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左 翔太朗

カルミナの泉

 これは、十字の旗を掲げる者たちが野をかけていた頃のお話じゃ。

 カルミナの村の近くにある森の奥深くに、不思議な泉があった。

 傷ついたものが泉の水をあびればたちまちその傷は癒え、内気な者が一口水を飲めば明るく大らかなお人になったそうな。老人が水を浴びればその部分は若かりし頃へと戻り、声なき者がその水飲めば、美しい声を出せるようになった。だが欲多き者が泉の力を借りようとすれば、その身に災いが降りかかるとも言われておるのじゃ。

 そんな噂が耳に入ったのか、隣の国の王様がいらした。そのお方は厚顔不遜、唯我独尊で、あまり民草から慕われておらん。泉の災いもなんのその、刃向うものは剣で切り捨てていったんじゃ。

「これよりこの土地は我の物だ。刃向うことはばかりならんぞ!」

 国王様はそう言って、カルミナの村を自分のものにしてしまった。そして泉へとおもむいて水を口に含み、村人たちの前へ現れた国王様。だがどうしたことか、いきなりうめき声をあげて苦しみだしたんじゃ。地面を転げまわった挙句、国王様はその場で息絶えてしまったそうじゃ。

 それ以来親が悪い子には泉の水を飲ませる、と言って聞かせるようになったんじゃ。

 周辺諸国に噂が広がるころ、一人の老婆が村に訪れた。着ている服は擦り切れており、肌もしわしわで、歩く速さはカメより遅い。そんな老婆は泉のある方へと足を運んで行った。そんな姿を見ていた村の若いもんが、老婆を背負って泉へ送っていった。

「婆さんの目的は、大方若返りってことだろう?一体どうしてさ」

 若いもんは興味本位で尋ねる。

「この体は病に侵されて、もう先が長くなくてね。長生きして、孫娘の結婚式に出てやりたいんじゃ」

 しゃがれた声で、老婆は若いもんに告げる。それからいくつかの世間話をすると、泉へと到着した。

「そいじゃ、少しでも長生きできることを祈っているよ」

 若いもんがそう言って村へ引き返したのを見た後、老婆は水を口に含んだ。

 するとどうだろうか、かすれていた声は聞く者全てを虜にする美しい声へと変わったんじゃ。そして顔に水を浴びせる。泉の水面に自分の顔を映してみれば、何とも可愛らしい娘の顔がそこにはあった。

 ここで老婆は考えた。体を泉につけてしまえば全身若返ることができるのではないか?

 それならいざ行動するのみ。服を脱ぎ捨て、泉にその体を沈める。さて頃合いかと思って出ようとするも、いくらもがけどもがけど

 一向に水面が近づいてこない。

 それもそのはず。この時老婆は、赤ん坊にまで戻ってしまっていたのじゃ。老婆は沈んでいく中で、村の言い伝えを思い出した。

『欲深きものが泉の力を利用すれば、その身に災いが降りかかる』

 その一方。老婆を送った若いもんは、何日経っても戻ってこないことに不思議に思い、ある夜泉に向かって足を進めた。近づくにつれ、どこからか赤ん坊の泣き声がしてくる。そして泉についた途端、赤ん坊の声がより一層強くなったんじゃ。けどどこを見ても赤ん坊はおらず、泉の淵にあの老婆が着ていた服が置かれているだけじゃった。

 それ以来夜になると、どこからか赤子の泣く声が、響き渡るようになったそうじゃ。

 己の欲で誰かを利用すれば、その身に災いが降りかかってくること、皆も忘れてはいかんぞ。

こんな風にちゃんと書いたことがなかったため、戸惑いながら書きました。今後、良い作品が書けるように頑張ります。

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