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7話

 


 ガタガタと揺れる馬車の中。話を切り出したのは領主さんだった。



「改めて、ハイゼン領の領主のアルスター・ハイゼンだ。君には今回の事と別に頼みたいことがあるのだが…ひとまずガルーダの素材について話そう。」



「カシム隊長からは魔石を領主さんが買い取って残りをオークションって聞きましたけど。」



 たしか昨日そう言っていたはずだ。希少な魔物はそうするのだと。



「うむ。Aランクの魔物はそうなのだがな、流石にガルーダは希少すぎる。なにせ討伐されたことが殆どない上に今回のあれは殆ど傷がついておらん。おそらくはすべてそのまま国が買い上げることになるだろう。」



 私が倒したのが三体目なんだったか。たしかに物凄い希少だ。



「買うといってもあれは値段がつけられるような物ではない。なにも言わなければ対価は爵位に領地、それに国の宝物庫からいくつか宝が下賜されることになるだろう。それを望むならいいが…どうだね?」



「爵位も領地もいらないですね。宝は使えるものなら良いですけど。」



「だろうな。ならば自分からなにか要求しなければならんが何かあるかね?」



 自分から要求さえすれば、望む願いを叶えてもらったということで対価として充分であるとされるらしい。


 とりあえず考えてみるが何かあるだろうか。私はこれから冒険者として活動するつもりだ。その時に必要になりそうなものがいい。



(武器は金砕棒があるからいらない。じゃあ防具かな?でも本気で動いたら結局壊れちゃいそうな…あ。)



「服が欲しいですね。出来る限り頑丈で、サイズ調整と修復、浄化あたりの付与がついてるのがいいです。」



「まあその程度なら簡単だろうが…それだと流石に対価として認められんと思うぞ?あまりにも小さすぎる。」



 今一番ほしい物だったのだが却下されてしまった。私はいまだに裾と袖をちぎったブカブカローブだけなのだ。今は他にほしい物は思いつかない。



「うーん…、それなら服の素材にガルーダを指定するのはどうでしょう。ガルーダ素材を加工出来る帝国最高峰の職人を紹介してもらって服を一揃え作ってもらう感じで。」



「ふむ…。たしかにそれは普通なら叶わない願いではあるな。君の持つ素材ではあれど帝国お抱えの職人に依頼など出来ることではない。それでも国側がかなり有利だが、まあ許容とされるか宝物庫の宝で埋めるかは国の担当者の決めることだな。君の希望はきちんと伝えておこう。」



 よし、これならいいらしい。正直他には全然思いつく気がしないから良かった。実際に冒険者を始めたら欲しくなるものがあるかもしれないけど、それは冒険者として稼いだ分で買えばいいだろう。




「おう、話ついたなら今度はこっちだ。まあこっちはSランクの話の続きだが。」



「はい。」



 返事をしてジークさんに向き直る。



「Sランクは特殊なランクだ。依頼は緊急性が高く、どうしてもSランクが必要だと判断されたものだけが回される。その方法も特殊でな、ぶっちゃけギルドにSランクとして登録されてれば問題ない。とくに義務とかもないから好きにしてればいい。なんなら回された依頼も拒否権がある。」



「え、そんなので大丈夫なんですか。」



「いいんだよ。というか強すぎて強制するのが不可能なんだ。こっちとしては協力してくれると助かるが。」



 規格外しかいないからその辺は諦めているらしい。有事になるべく協力してもらえるようにギルドとして守り、それでいて縛らずにいるのだ。



「ただ悪事を働いてたら別だ。他のSランクに連絡がいくからな。Sランクは自分と対等に戦える相手なんてほぼいないから割と喜んで潰しにいく。」



 一応ストッパーはあるようだ。結局Sランク頼りではあるけどそれはもう割り切るしかないんだろう。



「後はそうだな…。自由だって言ったが基本正体は隠しといた方がいい。ギルドを通さずに依頼を頼みにくるやつとか顔を繋ぎたい貴族とか面倒事が山ほどくるからな。自分の方が上だとかいって喧嘩売りにくる馬鹿もいたりするぞ。」



「絶対隠しときます。あれ、でもアルスターさんとかはいいんですか?」



 ばっちり貴族にSランクだって知られてるけど。なんなら討伐を見てた兵士さんたちも。



「流石にガルーダのことがあるからな。領主に隠すのは不可能だ。他に情報が漏れないように協力してもらうんだよ。知ったからってSランクを敵に回すようなやつじゃないしな。」



「うむ。まあ正直なところ個人的に頼みたいことはあるのだが…。無理にどうこう言うことはない。出来れば後で話を聞いてほしくはあるが。」



「問題ないならいいです。頼みも強制じゃないならとりあえず聞きますよ。」



 結果的に森から無事脱出してもろもろいい方向に向かってる。直接はカシム隊長さんたちがいい人だったからだけど、その恩の一部を領主のアルスターさんに返すのも変じゃないだろう。Sランクの情報規制に協力してくれるんだし、いい関係を築くのは私にとってもプラスなはずだ。



「そうか、感謝する。受けてくれることを祈っておこう。近頃問題が多くてな…。」



「えっと、なんかごめんなさい。」



 遠い目をしたアルスターさんに、どう考えても仕事を増やした側の私は思わず謝罪した。




「Sランクのギルドカードを用意するのには一月ほどかかる。それまではこの街を拠点に活動してくれ。冬だから魔境には入れねえが近場にダンジョンがあってな。そっち関連の依頼があるからよ。」



 街に着くとジークさんはそう言ってギルドに戻っていった。


 ダンジョンというのは魔力溜まりに出現する構造物の事である。内部は異界になっているので外の影響を受けない。寒い冬でも中は暖かいのだ。


 ダンジョンには倒すと死体が消えて一部の素材だけが残る魔物、外の魔物と区別してモンスターと呼ばれる生き物が存在している。本来その地域にいない魔物素材が手に入ったり、季節に関係なく薬草が採れたりと重宝するらしい。


 奥には魔導具が生成されていることもあって、多くの冒険者が挑戦しているのだとか。




「リスティアが良ければ早速頼みごとについて聞いて貰いたいのだが、このまま屋敷までいってもいいだろうか。野盗の報奨も渡したい。」



 ジークさんを見送ったあと、アルスターさんが言ったその言葉にすぐ返事を返す。



「お屋敷に入る前に服が欲しいです。」



 貴族の屋敷でこのズタボロぶかぶかローブを着たままでいるわけにはいかないしね?




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