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遭遇

とっても唐突に。

ものすごく不自然に自然に、彼は落ちていたのです。


私、三谷音々≪みたにねね≫、高校1年生、16歳は、帰りを急いでます。

今日は塾があったんだけど、ちょっと遅くなってしまって、もう8時。別に危ない夜道でもない。駅から徒歩10分。大半は幹線道路沿いの明るい道で、最後の3分ほど住宅街を行くんだけど、新興住宅街だから街灯もばっちり。家の明かりもまだまだ点いてるしね。

だけど、異変はほんとに突然目の前に落ちてた。

自宅の3軒隣。坂田さんちの前に『彼』が落ちてた。っつーか、行き倒れてた?

街灯だけだからなんとなくしかわからないけど、黒いマントみたいなのを着た、茶髪の子。

うつ伏せだから顔はわからないけど、多分『彼』だと思う。『彼女』っていう体格でもないし。

とりあえず、見えてないことにしよう。怪しい人にしか見えないし。

今時、マントなんて着ないよね…。季節だって夏の終わりだし。

絶対めんどくさいことになる。

本能からの警告に素直に従って、私はできる限り離れたところを通り過ぎようとした。

通り過ぎようとしたのに、

「おい。」

って声をかけられた。いーやー!!私に言ってんの?いや、違うよね。私じゃないよね。うん、そうだ。

どう見ても周りに人なんていない状況で、軽く逃避思考。

完全無視を決め込んで、これまた聞こえないふりして歩を進めようとしたら、

「おいこら。」

と、また声をかけられる。

あーもう、私ですかぁ?絶対無視よ、無視!

「さっきから呼んでんだろ。聞こえねーのかよ。」

と、幾分イラついた声が聞こえてきた。

もうっ。知らん顔したかったのに!おかしな人にはかかわっちゃいけないのよ!知らないの!?

さすがにもう聞こえないふりは無理なので、

「…なにかご用でしょうか?」

渋々返事してみた。

「ここに人が倒れてて、お前は無視して通り過ぎんのかよ?助けようとかしねーか?ふつー。」

背中越しに不機嫌そうな声が飛んでくる。まだ彼に背を向けたままの私だったけど、仕方なく彼の方へ向き直った。

彼はすでに起き上がっていて、胡坐をかいて地面に座っていた。

行き倒れてたんじゃなかったのかよっ!とつっこみそうだったけど、もういい。流そう。

「いや、何分おかしな人にしか見えなかったので、関与した暁にはどうなることかと考慮しまして、見えないことにしたのでございます。」

もうちょっと歯に衣着せたほうがいいかなーなんて、これっぽちも思わなかった。

すると彼はむっとしながら、

「こんなカッコイイ不審者がいるか!!」

と、ほざいてくれた。不審者にかっこいいもかっこ悪いも関係ないでしょ。

「そこに。」

じと目で彼を見据えつつ、私は彼を指さしてあげた。

カッコイイって、自分で言ってるよ。この人。

さっきまではうつ伏せてたからよくわからなかったけど、起き上がった顔を見たら、まあ、なるほど、自分でも言い放つくらいカッコイイ男の子だった。

さらさらとした茶髪、きりっとした目、すっと通った鼻筋、薄目の唇。細面の面立ち。どれをとっても、総合してもカッコイイとは言える。でも、この状況は怪しすぎるでしょ。

「怪しいとしか表現できない感じですよ?と言うわけで、さようなら。どこか違うところで倒れなおしてください。」

そう言って、家に逃げ込むことにした。あー、でもこれって家がばればれだよねぇ。困ったなぁ。あ、ケーサツさん呼ぼうか。そうだ。

おもむろにケータイを取り出す。

「なにすんだよ?」

「あ、とりあえず通報なんてしてみよっかなって思いまして。あ、いえ、すぐさま退散してくださるならしませんけど?」

「通報って…。しかしお前、えらく冷静だよな。」

「いえ?充分パニクってますよ?で、退散しないんですか?」

「わかったよ。とりあえず、今日のところは退散するよ。」

「じゃあ、今日のところはって言わずに、二度と来ないでください。さようなら。」

「…」

彼は半目で私を見つめていたけど、しぶしぶ移動してくれるみたいだったので、とりあえず、笑顔で見えなくなるまでお見送りしてみる。よし、角曲がったな。

でも、油断するまい。

………5分。よし、大丈夫だろ。

やっと家に入れた。


あーもう、なんだったんだろ。

すぐさまお風呂に入って、それからやっとお夕飯にありついて、一息。

あれは絶対変質者だね。今時マントなんて誰も着やしない。

「なーに?音々。ぶつぶつ独り言なんて言って。気持ち悪い。」

お母さんに突っ込まれた。

「いや、ほんの独り言。」

「音々、勉強しすぎでおかしくなった?」

中2の弟、奏≪そう≫まで冷たいことを言う。

「奏、冷たいなぁ。おねーちゃんはそんなに勉強ばっかりしてません。」

「だって、音々、部活もしないで塾行ってさぁ、もちろん彼氏もいないしで、めちゃ暗い青春じゃね?」

かわいそうな子を見るような目で姉を見るな。

「…いたいとこ突いてくるねぇ。」

たしかに、私の高校は県下でも有数の進学校。そんなとこにまぐれで受かったフツーの私は、めっちゃ努力しないとフツーでもいられない。だからって勉強漬けもなぁって、塾は行ってるものの、友達ともちゃーーーんと遊んでる。彼氏はいないけど、今は別にいらないからいいの!

2こ下の弟、奏は、勉強もできて、スポーツもできて、そりゃモテる。バラ色の青春☆絶賛謳歌中だろーさ。まあ、自慢の弟だけどね。たぶん、私みたいに努力しないでも同じ高校に来れるだろうな。

「奏はいいよね。勉強もできるし、モテるし?私とは違うもんねー。」

「明るい生活を分けてあげたいよ。」

「いらない。ごちそーさま。」

おかーさま。今日もおいしいご飯をありがとう。

「はーい。もう寝るの?音々?」

自分の食器を片づけている私に、お母さんが聞いてくる。

「ん、学校の宿題だけやってから寝るわ。今日はなんだか疲れちゃった。」

そう。あの変質者のせいで…!精神的ダメージだよまったく。

「わかったわ。じゃ、自分で飲み物持ってあがりなさいねー。」

と、温かいミルクティーとクッキーの載ったお盆を手渡される。

「ありがと。おやすみ。」

さっさと宿題終わらせて、早く寝たいわ。

勢いで書き始めてしまいました。

読んでいただけて幸いです。

ありがとうございました。

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