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説明

よろよろしながらとりあえず自分の駅で降りる。

あぶねーぞ、とか言いながら腕を取られるんだけど、ふらふらしてんのはあんたのせいですしっ!


とりあえず、家の近く、幹線道路横の公園で話すことにした。

うちに上げるなんてもってのほかじゃない?家族だっているんだから。

公園のベンチで、並んで腰掛ける。

パッと見はカレカノっぽいけど、二人の間にある空気は冷たいもんです。はい。


そして、彼が話す内容は、はっきり言って理解不能と言うしかなかった。


「そもそもあの日、オレはお前の香気に中てられて落ちたんだ。」


ベンチに座ってから、最初の一言はこれ。いきなりわからない単語が入ってる。

それ、造語?

「何よ、それ。香気って。」

「いわゆるフェロモン?みたいな?」

フェロモンてなんだったっけー?香水?ん?違うか。

「そんなの私つけてないし。」

「つけるとかそーゆーんじゃなくて、お前の血がそういうものを放ってんだよ。魔物には敏感にわかる。」

『香気』の次は『マモノ』ですか。またよくわからない単語が出てきたよ。

「えーと、今のマモノってなんですか?」

「魔法の『魔』に『物』で魔物。有名どころで言うとヴァンパイアとか狼男とか?ちなみにオレはヴァンパイアだけど。」

「…ヴェル〇ァイア?」

「それ、車。」

「…ヴァン〇ード?」

「それも車。」

「…ヴェル〇ンテ?」

「ケチャップ。こら。現実逃避すんなよ。」

だってヴァンパイアなんて、小説とかホラー映画の中だけでの話じゃない。現実主義者の私には理解できないわ。

「だって、そんなのファンタジーの世界じゃない。理解できないよ。無理。」

「ま、現実だからな。理解するとかしないとかってことじゃねーし。で、だ。お前の香気はかなり強いからいろんな魔物が引き寄せられるんだ。例えば…お前、よく小動物を見かけるだろ。」

「うん。」

「遠巻きに見てるやつらは大体下等の魔物だ。やつらはお前の香気に引き寄せられるものの、強すぎて近寄れない。お前は、気付かないうちに香気で結界を張ってるみたいになってる。オレが落ちたあの日は新月で、魔力が落ちていた。早いところどこかで新月の夜をやり過ごそうと飛んでいたところにお前の香気の結界に中って落ちたってわけだ。」

中ったとか、なんか食中毒みたいなこと言って。私、そんなもん出してる覚えないから、インネンつけられてるとしか思えないわ。

「へえ~。私の知らないところでいろいろあるんですねぇ。」

「お前、めっちゃ他人事だな。」

「ま、理解の範疇超えちゃったからかな?」

「でも、体調崩すとその香気の結界が弱まるから、魔物はいつもよりも近寄ってくるんだぞ。」

「えええっ!!!それは困る!…って、魔物に狙われたらどうなんの?」

そんなこと経験ないわけだから、怖さも何もわかりゃしないよ。

「そりゃ、血を吸われたりだなー。へたすりゃ食われるぞ。」

永山くんがにやりとしながら、怖いことを言ってくれる。

「いーやー!!まだ生きたい!…って、あなたも、まさか食べようなんて思ってないでしょうね?」

思わずベンチの端までズザザザザーって勢いで間をとってしまった。

「オレはヴァンパイアだから、血があればいい。」

サラリと言ってのける彼。

「いや、血も嫌なんですけど。」

血を吸われるなんて、痛そうじゃない!映画とかでよく見る、首に犬歯をおっ立てて、そこからちゅーちゅー血を飲むんでしょ?想像しただけでも痛そう。ましてや食われるなんて…想像すらできない!!ごめんだわ。

でも、ごくごくフツーの人間な私が、そんな得体の知れないものを防ぎようなんてないじゃない。…キリスト教にでも改宗するか?十字架を常に携帯しとく?にんにく?あ、でもそれじゃぁ狼さんが来たら対処できないよね。エクソシストってホントにいるのかなぁ?

神社でお祓いなんて、まず効かなさそうよね。ヴァンパイアとかって外来種だもんね。

あ~もう片目の下駄履いた妖怪少年、助けに来てくれ!


そんなことを悶々と考えていたら、彼は私の考えを見透かしたのか、

「オレが守ってやるよ。お前のこと、かなり気に入ったからな。」

と、おもむろに発言した。

つーか、あんたもヴァンパイアじゃないの。危険なことにはかわりないじゃないの!

「結構です。守ってやるとか言って血をもらおうって魂胆でしょ。やだ。」

「即答かよ。でも、血じゃねーといけねえこともないんだぜ?」

「血以外って何よ?」

「体液。」

「…えろ~。」

じと目で永山くんを見据える。

「そのリアクション、どおよ?キスでも十分栄養は補給できる。」

なんか、堂々と言い切っちゃってますよ、コノヒト。

「やっぱ、遠慮しときます。キスは大好きな彼氏さんとしかしたくないもんで。」

これでも一応は乙女だからね。大事に置いてあるんだから。栄養補給にキスとか言われても、ときめきもくそもあったもんじゃない。でも、

「彼氏なんていないじゃん。オレが彼氏になればいいことじゃねーの。」

ニヤニヤしながら言う永山くん。

さすが、1週間も張られてただけある。痛いとこつかれたわ。こないだもこんな会話を奏としたなぁなんて思い出してしまったよ。

でもさ、そもそも好きな人と付き合いたいじゃない。第一印象最悪、その上人外って、まだそこまで恋愛に飢えてないわよ。

「告ってくれるのはうれしいですが、やっぱり遠慮しときますって。」

これを告白ととるのかどうかはびみょ~だけど。どう表現したらいいのかわからん。

「知らねーぞ。今まではたまたま高等な魔物に出会わなかったから無事に暮らしてきたけれど、これから危険な目に遭う可能性はあるんだからな。」

「高等な魔物って何よ?」

「オレみたいなやつ。変化もできるし、香気の結界も耐えられる。」

変化?永山氏、何かに変身してるのか?

「そのランク付けがイマイチわかんないんだけど…。」

「一言でいうと魔力の程度で高等下等は決まる。」

「ふうん。」

「下等な魔物は人型に変化できない。小さければ小さいほど魔力は弱いな。」

「ふうん。」

生返事を繰り返す私。ふうんとしか言えないじゃん!


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