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4月5日 

私の名前は黒崎優奈。日本で3本の指に入る中高一貫進学校、崇文女子学園に通う新高校2年生だ。えっへん。


私にはずっと、好きな人がいる。中学から5年間同じクラスの、九条慧ちゃん。名前からして、かっこいい。


成績優秀、容姿端麗。そして、崇文の一大看板であるバスケ部のエース――らしい。名前に劣らぬ盛りっぷりだ。優の字が入ってるのに何一つとして優れるものがない私とは大違いである……。


現実的に考えて、私が慧ちゃんとどうにかなるなんてことは、夢のまた夢のさらに夢だ。というかそもそも、私が慧ちゃんとまともに話せてたのなんて、中学1、2年生の頃までだ。


考えてもみて欲しい。私みたいな、中学受験の時に親が気狂いを発揮したおかげで、うっかりこの学校に入ってしまっただけの、成績は常に深海を這い、部活は帰宅部エース(笑)――そんな学園の隅っこに生息するゴミが、スクールカースト頂点の権化みたいな人と、日常的に会話なんてできるわけがない。

何かの間違いで親しげに話そうものなら、慧ちゃんの周りからの視線が間違いなく私の全身を突き刺すだろう。傷害罪が成立するレベルで。

うん、普段ならば、そうだろう。私だってゴミなりに弁えているのだ。


だがしかし。毎年この時期だけは違う。

そう、すばらしき新年度。

何しろ、私と慧ちゃんは苗字が近い。クラスさえ同じになれれば、ほんの数日とはいえ、新学期の席は出席番号順なので、合法的に前後の席に座れる。

つまり――話そうと思えば、話せる距離にいられるのだ。


高2は文理選択でクラスが分かれる。慧ちゃんと同じ理系・物理を選べば、同じクラスになる確率はかなり上がる。数弱の私は去年担任にかなり白い目で見られたが、選ばない手は当然なかった。

きっと、毎日祈りに行っている神社の神様も少しくらいは手を貸してくれたのだろう。ともかく、私の作戦は大成功を収めたのだ!

つい先日学校の連絡サイトに送られてきたクラス分けの結果に、言わずもがな私は一日中口角が下げられなかった。

2年5組。

今年も慧ちゃんと同じクラスで、5年目となる学園生活を送れるんだ。


そんなこんなで、年に一度の私の学園生活ピーク。

遅刻常習犯の私が、普段なら絶対にしない早起きをして、ギリギリ先生に怒られないラインで、特技であるメイクもした。

私は朝から心臓が飛び出そうなくらい緊張して、電車の中で少し吐きそうだった。

グロッキーになりながらも登校し、何気ない風を装って黒板に貼られた座席表を確認する。


――九条、黒崎。


ちゃんと、前後だ。

安心と緊張で胸の奥がぎゅーっとなるのを感じながら、自分の席に座る。

一応、数学の問題集を広げてみるが、当然、頭には一ミリも入ってこない。


だって、すぐ前に、慧ちゃんがくるんだ。


そう考えるといてもたってもいられない。

心臓が張り裂けそうに鳴っていて、今にも叫び出したい気分だ。

落ち着いて欲しい、自分。

そもそも慧ちゃんは、いつもの友達と一緒に登校してくるだろう。慧ちゃんは、バスケ部にしては珍しく、クールで寡黙なタイプだ。でも、慧ちゃんの周りにはいつも人がいるから、たとえ新年度といえ去年みたいに一言二言しか話せない可能性の方が高い。いやでもでも、今年は慧ちゃんが特に仲の良い子は同じクラスではないからちょっとはチャンスあるんじゃ……。


ぐちゃぐちゃ考えながらも、教室に入ってくる足音がするたび、心臓が悲鳴を上げる。


違う人。また違う。

緊張しすぎて、吐き気が限界だ。もう、ホームルームの鐘が鳴るまでトイレにこもってスマホでもいじってる方がいい気がしてきた。立ち上がってふらふらと教室のドアをくぐろうとした瞬間、私はなにかにぶつかった。


「……大丈夫?」

聞きなれた、ハスキーボイス。

恐る恐る目をあげると、予想通りそこには、


朝ドラ女優さながらだ。


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