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これが、カルチャーショック?

 気分を落ち着かせるにはお風呂でリラックスするのが一番だね。

 ミリナさんに案内してもらってお風呂にやって来ました。

 さっきの部屋にはお風呂は無いそうです。お湯を沸かすのに火が必要だから危ないので、別の建物にあるんだとか。

 ちらっとお風呂を覗いてみたら、皇帝陛下のほどではないけど広い。旅館の大浴場とかより大きいかも。


「広いですね」


「そうでしょうか。普通くらいですよ。一般的な浴場もこれくらいの大きさです」


 うーん、ミリナさんが言うと本当に普通なのかわからない。感覚とか庶民とはずれてそうだし。

 考えても仕方がないので、私はとっとと服を脱いでお風呂に入ることにしました。変な緊張で冷や汗かいたし。お風呂入ったばっかりなのに。


「あの、入浴剤ありますか?」


「ニュウヨクザイ、ですか?どのようなものでしょう?」


 見た感じ何も入っていなさそうだから何か入れたいなと思ったんだけど……無いのかな、入浴剤。


「お風呂に入れる物なんですけど。いい匂いがしたりする」


「それは……香水を湯に入れるということですか?」


「うーん、何かが違うんですけど……」


 本当に入浴剤が存在しないようだ。まあ無しでも入れるからいいかな。ちょっと寂しいけど。それによく考えてみたら、あんなにでっかいお風呂に入浴剤って、どれくらい入れればいいんだろう。

 服を脱いで、階段っぽいところからお風呂に入ります。本当にどこかの旅館っぽいな。

 にしても、ここのお風呂ってみんな深いのかな。溺れたからわかるけど、皇帝陛下のお風呂もけっこう深かった。このお風呂は私の胸くらいまであるよ。

 立って入浴するのは慣れないので、階段に座ってのんびりすることにします。熱めのお風呂なので、全身浸けっぱなしにしてたらすぐのぼせそう。


「あの、ミヤノナナミ様」


 振り向くとミリナさんが心配そうな表情で立っていました。いつからそこにいたんですか?全然気付かなかった。


「はい。……あの、宮野菜々美じゃなくて、菜々美だけでいですよ」


 さっきから気になってたんだけど。様付けなんて慣れない上にフルネーム、ちょっと発音とかも違うから違和感が……


「では……ナナミ様、どうかなさいましたか?お寒いのでしたら肩までお浸かりください。それとも入浴後に温かい飲み物をご用意しましょうか?」


「寒くはありませんけど……何か?」


 むしろ熱いから肩を出してるんだけど。寒そうに見えるようなことをしたっけ?


「長くお浸かりになりすぎでは……」


「へっ?だってまだ入って少ししか経ってませんよ」


 五分も経ってない。 いつも家じゃ最後に入ってるから好きなだけ長風呂してるんだよね。


「お湯に浸かるのは身体全体を濡らすためでは?」


「そうなんですか!?」


 こんなにでっかいお風呂を、そんなもったいない使い方してるんですか!?まさか、入浴剤が存在しない理由ってこれだったりする?


「長くお浸かりになりたいのでしたら構いません」


 そう言われても……あの、視線が気になってゆっくりどころじゃないんですけど。これが、カルチャーショック?

 ミリナさんの視線が気になったので、かなり早くお風呂から上がりました。


「あちらで髪の毛などを洗うことができますが」


 そう言ってミリナさんが指差したのは大きな鏡と椅子のあるお風呂場の端の方の場所。お湯を貯めてある水槽らしきものも置いてある。

 長湯できなかったし、洗っていこうかな。



 私は椅子に座ってシャンプーを探してみたんですが……どこにもないです。どうやって洗えというんだろう。


「髪を洗わさせていただきますが。よろしいですか?」


 いつの間にかミリナさんが私の後ろにシャンプーやコンディショナーらしき容器を持って立っていました。


「えっ?大丈夫です。自分で洗えます」


 まあ、偉い人とかは髪を洗ってもらっててもおかしくありませんから、ミリナさんが髪を洗いましょうか、なんて言っても不思議ではありませんけど。自分で洗えるので大丈夫ですよ。


「所々髪が痛んでいるように見えましたので」


「そうですか?」


 それなりに頑張って洗ってるつもりだったのに、こういうのに詳しそうなミリナさんに言われると不安だ。やってもらった方がいいのかな……美容室で洗ってもらうことはもちろんあるけど、それはお金を支払ってるからで。タダでやってもらうのはちょっと気が引けるなぁ。


「あの、どうなさいますか?」


 そう言っているミリナさんの手にはしっかりとシャンプーの容器が握られています。


「お願いします……」


 やってほしいなって気持ちと、後ろめたい気持ちが半々くらいです。


「では、失礼します」


 ミリナさんは洗面器でお湯を汲んで、丁寧に私の髪を濡らしてくれます。そして手にシャンプーらしきものを乗せて、私の髪を洗ってくれます。

 頭皮をマッサージするように優しく揉んでくれます。美容室に行ってる気分です。


「……本当に染めずに黒髪なのですね」


 驚いたようにミリナさんが呟きます。


「はい。ここではそんなに珍しいんですか?」


「こちらの大陸では滅多に見かけません。もうひとつの大陸でも珍しいそうです」


「日本では当たり前なんですけどね」


 むしろ金髪や茶髪の方が珍しいよなぁ。染めてる人も多いけどやっぱり黒髪の方が圧倒的に多いし。


「……先ほどのニュウヨクザイというものもニッポンという国のものなのですか?」


「はい。いい香りがするし、肌にもいいんですよ」


「お湯に長く浸かるというのも、ニッポンの伝統なのですか?」


「うーん、伝統というよりは、文化ですかね」


 日本のお風呂は世界に誇れると思いますよ。あんなにゆったりのびのびできるものはなかなかありません。


「本当に異界からいらしたのですね。陛下からお聞きしたのですが、信じることができず……」


 それはそうですよ。私だって今の状況を全然信じられませんから。

 そうこうしているうちに、ミリナさんは頭を洗い終えていたようです。お湯で流してもいいかと聞かれました。


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