ミニスカートが嫌いな先生
●佐々木芽衣奈(13)
明るくて優しい女の子
金髪ツインテール
●ミク
芽衣奈の友人
茶髪カールがかったロング
●ルミ
芽衣奈の友人
黒髪ポニーテール
●霧島努(37)
ミニスカートが嫌いな担任の先生
一話 出会い
雨が降りしきる夕方の満員電車。
私は中学一年生の春、お気に入りのミニスカートで出かけていた。
突然、後ろから不快な声がした。
「そんな短いスカート履いて、触って欲しいんじゃないの〜?」
咄嗟に私は近くに立っていた背の高いイケメンな男性にしがみついた。
「違うしー、私がミニスカート履いてるのは彼氏に可愛いって思ってもらいたからだもん!」
男性は一瞬驚いた顔をしたが、何も言わずに痴漢の男を鋭い視線で睨みつけた。
周りの人達がクスクスと笑っている。
「当たり前じゃんね。」
「あのおっさんダッサ!!」
男は顔を真っ赤にし、慌てて人混みに紛れて逃げていった。
駅に着いた。同じ駅らしい。
「さっきはごめん!本当にありがとう!!」
私は深々と頭を下げた。
すると男性が、少し呆れたような、でも優しい声で言った。
「なぜ、男に怖い目に合って俺に抱き付いたんだ?」
「えっと・・・イケメンだったからつい?
って、それじゃ私の方こそ痴漢みたいなことしちゃってる!?うわー、どうしよう!私、慰謝料、払います!」
「ははっ、慰謝料って。」
男性は小さく笑った。低くて心地よい笑い声だった。
「帰り道か?」
「うん」
「駅から家は近いのか?」
「歩いて30分くらい。」
「じゃあ、とりあえず今日はタクシーに乗りなさい。
これで足りるだろう。」
そう言って彼は財布から千円札を二枚取り出し、私に差し出した。
「いやいやいや!お金なんてもらえないよ!」
「いいから。」
「でも!」
「抱き付かれたお礼だ」
「え・・・?」
私は戸惑いながらも、お札を受け取った。
彼は軽く手を挙げて、雨の中を歩き去っていった。
その翌週。
入学式を無事に終えた私は教室で担任の先生と対面した。
「担任の、霧島努です。よろしく」
え?
あの時のイケメンな男性が、黒板の前に立っていた。
スーツを着て、メガネをかけた真面目な雰囲気。
電車の中とは別人のように見えた。
「あの時は気さくな感じだったじゃん!メガネもしてなかったし!」
休み時間、私は先生に声をかけた。
霧島先生は軽く眉を寄せ、私の制服のスカート丈を見て小さくため息をついた。
「あれは生徒だと知らなかったからだ。
それに、怯えていたから落ち着かせようとしたんだ。
メガネはちょうど直している最中だったんだよ。」
「先生、優しいね?」
「スカート短すぎるぞ」
「えー、今褒めたのに〜」
こうして、私と「ミニスカートが嫌いな先生」との奇妙な出会いが始まった。
二話 ミニスカートが嫌いな先生
霧島先生は、ミニスカートを穿いている女子生徒に対して特に厳しかった。
「スカートをもう少し長くしなさい。校則違反だ」
「でも先生、他のクラスはみんな短いのに・・・」
「他のクラスは関係ない。君たちの安全に関わることだ」
彼の声はいつも低く、静かだったが、拒絶を許さない響きがあった。
廊下でスカートを短くしている生徒を見つけると、
すぐに注意し、場合によっては職員室に連れて行くこともあった。
当然、一切手は触れないし、必要以上に見ることはなかったが、
それでも女子生徒たちの間ではすぐに不満が広がった。
「なんであの人、ミニスカートばっかり目の敵にしてるの?」
「本当にウザいんだけど!」
三話 先生の過去
ある日の放課後。
私は保健室で、先生と話ていた。
「私たちを目の敵にしてさ!酷くない!?」
「まあまあ、許してあげて。先生、娘さんを亡くしてるのよ」
「え?」
彼女は静かな声で続けた。
「あなたは誰かに言いふらす子じゃなさそうだから
話すわ。
娘さんが中学一年生の時。
強姦された後、山の中で裸の状態で発見されたの。
先生はそれ以来、同じ目に遭って欲しくない一心で、この学校の先生になったらしいわ。
あれでも、本当はとても優しい人なの」
私は息を飲んだ。
その夜、ベッドの中で何度もその言葉を思い返した。
厳しい視線の裏側に、深い悲しみと、守りたいという強い想いがあることを、初めて知った。
四話 2センチ長く
次の日、私は少しだけスカートを2センチ長くしてみた。
朝のホームルームで、霧島先生の視線が私に止まった。
「うん?スカート少し長くなったか?」
「少しは先生の気持ち、分かりたいって思ったってゆーか」
私は照れくさそうに言った。
「なんだそれは。」
先生は壁際に立ち、教科書を持ったまま小さく息を吐いた。
口元に、ほんの少しだけ柔らかい笑みが浮かんだ気がした。
「フッ」
それだけだった。
でも、その一瞬がなぜか胸に温かく残った。
五話 事件
ある雨の夜。
私は友人たちと塾帰りに、駅裏の暗い道を歩いていた。
突然、複数の男たちが現れ、私たちを取り囲んだ。
悲鳴が上がる。
一人が私の腕を掴み、引き倒そうとした瞬間・・・。
「離せ!」
霧島先生が走ってきた。
彼は迷わず男たちに飛び込み、私たちを守るように立ちはだかった。
激しい揉み合いの中で、先生の左腕にナイフが突き刺さった。
病院の待合室。
先生は包帯を巻いた腕でベッドに座っていた。
「ごめん先生・・・私らがスカート短いから狙われたのかも・・・。」
私は泣きそうになりながら謝った。
しかし、先生は静かに首を振った。
「いや。ああいう奴は、長かろうが短かろうが、人を傷付ける。
分かってたんだがな。悪いのはミニスカートを履く君たちじゃない。犯罪者だ。
俺は、娘のようになって欲しくないばっかりに、厳しく当たりすぎていたよ。」
ミク「そんなことないよ。先生は、私たちを守ろうとしてくれたもん。」
友人の一人が、涙を浮かべて言った。
ルミ「まあ、口うるさいのは確かだけど〜」
「全く・・・だが、無事で良かった」
先生はゆっくりと立ち上がり、私たち一人ひとりの頭に優しく手を置いた。
ポンポン、と軽く撫でる仕草。
その大きな手の温かさに、私は胸がいっぱいになった。
六話 スカート丈
事件から一週間後。
先生が無事復帰した。
霧島先生が戻ると、私の友人二人もスカートを2センチ長くしていた。
朝のホームルーム。
「なんだ、お前達までスカート伸ばしたのか。」
トンっと教科書を肩に乗せて霧島先生が言う。
ミク「先生の気持ち、私達も分かってあげてもいっかな〜って。」
ルミ「ねー!」
「はぁ・・・敬語を使いなさいといつも言っているだろう。」
ミク「何よー!ちょっとくらい褒めてくれたっていいじゃん!」
霧島先生がプイッと顔を逸らす。
ルミ「キー!むかつくー!」
別の子が悔しそうに叫ぶ。
「まあまあ」
私は笑いながら二人をなだめた。
厳しくて、口うるさくて、でも誰よりも優しい先生。
私たちは少しずつ、その本当の姿を知り始めていた。




