表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

災難

次の日。

重い気分で家を出たら、家の前で永山くんが待っていた。

「音々、おはよー。さ、学校行くぞ。」

また、にこーって笑いながら。

「…おはよう。ねえ、音々って何よ。馴れ馴れしく呼ばないで。」

ちらりと彼を見ながら、訂正点を伝える。

「え~だっていいじゃん、彼女なんだしさぁ。オレは朔って呼んでよね。」

とりあえず、駅へと歩き出した私の隣を、彼は当然のように歩きながら言ってくれたわ。

「呼ばない。もう、学校で誤解されちゃうでしょ!」

「誤解も何も。学校ではもう公認だぜ?」

「はぁ?なんで昨日の今日で公認なんかになるわけよ!?なるわけないじゃない!」

そうよ。昨日転校してきたばかりの転入生と前からいた私が付き合ってるなんて、誰が思うのよ。

しかも、嘘のような話を聞いたのも昨日。付き合えって言われたのも昨日。

公認なんてあ り え な い っ!

「ちょ~っと裏ワザ使っただけ~。」

悪そうな笑顔してるよ。コノヒト。ま、これが本性だろうけどね。

なんか朝から体力消耗。昨日の疲れも残ってるんだわ。若いのにかわいそうな私…。


昨日の公園にさしかかった頃。

ポトン、と何かが腕に落ちてきた。

…つめたい?ぬるい?なんだ???

「――――――??」

腕を目の高さまで持ち上げて凝視する。

白い一滴。

―――――――って、鳥のフン????

「!!!!!!!!」

声にならない叫びが出る。


朝から、鳥のフンが、私の腕に、落ちてきたぁ?!


まじーーー?!


ぴきーんと固まった私。


恐る恐る上を見てみると…なんと数羽のコウモリが数m頭上でパタパタやってるじゃない!

「んぎゃーーーー!!」

今度の叫びは声になったわ。

叫んだ後も口をパクパクさせてたら、

「あー、あれは下位のヴァンパイアだな。」

って、彼。

「ヴァ、ヴァンパイアって!」

「そ。もちろん、音々の血の匂いに惹きつけられて寄ってきたんじゃねーか。」

うそー!

今までこんな目に遭ったこたーねーよー!!

ってか、それよりも。

「ちょ、ちょっと!!このフンどうにかしてっ!」

乙女が腕にフンなんて、ありえねー!!

「ヴァンパイアより、フンの心配かよ…。」

永山くんは苦笑する。

「それもそうね。さっさと追っ払って、フンも何とかしてー!」

もうすっかり涙目だよ…私。

「ハイハイ、わかったから。」

彼は私の頭をポンポンと叩いてから、

「失せろ。」

と言って、頭上のコウモリ達に手を翳した。

あ、ちょっとキリっとした顔はかっこいいじゃない。

不覚にもそう思ってしまった。やべ。流されてはいかんいかん。

手を翳されたコウモリ達は、不思議なことにスッと姿を消してしまった。

え?ちょっと?!消えた??

「ど、どこにいったの?」

唖然としながら永山くんに聞くと、

「さあな。どこだろ?」

と、はぐらかされてしまった。ま、いいけど。深く突っ込まないほうが身のためと直感した。


それから公園の水道で、腕をきれいに洗ってから、気を取り直して学校に向かった。


学校に着いても、なんだか違和感ありありな一日だったわ。

編入したてなのに、なぜか私とは前から付き合ってたみたいな話になってて。

おかしなことに誰も疑わないし、女子の皆さんも嫉妬とかもなく、むしろ羨望?みたいな感じで、

「よかったねぇ、音々ちゃん!遠距離解消になったんだってね!」

とか言われちゃった。

遠恋??はぁ?つーか、彼氏なんていたことないんだけど…。


終わりのホームルームの頃には引きつり笑いが張り付いてましたわ。

「音々、なんか今日は疲れてるね~!塾の予習がきつかった?」

なんて茉実にも言われた。

「ん~、なんかね。いろいろね。」

うつろな目で、机に突っ伏したまま答える。

「体調悪いなら塾休む?先生には私言っといたげるよ。」

「いや、大丈夫。ありがと。」

優しい茉実の気遣いに感謝しつつ、ホームルームも乗り切った。


「音々、帰ろう。」

と、永山くんは言ってきたけど、今日はお生憎様、塾なのだー!

「今日は塾だから。」

私がそっけなく言うと、茉実が慌てて、

「もう、音々、冷たく言わないの!塾って言っても駅前だから、そこまで一緒に帰ろうよ?」

フォローのつもりか、誘ってるよ。一緒に帰る義務ないよ~!

「ほんと、音々冷たいよね。ありがとう、堂川さん。じゃあ、駅まで。」

と、茉実ににっこり笑う永山くん。茉実もつられてにっこり笑ってる。

なんだ、こっちの方がいい雰囲気じゃないの!茉実にしなよ。茉実の血も美味そうだよ?って、勝手に売っちゃいけないか。人身御供はよくないもんなぁ。いや、待てよ。茉実が永山くんを好きになったのなら、血くらいいくらでもあげれるよね?血でも体液でも何でももってけドロボーになるよね?

それに、私みたいにかわいくなくて冷たい、ただ香気が強いだけの女の子よりも、かわいくて優しい茉実の方が永山くんもいいはず!

「「音々?」」

気が付くと、不審そうに二人から見つめられていた。

「ん?」

茉実☆人身御供計画を妄想してた私は、やっと現実に帰ってきた。帰ってきたら、もう塾のあるビルの前だった。あら~、かなり長いこと自分の世界に入ってたのね。

「ほんと、大丈夫?ずーっとぼんやりと考え込んでたわよ?」

「話にも入ってこねーし、ぼんやりしてるし、帰るか?」

「いやいやいやいや、大丈夫だから!!全っ然大丈夫!勉強はがんばれますって。」

慌ててひきつった笑顔で首をぶんぶん振る私。まだまだ不審そうな二人。

すると

「音々、ちょっと。」

と言って、永山くんが私の腕を引っ張って、茉実から少し離れたところへ連れて行った。

「お前さぁ、考えバレバレだからな。オレから逃げられると思うなよ。」

ちょっとぉ、悪い顔してるよ?笑顔が黒いよ、オニーサン。

「げっ。なーんにも考えてなんかないわよ。ちょっとぼんやりしてただけ。」

ぼんやりしてたってゆーか、、精神的に疲れたというか。

「じゃあ尚更、オレから離れない方がいいぜ?体調悪いと結界が緩くなるからな。」

「気力でカバーするわよ!」

とはいうものの、気力でカバーできる代物なのかもちっともわっかんないけどー。

「はいはい。じゃあな。しっかり勉強して来いよ。」

と言って、私の頭を撫でてから、

「じゃあ、また明日ね。」

と、茉実にも声をかけてから駅へと向かって歩き出した。

何がバレバレなのよ!って、茉実には見えない角度で彼の背中にあっかんべをした。

我ながら子供っぽいけど。


今日も読んでくださってありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ