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5話

 


 失敗した。私は悪人を殺して女の子と子供を開放したらすぐ消えるつもりだったのだ。追いかけてきてるらしい領軍の兵士が彼女たちを保護するのを少し遠くから見届けて森を抜けようと思っていた。


 リーダーっぽいやつが話しかけてきて、これは時間稼ぎだと思った。だからその時近づいてきてる集団が悪人側の援軍かと思って纏めて殺すつもりで待ってしまった。



 とりあえず金砕棒は消しておく。ここで見つかってしまった以上面倒になるのは確定みたいなものだ。指示には従っておこう。



「な…いや。君がそこの野盗をやったので間違いはないかね?」



「…?はい。そこの焦げてるのと多分向こうの藪の中にも一人。それからあっちの少し離れたところで3人。」



 一瞬絶句したような雰囲気を出した領軍の隊長っぽい人の質問に素直に答える。野盗たちは大人しくしており逃げる気配はない。さっき逃げようとしたやつを燃やしといたのが効いているのだろう。


 隊長さん(?)は私の返事を聞くと周りの兵士に指示を飛ばした。どうも死体を回収しにいくらしい。多分半分くらい原型留めてないけど大丈夫かな。



「改めて協力に感謝する。私はこの部隊の隊長でカシムだ。」



「リスティアです。たまたま見かけただけなのでお気になさらず。」



 隊長で正解だったらしい。


 カシムさんは私の返事を聞くと顔を引き締めて続けた。



「リスティアだな。君には聞きたいことがいくつもあるんだが…とりあえず、靴はどうしたのかね?」



「…あ。」



 完全に忘れてた。裸足で全然問題なかったし。


 しばらく悩んだが、結局うまい言い訳が思いつかなくて面倒くさくなったので全部話すことにした。もうどうにでもなーれ。




 §




 リスティアと名乗った少女は、信じてはもらえないと思うけどと前置きして話しはじめた。そしてその内容は確かに信じがたいものだった。


 5歳の子供がこのミスティア大森林に捨てられ7年間も生き延びたなどといったい誰が信じるだろうか。



(だが、おそらくは事実なのだろうな…。)



 女性の部下に確認させたがローブの下は衣服を身に着けていないらしい。そのローブも今回殺した相手から奪ったものだ。冬のミスティア大森林に何一つ身につけていない子供がいる。その子供が野盗たちを壊滅させた。そんな現実の時点でそもそも信じられないのだ。


 スキルについてはぼかしていたが、額から生えている角が捨てられる原因になったことは想像できる。わざわざ捨てる場所にミスティア大森林を選ぶ時点で貴族だろう。貴族の令嬢にとってあの角は致命的な欠陥とされてもおかしくない。



(それにあの時持っていた武器、魔武器だ。つまり彼女はスキルが進化している。)



 リスティアは最初に制止したとき、持っていた武器を消した。あんな事が出来るのは魔武器だけだ。


 殆どの者が生涯スキルを進化させられず、才あるものでも成人後10年は修練が必要だと言われる。そのスキル進化を既にしている。その事実だけでも、彼女の話が真実だと認める根拠になるだろう。



「うむ、ひとまず事情はわかった。君のことは我々で正式に保護したという形にしようと思うが…構わないかね?」



「保護…ですか?」



「野盗退治の報奨が出るにも多少の時間がかかる。なにも持っていない君を街に放り出すわけにもいかんからな。」



 孤児というのはどうしても出てしまう。親が魔物に襲われた者もいれば野盗に村ごと滅ぼされた者もいる。そういう孤児を保護して最低限のサポートをする制度があるのだ。当然受けたサポート分の返済が終わるまでは領外への移動は禁じられてしまうが。



「衣服や諸々の小物と冒険者の登録料をいったんこの制度で出す。野盗退治の報奨が出ればその時に返済して終わりだ。君がどんな状態であれ立場上施しをするわけにはいかなくてな。」



「なるほど、わかりました。ではそのようにお願いします。」



 説明をするとリスティアが頷く。5歳から人と関わっていなかったというのに理解力が非常に高い。当たり前のように話しているから気にならなかったが、事情を考えればそもそも普通に会話ができている時点で異常だ。



(天才…などという言葉では足りんな。)



 話しているうちに撤収の準備を終えた部下に号令を下す。早く街に戻って報告しなければならない。野盗たちの捕縛。そして、主の頭を悩ませているとある問題の光明になりうるリスティアという少女のことを。




 §



 森を出て馬車に揺られて街へ向かう。カシム隊長になぜだか普通に話を信じてもらった私は、領軍の兵士さんたちと一緒に領都へ行くことになった。



(思ってた流れとは違うけど、とりあえず森から脱出して冒険者にはなれそう。)



 兵士さんに聞いたところによると、ここはリヒト帝国のハイゼン領らしい。私のいたエルサ王国のリーゼシュタウト領のお隣である。リーゼシュタウト領だったら逃げるつもりだった。家を追われただけで街で暮らすくらいなら問題ないはずだけど、気分的に嫌なので。



「しかし本当に小さいわねー。これからはいっぱい食べて大きくなるのよ!」



「食べてはいたんですけどねー。」



 馬車は2台あったのだが一台は気絶した女の子と子供が、もう一台は野盗たちの死体が詰められたので私は御者台にいる。生きてる野盗たちは馬車に繋がれて歩きだ。


 私の隣で御者をしているのはカーラさんという部隊唯一の女の人で、私が年齢の割に小さいのがどうしても気になるらしい。ローブの下を確認したんだから変に痩せてるわけではないのを知っているはずなんだけど。



「あ、魔物だ。」



「え、うそ!どこ!?」



 道を進んでいるとたまに魔物を見かける。魔境の外だからか大したやつはいなかったのだが今回はかなりの大物だ。しっかりこっちを狙ってるし。


 カーラさんは見つけれてないみたいなので指差して教える。魔物がいるのは遥か上空だ。気配を感じるには遠すぎる距離だが獲物として狙われたので気づけた。



「あそこです。飛んでるやつ。この馬車を狙ってますね。」



 私の言葉にカーラさんは懐から筒のような物を取り出して覗き込む。遠くを見る道具かな。



「ガルーダ…!?そんな馬鹿な!」



 カーラさんが声を上げるのと同時に上空の魔物、ガルーダが翼を畳んで急降下をはじめた。



 領軍の人たちの対処は間に合いそうにないし、こっちでやっちゃおうかな。





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