネットで調べないと。検察ワードは「予防接種」である。こちらの世界の病気と異世界の病気が同じかどうかなんて判るわけがないが、予防できることなら病気になりなくないからな。日本では死なない病気でも異世界だと死亡確実なんて十分あり得る。問題は3日間しか余裕がない点だが、はい、やはり無理でした。2回以上注射する必要のある予防接種や、予約してから1週間後という予防接種ばかりである。せめて破傷風と狂犬病はしたかったのだが、無理なものは無理だ。権力を持っていたら別だったのだろうが、知り合いの医者に無理言ってインフルエンザの予防接種を明日の午前中に予約入れられたのが精いっぱいだった。
次にネットで調べるのは、アウトドア関係についてである。初心者のキャンプのやり方やキャンプ用品の選び方を参考に、購入する用品のリスト作成をする。勿論素人よりベテランや専門家の意見を聞いた方が良いので、まずは「アウトドア専門店」と「登山専門店」で調べて購入する店をリストアップした。家から近い店と大型専門店と創業が古い店を選んでマップを印刷し、自動車で出発した。
何故キャンプ用品を買うかというと、異世界に到着した場所人里に近いとは限らないからだ。徒歩で何日もかけないと人里に辿り着けない状況なんて考えると恐ろしすぎる。異世界に到着したのはいいが、飢え死にしたり獣に襲われて死ぬのは是非避けたい。5日間か1週間分の飲食糧とテントや寝袋はぜひ欲しい。異世界到着後も、旅や冒険で役に立つだろう。
最初に、ベテランが揃っていると思われる創業年度の古い店に行くことにした。ホームページを見ると歴史があるだけでなく2階建ての大型店で品数も豊富だと思われるからだ。実際に着いてみると、客も大勢いて混雑しており、人気のあることが分かる。従業員と客の会話を横で聞いても専門用語で私には分からないこともあるが、熱気がありその雰囲気を私も楽しむことができた。
店の中を一周して登山やキャンプ用品を眺めることにした。用途が分からない登山用具でも眺めるのは楽しいものだ。暫く店の中を眺めながら移動していると、テントの展示コーナーに着いた。個人用から大型テントまで様々なタイプが揃っている。テントは購入するのは決定なのでじっくりと見ていると
「買う商品はもうお決まりですか?」
と後ろから急に話しかけられた。ビックリして振り向くと高校生か20歳ぐらいの若い女の子がいてニッコリと微笑んでいた。
「いいえ。未だ決めてないです。テントとかキャンプ用品を買いに来たけど、目移りしちゃって困ってたところです。」
「家族でキャンプに行くのですか?」
「知り合いに誘われてキャンプに行くことになって、個人用のテントを買いに来たんですよ。」
「あら、個人用が欲しいのですか?」
「はい。ですから一人で組み立てるのが簡単なタイプが良いです。若い時分に数回キャンプ行った程度ですので初心者と考えてくださいね。他には、多少高額でも良いので軽くて丈夫な物が希望です。」
「それでしたら、これはどうでしょうか? ワンタッチテントというタイプで、女性でも簡単に設置ができますし、重量も3キロ未満と軽く運搬が楽なんです。一番人気の商品なんですよ。
こちらのテントもお勧めです。重量は4キロと重いのですが、その代わりに防水性能と防風性能が高いです。ポップアップテントタイプで設置はワンタッチタイプより簡単ですが、テントを畳むのが難しいですね。それから・・・・・。」
はい。再びビックリしましたとも。笑顔のかわいいお嬢さんなのに、マシンガントークが始まりました。本当は女子店員なのかと思うくらい商品知識も詳しい。会話してみると感じもいいし、聞いてみると時間が空いているというので、アドバイザーとして頼むことにした。
お嬢さん本人も登山とかトレッキングの話をするのが楽しいらしく、報酬はパフェということで直ぐアドバイザーになることを承諾してくれた。
テントは先に薦められたポップアップタイプの方を選んだ。テントの畳み方は店が実地練習をしてくれることが分かったからだ。性能も高く3人用だったので、荷物を入れて余裕がありそうなのも良かった。
次に寝袋を選ぶことにする。
「何か欲しいものはありますか?」
「ネットで見て便利そうと思ったんだが、実際はどうなんだろう.」
着ぐるみというか 展示している人型寝袋を指さした。ネットで寝袋を調べてると、マミー型・封筒型とかあるが違いがよく分からなかった。そこに人型というか着ぐるみタイプの寝袋を見つけ、着ながら歩けたり便利そうだなと気になっていた。
「私はいい商品だと思います。安いものだと耐寒性も低いのですが、それは全ての寝袋にもいえることです。この展示してるものは最低使用温度も5度と十分にGWから秋にかけて使うことができますよ。素人には薦めませんが、暖かいインナーで調整するなど十分に準備すれば冬でも使用可能です。但しあくまでも寝袋ですので屋外でずっと着用するのは破れたりしやすいのでやめた方がいいでしょう。火にも弱いので、火の傍での着用はしないでください。爆ぜた火の粉で燃えたら大変なことになりますから。・・・・」
注意点はあるが寝袋として十分及第点であり、車中泊や家の中でも使えるなど応用もきくらしい。あとはやはり男性だと恥ずかしがって選ぶことは少ないと指摘されたが、何も問題ではないのでこの人型寝袋に決定することにした。どうせ異世界で一人の時に使用する予定なのだ。少々恥ずかしい格好でも性能が良ければ構わないのである。
お嬢さんのお勧めで、テントの下に敷くグランドシートとテントの中に敷くインナーマットとエア枕を追加しました。1泊のキャンプならともかく連泊するなら、疲れが残らないようにするため必須なんですと力説してくれまして、充分納得できる理由だったので迷いなく購入です。
次に素人では全然わからなかったのが靴である。本格的な登山靴からトレッキングシューズまで実に様々で、これだけは専門家に丸投げしようと考えていたのだ。
「キャンプで履いていく靴は何が良いんでしょう?」
「履きなれたスニーカーで十分です。」
「えっ?」
「履きなれた靴が一番ですよ。」
「雨が降ってぬかるんだ道を進んだり、足場の悪い場所で作業するときは、専用の靴の方が安全だと思ったんですが?」
「そういう状況に遭った場合はですね。」
「遭った場合は?」
「テントで休むか、車で休んでください。もしくはキャンプを中止です。」
「・・・・・・・」
要は無理をするな。無理をしても楽しくないし、怪我する危険が高くなるだけだと、御嬢さんは仰っているのです。実に正論です。素人にする忠告として100%正しい。
ですが異世界に行く予定の私としては、それでは困るのですよ。異世界は足場の悪い道ばかりだと予想されるので、それなりに頑丈な靴が必要なんです。理由は言えないけど是非とお願いすると、お嬢さんは何度も、履き慣らしてからキャンプに行くんですよと言いながら、私のためにトレッキングシューズとスポーツサンダルを選んでくれました。
テント、寝袋、マットなどを運ぶため60リットルの最高級のリュックザックを購入し、お嬢さんの指導の元に詰めていく。お嬢さんの意見を入れてリュックザックに他のキャンプ用品も同様に詰めていく。雨具、ロープ、帽子、手袋、同じガスボンベを使用するランタンとバーナー、懐中電灯、着火用品、コンパクトにまとめられる調理道具や食器、等々。
私は最初、食料品や飲み物も同時に入れるため90リットルを希望したら、即座に却下された。その代わりに、飲用水と食料の運搬用に推薦されたのが大型クーラーボックスと5リットルのポリタンク容器を5個だった。店で売ってた、ミネラルウオーターとアルファ米と保存食セットも氷点下保冷剤とまとめて購入する。
当初の予想よりも大荷物になってしまったのは誤算だが、足らないよりは余った方がましなので気にしてない。重すぎて移動できないのなら、廃棄するか人目に着かない場所に隠せば良いだけの話である。私はただ、異世界到着から人里に辿り着くまでの生存率を上げるように準備したいだけだ。
勿論いくら準備しても予想外のことは起こるだろう。異世界に到着したら、そこが砂漠だったり冬の雪山登山のような状況だってありえる。その場合はすぐ死ぬだけである。素人が一人では、いくら最新の最高装備を準備しても無理なのは判るから諦めもつくというものだ。
買い物が終了し、店員に荷物を車まで運んでもらう。最初の店で準備が済んだのは嬉しい誤算だ。お嬢さんには本当に感謝しないといけないので、今日の昼御飯の予定の店に連れて行くことにした。最初の約束はパフェだったのに、ケーキバイキングの店に連れられてお嬢さんはビックリしていたが、すごく嬉しそうに笑ってくれたので私も満足できた。
何故、昼御飯にケーキバイキングに行くの? 疑問に思うのは分かるが理由は簡単なことだよ。異世界にもうすぐ行くんだ。異世界で食べられそうもない御馳走は、後悔しないように食べておかないといけないじゃないか。私は甘い物も大好物である。