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9話

 


 ミスティも私が護衛であることに納得してくれて、春からは学園に向かうことになった。冒険者になって初めて受ける依頼が三年に渡る長期依頼なのは、我ながらまたおかしなことになったとは思う。



「帝都に向けて出発するのは冬が明ける少し前、今からだと二月後くらいだな。それまでは自由にしてくれ。出発が近くなったらまた連絡しよう。」



「わかりました。多分冒険者としてダンジョンで活動してると思います。」



 明日にでも冒険者ギルドで依頼を受けてダンジョンに行ってみよう。ずっと昔に本で読んだだけの場所、実際はどんなところなのか楽しみだ。



「ねえリスティア。あなた今日の宿は決まってるの?まだ決まってないなら屋敷に泊まりなさいよ!」



「そうだな。時間的に今から宿を取るのは難しいだろうしそうするといい。今日だけと言わず依頼の開始までずっと泊まっていてくれると連絡の手間が省けて助かる。」



 あまりお世話になるのは気が引けたけど、結局ミスティの期待の眼差しに押し負けてお屋敷に泊まることになった。



「ところでリスティアよ。ダンジョンに行くと言っていたが装備はどうするつもりだ?道具の類は冒険者ギルドで売られているが、武器防具は必要ならばうちで契約している工房を紹介するぞ。」



「武器防具…?」



 武器は魔武器の金砕棒があるし、防具は今まで裸でミスティア大森林にいた私に必要だとは思えないけど。首をかしげる私にアルスターさんは呆れたように続ける。



「…リスティアは頭はいいが抜けたところがあるな。そもそも子供がダンジョンに入ろうとする時点で目立つ上に防具も武器もないとなれば自殺にしか見えんぞ。」



「あ。」



「まあ魔武器は出しっぱなしにしておけばそうとはわからんかもしれんが、それはそれで異様に見えるだろう。それで紹介はいるかね?」



「…お願いします。」



 紹介する工房とは守秘の魔法契約を結んでいるから面倒ならすべて話しても構わないぞ、という言葉と共に紹介状を受け取って工房へ向かう。


 どうも長い間森にいたからかいろいろと抜けがちだ。とくに人からどう見られるかというのがわからなくなる。私の年で魔武器を持っているのが異常なことはわかっていたはずなのに、最初にカシム隊長に声をかけられたとき普通に消しちゃってたし。



 今回も自分に不都合がないからとそのままでダンジョンに行くところだった。傍から見ればおかしい事になるのは、考えるまでもなくわかるのに。



(どうにかしないと絶対どこかでSランクってバレるよね…。)



 ただ良い方法は思い浮かばない。そもそも私はうっかりが無くても隠すこと自体が難しい。手加減は苦手だし、演技なんてもっとできないし。

 いっそ隠さずに公表してしまうか、でも面倒事は嫌だしな、などと考えているうちに工房に着いた。



「すいませーん。お邪魔しまーす。」



「はーい。あらどうしたのお嬢さん。」



 とりあえず考え事は棚に上げて工房に入る。出てきたのは年配の女性だった。とりあえず紹介状を渡そう。



「領主のアルスターさんから紹介されてきました、リスティアといいます。これ紹介状です。」



「は、はあ。領主様から…。ちょ、ちょっと待っておくれ。」



 女性は紹介状にサッと目を通すとすぐに奥に行ってしまった。大声で人を呼んでいるのが聞こえる。おとなしく待っていよう。



 しばらくすると物凄く大柄な男の人と一緒に女性が戻ってきた。筋肉モリモリのジークさんより大きい。



「待たせてすまなかった。ここの工房主のランドだ。こっちは妻のサナ。Cランクぐらいの武器と防具がいるってんで間違いないか?」



「はい。お願いします。防具は動きやすいやつで、武器は出来るだけ頑丈で重いのがいいです。」



 紹介状に最低限のことは書いてあったようなので追加の要望を伝える。防具のほうは動ければ割となんでもいいのだが、武器は人目があるときに実際に使う可能性もあるしそれなりの物がいい。



「そんで出来る限り早く、か。防具のほうは在庫の森熊の革鎧にサイズ調整の付与をしたら明日には出来るな。しかし重くて頑丈な武器か…。」



 ランドさんは視線を私の上から下まで動かして顔をしかめる。



「その条件だと普通は単純に大型の武器だが…お前さんの身長じゃ駄目だしな。新しく作るほうがいいな。一週間ほどかかるが。」



「たぶん大きいのも使えますよ?」



 ギリギリまで大きくした金砕棒よりは軽くて小さいだろうし。



「使うときより持ち歩くのが大変なんだよ。体が小さいと余計にだが、デカい武器持って歩くとあちこちぶつけちまうんだ。慣れるまで悲惨だぞ。」



「あ、なるほど。」



 たしかに普段の感覚で動いていろいろ破壊しそうだ。それは駄目だな。それにあくまでも金砕棒を使わないときの予備的な武器だし、携行してて邪魔になるのは良くない。



「とにかく重くて頑丈なだけでいいなら重魔鉄で作るのが一番だな。普通なら少量混ぜて強度上げと重量調整に使うんだが…大型武器使えるって言うなら全部重魔鉄で作ってもいけるだろ。」



「じゃあそれでお願いします。」



 もう完全におまかせだ。正直口を出してもいい方向にいく気がしない。



「一応この後重魔鉄の鉱石持ってみてくれ。総重魔鉄製の武器なんか他に売り先ねえからな。で、作るのは小剣が早いな。もともと数作るから鞘やら剣帯やらが揃ってる。お前さんでもなんとか邪魔にはならんだろうし。それでいいか?」




「はい。問題なしです。鎧の方は明日取りに来ます。あ、値段はおいくらですか?」



 絶対に逃がすわけにはいかなかったとかで野盗の分の報奨がかなり出たのでCランクの装備ならちゃんと払えるはずだ。



「いや、請求は領主様にするから必要ないぞ。というかそうしないと守秘の魔法契約の範囲外になっちまうからな。紹介状にそう書いてあったぞ?」



「え、そうなんですか。」



 帰ったら忘れないうちにちゃんと精算するように言っとかないと。変に借りがあるままは良くない。






 その後、案内された倉庫で重魔鉄の鉱石を箱ごと持ち上げた私を見て、ランドさんとサナさんは顎がはずれそうなくらい大きく口を開けて驚いていた。




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