結着
最終話です♪
放課後は茉実と塾へ直行。
くっついてくる永山くんとは駅でバイバイ。
疲れた頭にいっぱい勉強を詰め込んで、やっと今日一日の予定は終了。
「あーお疲れ様!やっと帰れるね。茉実、お茶していく?」
「うーん、甘いもの飲みたいかも。ココア?」
「いいね!じゃ、駅上のカフェ行こうか。」
「そうしよそうしよ!」
しばらく二人でお茶してから、駅で別れた。
電車で二駅だけど、なんか睡魔に襲われそう。
寝たら確実に乗り過ごしちゃうだろうから、気を引き締める。
すぐに降りる駅に着いて、家路を急いでたら。
幹線道路からそれて、住宅街へ一歩踏み入れた時、急に目の前に大きな犬が現れた。
なんだろう?ハスキー?とにかく大きい。私の腰くらいまである。精悍な顔つきだから、狼にも見えたりする。でもなんか…違うんだよねぇ、雰囲気?目つき?
なんかさ、ガン見されてるのよね…私。おまけに低い声で唸ってるみたいだし。
動けないから睨み合ってるみたいな形になってる。
でも、その横を通らなければ家には帰れないわけだし?
違う道を行こうかとも考えたけど、なんか追っかけてきそうな予感がしてまたまた動けない。
さすがに怖くなってきた。
電話して、奏に迎えに来てもらおうかな?
カバンのポケットに入れてるケータイを取り出そうとしたら、いきなり
「ワンッ!!」
と吠えられた。かなりドスの利いた声。
「きゃっ!」
急だったのでびっくりして座り込んでしまった。
すると、
「ほら、また魔物を寄せ付けてる。」
と言う声と共に、腕を引かれた。
「…永山くん。」
「朔だ。お前の香気はホントすげーよな。こんな奴まで惹きつけちまう。」
立ち上がらせた私を柔らかく抱きしめながら、彼は言った。そして目の前の犬に向かって、
「この子はオレのだから。他所に行きな。」
と言って、私を抱きしめていない方の手を、犬に向かってかざした。
やっぱり私には、何をしたのかさっぱり分かんないけど、なんかの力を使って追い払ってくれてるのは事実。
手をかざされた犬は、すぐさまどこかへと姿を消した。
犬がいなくなって、更に緊張が解けた私はもう足もガクガク。一人では立っていられない。
体中の緊張が緩んだ私は、大きく息を吐き出してから、
「…怖かった。ありがとう。」
しっかりと抱きしめてもらっている腕の中で、小さな声でお礼を言った。
「オレから離れるからだろ。」
「何だったの?あれは?ただの犬じゃないよね?」
「狼の一族だろ。変化まではできてないから中等の魔物だ。でも結構やばかったろ。」
「うん。ホント、どうしようかと思った。動けなくなった。」
宥めるように、慰めるように私の頭を撫で続けてくれる。なんか、ちょっと、みなおしたかも。
「歩けるか?とりあえず帰ろう。」
「うん。」
よたよたしていたけれど、彼に支えられて家に着いた。
食欲もなく、疲れ果てていたので、お風呂に入ってすぐに自室に引っ込んだ。
カーテンを閉めようと窓に寄ると、いつもの場所に朔蝙蝠がいた。
窓を開けると寄ってきて、
「どうした?」
って、蝙蝠のまま話してきた。
「蝙蝠が話すとシュールだね。」
思わず笑ってしまった。すると、シュッと音がして、気が付くと蝙蝠から彼になっていた。
「これなら違和感ないだろ。」
「うん、そだね。」
「で、いつもシカトしてたくせに、今日は何で窓開けた?」
床にどかっと胡坐をかいて座りながら、彼は聞いてきた。私も少し間を開けて彼の隣に座って、
「さっきのお礼を言おうと思ってね。あんなのやっぱりフツーの人間にはどうしようもないなぁ、って思った。」
「そりゃそーだ。どこから出で来るかもわからねーしな。」
「うん。永山くんが来てくれなかったら食べられてたよね。」
うっ。自分が動物に食べられてるなんて、想像もできないしっ!こわっ!
「なあ、音々?さっきも言ったろ。朔だ。永山なんて学校での便宜上の名前だし。」
ちょっと睨みながら彼が言った。
「朔?…言い慣れないなぁ。奏なら簡単なんだけど。」
「それ、弟だろ。」
「朔なのに新月はダメなんだね。くすくす」
「名前と体質は関係ねーだろ。」
「そおね。…朔。ありがとう。」
そう言ってから。
私は静かに彼の唇に自分のを重ねた。
一応、魔力みたいなのを使ったのよね?魔力使ったのなら力を補充しなくちゃいけないものね。ほんのちょっと、お礼。血じゃなくてもいいって言ってたもんね。
初めてなんだからね!ありがたく受け取りなさいよ!
なんて、かわいくないことを考えながら。
重ねるだけの唇を離そうとしたら、後頭部をしっかりとホールドされてしまった。
身体もしっかりと抱き寄せられてしまい、すっかり形勢逆転。
主導権は彼に行ってしまった。
初めてなのに濃厚なキスをされてしまい、離してくれた時には酸欠の金魚状態。
「音々、かわいすぎる!反則だ、それ。」
「何が反則かわからない!酸欠になっちゃうじゃない!もう。」
ちょっとむくれたけど、全然お構いなし。しっかりと彼に抱きしめられたまま。
「そういや朔は、外で寒かったり暑かったりしないの?雨風とか。」
「基本は大丈夫だけど、寒さはつらいかな。」
「ふうん。…あそこ、カーテンレールのとこなら、貸してあげてもいいよ…」
ちょっと明後日の方向を見ながら言ってしまった…
「ん?寝床提供してくれるのか?」
「嫌なら外行って。」
「なわけねーだろ。さんきゅ。」
と言って、ほっぺたにチュッとされた。
短編みたいな中編で、さくっと終わりました♪
R15、結局保険で終わってしまいました。スミマセン…
続きのお話も考えてますので、お時間あればまた読みに来てください!
おつきあい、ありがとうございました!