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彼氏??

「疲れた…。帰るわ。なんか情報処理能力を超えてる、もうフリーズ。」

ヴァンパイアだの魔物だの、理解不能な話のせいで疲労感100%。

どんよりオーラを発する私にお構いなしな彼。

「わかった。」

と言って、二人して立ち上がり、公園を出た。


「で、ほんとにほんとに家どこよ。」

並んで立つと背の高さがよくわかる。私は彼の肩くらいまでしか身長がなかったから、見上げないと顔は見れない。

こないだは倒れてた上に座り込んでたからわからなかったけど。

少し見上げながら私は聞いた。

「お前んちだって言ったろ。ま、正確に言うとお前の部屋の前の軒下。」

飄々と答える彼。

「…こないだから蝙蝠がいたような気がしてたけど、まさか…」

ヴァンパイア=蝙蝠って、あまりにベタ…

「あ、気づいてた?」

って、王道ですやん!コテコテ過ぎてがっくり。

この1週間ほど、うちの軒下に蝙蝠がいたのよ。朝夕のカーテンの開け閉めの時に気になってた。

そうか。蝙蝠の姿で見張ってたのか。

なんかまためまいがした。

「おっと、またふらついてんぞ。大丈夫か?」

とか言いながら、また腕を取って支えてくれた。つーか、めまいがすんのはあんたのせいでしょ!って言葉を発しかけた時、

「音々っ!!彼氏?!うそ、まじ?!」

と言う、奏の声が聞こえた。


気が付くとすでに私の家の前。

ちょうどふらついて彼に支えられたところを、家から出てきた奏に目撃されたのだった。

なんつータイミングで外に出てくるんだ。弟よ。

奏は永山くんをびっくりしたように凝視して、それからおもむろに「にこー」っという効果音の出そうなとびきり笑顔になって、

「オレ、音々の弟の奏ですっ!いやー、音々に彼氏ができるなんて嘘みたいです!こんなにっぶいねえちゃんでほんとにいいんですか?!」

なんて、すっごい失礼なことを早口でまくしたてた。もう、永山くんの手を握り締めんばかりの勢い。

お手手ブンブン、しっぽブンブン(幻視で見えた)。

しかも、彼氏って!!誤解も甚だしいぞ。落ち着け、奏!!

「いや、奏、ご…」

誤解だからって言おうとした私を永山くんは制して、

「あー、初めまして。弟くんなんだ?よろしくね。オレ、永山朔っていいます。」

なんて、爽やかに笑いながら挨拶しちゃうし!違うから!!

「かーさーん!!音々が彼氏連れてきた!」

って、大声で家の奥にいるだろう母親に言いながら、家の中へ入って行ってしまった。

「やっ、もう、違うから!…って、奏!聞け~!!」

私の叫びは虚しく宙をこだましただけだった。

奏に向かって差し伸べられていた手を永山くんは握り、

「家族にばれちゃったねー。もうオレ、音々の彼氏だー。」

なんて白々しくのたまう。そのにやけた顔にグーでパンチしたくなった。

「なんで誤解させるのよ!あーもう、最悪~!」

「いいじゃん。外堀外堀。埋めてけ埋めてけ~」

「埋めるな!」

不機嫌全開な私と、上機嫌な彼。すごい温度差。


と、そこにお母さんがいそいそと出てきた。こっちもかなりの満面の笑み。怖っ。

「あらあらあらあら、こんな玄関先で音々ったらご案内もしなくてごめんなさいねぇ。ささ、上がって頂戴。時間は大丈夫?」

手を引いて家の中に案内しそうな勢いのお母さん。

「あ、いえ、もう夕飯時ですし…」

なんて一応遠慮する永山くんを家に押し込んだお母さんは、強引に夕飯まで食べさせてしまった。

永山くんも、遠慮しているように見せかけて絶賛外堀埋立中。

お母さんはそもそもイケメン好きだし、奏は「姉よりも兄が欲しかった」って公言するくらいだから、もう、犬が尻尾振ってるみたいになってる。いつものすかした態度はどこへやった?!

もう、ほんとに彼氏と思っちゃってるよ、うちの家族…

娘の命のピンチだよ?声には出せないけど!

私はみんなに顔を背けて不貞腐れてしまった。


夕飯を食べーの、食後のお茶しーの、がっつり居座りそうな永山くんをなんとか追い出すことに成功した私は、宿題をしようと部屋に戻った。

…そういえば、軒下に住み着いてんだったっけ。

カーテンを閉めようとしたその手が一瞬止まった。軒下にばっちり朔蝙蝠を発見して。

目があったけど、知らん顔してカーテンを閉めたら、

「音々、冷たい。」

って、外から声が聞こえた。


こてこて王道ですね。王道好きなもんで…


読んでくださってありがとうございました!

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