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電車に乗る

作者: WAIai
掲載日:2026/07/18

今日、俺と彼女は電車に乗っていた。


もちろん俺達だけでなく、同じ制服を着た男女が数人、乗っている。


これからバスケの試合を応援に行くところだった。

帰宅部とか、時間に余裕のある人は、必ず行くのが決まっていた。


「電車の中、涼しいね」


俺の前に座った彼女がにこやかに話しかけてくる。


俺はうなずくと、

「バスケの試合するから、授業を休みにするなんて、うちの学校くらいじゃないか?」

「そうかもしれないね」

同意する彼女は窓の外を眺め、ふうと息を吐き出す。


電車は2両編成で、次の次の駅で降りることになっていた。


「でもたまには外に出て、社会勉強するのも良いかもね」


朝から曇り気味で、なかなか青空が登場できない空に、俺はシャツの襟元を手で広げ、緩める。


「他校に行って応援するだけだからな。バスケ部の奴らも喜ぶと思うぞ」

「うわあ。じゃあ、いっぱい応援しよう!!」


彼女は張り切って両手を拳にする。

応援する気満々なようで、うさぎが月を見て興奮するようなものだった。


俺も頰を緩めると、うさぎの頭を撫でてやる。


「えへへ」


喜ぶ彼女に、優しい眼差しを向けたその時。


「ー子どもだ」

「本当だ」


皆が口々に言い出した。


何のことだと、顔を向けてみると、4歳くらいの女の子が通路を歩いていた。


満員電車ではないからいいのだが、俺はとっさに心配になり、彼女に言う。


「子どもが1人でいる。危ないだろう」

「本当だ。ちょっと行ってくる」


2人で子どもの近くに寄ると、目線を合わせるために、腰をおとす。


女の子は天然パーマらしく、くるくるした髪の毛で、瞳が大きかった。

その瞳の中に、俺と彼女の姿が映り、可愛い声で言ってくる。


「誰?」


俺は彼女を見ると、怖がらせないように、彼女が優しく言う。


「お父さんか、お母さんは?」

「…知らない人と喋っちゃ駄目だって」

「え…」


しっかりした子どもだと思う反面、ややこしいことになりそうだと、俺は子どもに言う。


「傷つけないし、何もしないから。ただ親のところへ連れて行ってやるだけだ」

「嫌だ。怖い」

「え…」


俺は子どもが嫌がる素振りにショックを受けた。

確かに強面だが、子どもに嫌われるとは思わなかった。


「あのね、このお兄ちゃん、良い人なのよ?」


うさぎがフォローするが、子どもは嫌々と身体を振る。


困っていると、ちょうど車掌さんが来たので、俺と彼女は声をかける。


「あの!! この子、迷子みたいなんですけど。俺達だと喋ってくれないんです」


車掌さんは30代くらいだろうか。

スマートで、身のこなしが優雅であり、プライドの高そうな感じだった。


「迷子? …君、お母さんは?」


車掌さんが聞くと、この人は俺達とは違うと区別できるのか、車掌さんが来た方向を指さす。


「眠っている。起こすと怒るから」

「しっかりしているな、君」


車掌さんが優しく撫でると、子どもは嬉しそうに笑った。

俺達とは違う対応に、子どもは難しいと実感するのだった。


「じゃあ、お母さんのところに行こうか」


車掌さんがそう言うと、子どもを抱っこする。

軽々とした動作に、尊敬の眼差しを向けると、車掌さんは俺達を見てくる。


「この子は私が引き受けるから。椅子に座って安心してください」

「はい」


互いに目を見つめること、しばし。

この人は信頼できると判断し、俺は彼女の手をひく。


「ここは車掌さんに任せよう」

「そのほうがいいわね」


彼女は立ち上がると、子どもの頭を優しく撫でる。

その触り心地が良かったのか、彼女に「バイバイ」と言ってくる。

俺には? と思ったが、子ども相手に嫉妬してもしょうがないので、俺は軽く手を振る。


「じゃあ行きますか」


車掌さんは子どもと別の車両に行ってしまい、事は終わった。


「しっかりした子どもだったね」

「おう。俺は嫌われたけどな」

「そんなことはないと思うけど…。ライオンさんだからな」


彼女はくすくす笑うと、手を繋いでくる。


「席に戻ろう。そろそろ到着するし」

「そうだな。戻ろう」


2人は元の場所へ戻ったのだった。

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