#08:朧霧の通学路
高校生編の短編連作です。
#08:朧霧の通学路
2015/3/×× 朝
水溜まりが光を返す。土の香りが漂う朝。
季節が変わっても、校舎の匂いはあまり変わらない。
校門の前には、薄い霧がかかっていた。
フルートケースを肩にかけて歩く。吐く息が白く立ち、すぐに霞に溶ける。
昇降口のガラス越しに見える光が、いつもより白い。
誰かの笑い声が遠くで響く。陽子はその揺れを避けるように、自然と廊下の端を歩いた。
「え、陽子? 今日は部活休みだよ?」
陽子は一瞬だけ立ち止まる。『あれ、そうだっけ。』
でも、理由を探すような素振りはない。ただ、フルートケースの持ち手を少し握り直した。
霞ノ浦高校の朝の空気は、陽子の存在を静かに包んでいた。
次話:#09:放課後の音色
2026/1/25 20:00に更新します




