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8話

 


 アルスターさんはすぐに謝って、服を扱っているお店に馬車を回してくれた。


 もともと孤児救済の制度を利用する予定だったが、いったんアルスターさんが払って野盗の報奨で精算になった。どうせこの後すぐに報奨の受け渡しをするからと。


 そしてまた頭から抜け落ちていた靴も購入した。まったく不便がないからすぐに忘れてしまうのだ。忘れないうちにガルーダ素材で靴も作ってもらえるようにアルスターさんに伝えておく。




 そうこうしてお屋敷についた時にはお昼の時間をかなり過ぎてしまっていた。



「遅いですよ!お昼には帰ってくると言っていたのに!…まあ可愛らしい!お父様こちらの子は!?」



「んぇ」



 早業だった。屋敷の前で馬車から降りてすぐに私より頭一つ背の高い女の子に捕まってしまった。がっちりホールドされてるけど変に抵抗すると怪我をさせてしまいそうで動けない。今まであんまり必要なかったので手加減は苦手だ。



「離れなさいミスティ。その者は冒険者だ。」



「リスティアです。Cランク冒険者です。」



 捕まったまま自己紹介する。もちろんランクは表向きの方で。



「冒険者…ではこの子が!?いけませんお父様!私より小さい子を!」



 なんだか分からないがミスティと呼ばれた女の子がアルスターさんに抗議している。たぶん頼みごとに関することなのだろう。私をホールドする腕にも力がこもっている。



「これから事情を聞いてもらうところだ。受けてもらえるかはわからん。それからリスティアはお前より一つ年上だぞ。」



「え。」



「えぇ!?」



 それなりにちゃんと成長しているつもりだった私はちょっとショックを受けながら二人と一緒に食堂に向かった。





 ひとまず食事を終えて改めて話を聞く。



「改めまして、ミスティリーナ・ハイゼンです。ミスティとお呼びくださいな。」



「これはご丁寧に。リスティアです。」



 私が完全に食事に集中していたのを見てみんな黙々と食べていたので自己紹介からだ。私達が名乗りあったのを確認してアルスターさんが口を開く。



「リスティアへの頼みというのはこのミスティの護衛だ。ミスティは春に12歳になる。帝国では12歳から15歳の貴族は帝都の学園に通うことになっていてな。そこで卒業まで護衛してもらいたいのだ。」



「護衛…ですか。ハイゼン家に仕えてる人では駄目なんですか?」



 チラリと周囲に目を向ける。この場に兵士はいないけど、壁際に控えてる使用人の中に強そうな人もいる。見えないところにも何人かいるっぽいし。



「うむ。学園には護衛一人と使用人二人を連れていけるのだが、伝統的に未成年に限られているのだ。まあ普通なら臣下の家の者から選ぶのだが…ミスティは今複数の勢力から命を狙われておってな。」



 まあ外部の実力者に依頼するくらいだからかなりやばい状況なのだろう。アルスターさんは顔を顰めて説明を続ける。



「理由はスキルだ。ミスティは『聖属性魔法』のスキルを授かった。」



「『聖属性魔法』って、聖女の?」



「そうだ。帝国では随分前から教会の影響力が落ちているから聖女として奪われるのは阻止出来たがな。」



 王国だと『聖属性魔法』を授かったら必ず教会へって聞いてたけど帝国では違うらしい。強力な回復魔法が扱える有用なスキルだったはずだけど、それが命を狙われる理由になるのだろうか。



「ミスティを狙っているのは開戦派の貴族だ。教会に属していなかろうと聖女の存在は戦争の抑止力になる。奴らにとっては邪魔でしかないのだよ。他にも理由はあるが、主な理由はそれだな。」



「なるほど。それで学園の中でも危険だと。」



 開戦派に大物の貴族もいるのだろう。学園に大きな影響力を持っているような貴族が。



「やっぱり反対です!すでにCランクなのは確かにすごいですけど相手が悪すぎます!私が学園に行かなければよいだけではありませんか!」



「学園に行くのは帝国貴族の義務だ。行かないなどという選択肢はない。それから依頼を受けるかどうかを決めるのはリスティアだ。」



 一通り話を聞いたところでずっとそわそわと落ち着きがなかったミスティが叫び、すぐにアルスターさんに窘められる。うん、よし決めた。



「アルスターさん、依頼受けます。それから彼女に教えても大丈夫でしょうか。」



「リスティアさん!いけませんからね!」



 叫ぶミスティをスルーしてアルスターさんを見つめる。



「これでもハイゼン家の娘、口は固いが…いいのかね?」



「はい。ジークさんにもその辺は自由だって聞いてるので。」



 教えとかないと護衛である私を助けようとして無茶をしかねない。

 それになにより、私とは逆の理由だけどスキルが原因で命を脅かされている彼女を、そんな状況で人の心配ばかりしている彼女を死なせたくないと思ったのだ。


 まだアルスターさんの事を睨んでいるミスティに声をかける。




「改めて自己紹介を。先日、災害級魔物のガルーダを討伐してSランク冒険者になったリスティアです。よろしくお願いしますね、ミスティ。」



 こちらを向いて私の言葉を聞いたミスティは動きを止め、ぎこちない動きでもう一度アルスターさんに視線を戻す。先程までとは違う視線を受けたアルスターさんは一度だけ大きく頷いた。



「え、ええええええええ!?」



 それを確認したミスティは今日一番の声量で叫ぶのだった。






 §





 その後、ミスティはアルスターさんにちょっとしたお説教を受けていた。



「そもそも今日連れ帰ってきて護衛を頼んでおる時点で予想くらいはしておかんか。報告は一緒に聞いておったのだから私がどこに行ってきたかも知っておったろう。」



「だって私より小さな女の子がそうだなんて思わないわよ!小さい角が生えてるくらいでただのかわいい女の子にしか見えないし!」



 正直これは殆どの人がミスティに同意するんじゃないかな。どう見てもガルーダを倒せるような人間じゃないでしょ私。





獣人化のスキルを授かった人にケモミミ生えてたりするのでリスティアの角はあんまり目立ってなかったり


あとミスティも普通に優秀です

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