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公爵子息に夢中な悪役令嬢は、今更「もう戻れ」と言われても絶対実家には帰りません!  作者: ましろゆきな
第一部:実家には帰りません!

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第七話(第一部エピローグ):月下の誓いと、すれ違う「一生」

 1. 馬車内:完璧な「事後報告」


 舞踏会からの帰り道、揺れる馬車の中で私は興奮を抑えきれずにいた。


「ヴァイス様、見てくださいました!? あの王太子殿下の驚いた顔! 私たちの『愛し合う恋人』の演技、120点満点でしたわね! 」


 鼻息荒く「手応え」を語る私を、ヴァイス様は影の落ちる顔で見つめていた。


(……このままでは、いけない気がする)


 彼は痛感していた。メリアが「仕事」として完璧であればあるほど、自分の「本音」がその完成度の高い演技の中に埋もれて消えてしまうことに。


 2. 深夜の庭園:推しの色香が強すぎる


「メリア。……少し、庭を歩かないか。月が綺麗だ」


 公爵邸に到着した直後、ヴァイス様にそう誘われた。

 深夜の庭園は、青白い月光に照らされて幻想的な銀世界に変わっていた。


「わあ……。夜の庭園も素晴らしいですね。手入れ(メンテナンス)が行き届いていて、職人のこだわりを感じます!」

「…………」


 ヴァイス様が立ち止まる。

 銀の月光を背負った彼の白金髪が、宝石を散りばめたように煌めいた。深い海のような青い瞳が、私を射抜くように、熱く、甘く、湿り気を帯びて見つめてくる。


(……えっ、何この色気。ヴァイス様、まだ演技の余韻が残っているの?)


 彼が一歩、音もなく近づく。大きな手が私の頬を包み込み、熱い親指がそっと唇をなぞった。


「メリア。……演技ではなく、私の本心を伝えてもいいだろうか」


 低く、耳朶を震わせるような声音。

 氷の貴公子と呼ばれた男が、今、私の前で脆く、熱い「男」の顔を見せている。


「君を、一生離したくない。……私のそばで、私の独占欲に飼われてはくれないか。君が望むなら、世界中のどんな宝物よりも、俺のすべてを君に捧げよう」


 3. 爆誕:終身雇用・専属契約(メリア視点)


 一生、離さない。

 独占。

 俺のすべてを捧げる。


 その言葉の断片を、私の脳内にある「ブラック環境サバイバル用翻訳機」が高速で処理した。


(――!? つまり……『退職金不要の永久雇用』かつ『業界最高値の予算(俺のすべて)を約束した国家級プロジェクトの全権委譲』、そして『他家への引き抜きを物理的に阻止する最強の守護(独占)』ということですね!?)


「まあっ!! ヴァイス様……っ!」


 私はヴァイス様の手に、自分の手を重ねた。感動で瞳が潤む。


「わかります、わかりますわ! 私の技術をそこまで高く評価してくださるなんて……。ヴァイス様のような素晴らしいパトロンに一生を捧げられるなら、私、魔力切れで干からびるまで貴方の魔道具を磨き続けます!」

「…………え?」

「骨を埋める覚悟はできています! さあ、閣下! 明日からまたバリバリ働きましょうね!」


 満面の笑みで、彼の「告白」を「最高条件の雇用契約」として受け取った私。

 ヴァイス様は数秒間、絶世の美貌を呆然とさせて固まっていたが、やがて力なく笑い、私の額にこつんと自分の額を預けた。


「……はは、そうか。……君は、そういう子だったね」


 彼は深く、甘く、けれど少しだけ「この鈍感娘め」と毒づくような溜め息を吐いた。


(……まあ、しようがないか。彼女の基準はすべて『仕事』と『安心』にあるのだから。しかし、時間は十分にある。これから、メリアが俺から離れられないようにすれば良いんだ)


 ヴァイス様は再び「完璧な公爵(雇い主)」の微笑を取り戻し、私の指先に、深く、重い誓いの口づけを落とした。


(……今は、それでいいよ。その代わり、いつか君が俺の愛に気づいた時……もう逃げ道なんて一歩も残っていないことを、思い知ることになるだろうね)


【第一部:完】

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