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4話

 


 殺すのは一旦決定として少し様子を見てみる。近くまで来たことで分かったこともある。



(女の人と背負われてる子供は無理やり連れられてるっぽい。それを囲んでいる6人が賊で…ちょっと離れてる3人はなんだろう?)



 出来ればあの連れられてる女の人にも見られずに殺して服を奪いたい。それに気になることも言っていた。



(魔物避けとか言ってたあのペンダント…魔力を感じない。魔物避けの魔力が出てるのは離れてる3人の方からだ。)



 魔物避けは冒険者が休憩するときに使っていたから知ってる。起動すると独特な魔力を放ち魔物が離れていくのだ。



 全員が同じグループなのかと思ってたけどどうにもおかしい。女の人は完全に被害者だろうけど囲んでる奴らも何か騙されてる気がする。悪人なことに変わりはないだろうけど。とりあえず離れてる3人のほうの様子も見に行こう。




(気配は向こうの奴らに比べて薄いけど…魔物避けの魔力でバレバレだ。)



 少し離れたところから様子を伺う。こっちの奴らはなんと3人ともフード付きローブを身に着けていた。ぜひ欲しい。



「どこまで奥に行かせる?足止めはしてあるとはいえあまり時間をかけると領軍の兵が追いついて来かねんぞ。」



「確実に葬れってことだからな。もう少しだ。女なんか連れてきやがったせいで進みが遅い。馬鹿どもが。」



 2人はイライラした様子で会話しているがもう一人はせわしなく周囲を警戒している。魔物避けの魔力を放っているのは警戒しているやつだ。


 そして聞く限り別の勢力で間違いないようだ。偽の魔物避けを渡していることといい適当なところで離れて魔物に襲わせる計画だろうか。



 なんにせよこっちも悪人で良さそうだ。殺してローブを貰おう。



 拾った石を遠くの木に投げつけて音を立てる。静かな森の中にかなりの轟音が響く。



「なんだ!?」



「はぐれの高位魔物でも出たか!?」



 会話していた2人は焦り、警戒していたやつも音の方を向いて武器を構える。隙だらけだ。


 静かに無言のやつの背後に近づきフードを取る。そして振り向く前に手刀で首をちぎり飛ばした。血が吹き出す前に炎で首がちぎれた面を焼いて塞ぐ。これでローブは汚れない。


 残りの2人も振り向こうとしているところを金砕棒で叩き飛ばして殺した。見られずに全滅、フード付きローブを汚さず確保。完璧だ。



 死体が固くなる前にローブを回収。服も全部取りたいが残りのグループの方が騒がしいしとりあえず体を隠せるローブがあればいいや。どうせサイズがまったく合わないし。



(先にあっちの女の人と子供を助けに行こう。)



 そう思って駆け出して、すぐにローブの裾を踏んで転んだ。うん、ちぎって長さを調整しよう。裾と、ついでに袖も。




 §




 ついさっきまで静かだった森に轟音が響く。冒険者さんからは大量の魔物がひしめいているという話ばかり聞く冬の魔境で、いったい何が起こっているのか。



「クソッ!なんだってんだ!早く歩け女!」



「きゃ!」



 後ろから押されて地面に倒れてしまう。意識を失った弟を背負って長い間むりやり歩かされて、もう限界だった。


 突然村が野盗に襲われて攫われた。領軍の兵士の人が来てくれて助かったと思ったら、私と弟だけはこの男たちに連れて来られてしまった。


 この男たちはなにかの指示を受けているようで、迷うことなく魔境に入った。冬の魔境に入るのが自殺行為だなんて子供でも知っていることなのに。



「何やってやがる!もうそんな女はいい!さっさと行かねえと何が起こるかわかんねえぞ!」



「お、おす!わかりました!」



 野盗のリーダーの指示で男たちが進んでいく。どうやら開放されたみたいだけど、もう動けなかった。野盗の言っていた魔物避けの範囲から出たらそのまま魔物に食べられてしまうだろう。



(やだ…死にたくない!誰か…助けて…!)



「よし。間に合ったかな。」



 聞こえてきた声は子供の声だった。まだ幼い女の子の声。



「子…ども…?」



 野盗たちの進む先、立ちふさがっているのはフードかぶった子供だった。ローブの裾と袖は無理矢理にちぎられたようになっている。大きなフードでまったく顔が見えず、裾から覗いてる足が靴を履いていない素足なのが異様だった。



「ああ!?なんだガキ!どけや!」



 野盗の一人が突然現れた子供を威圧しながら迫る。次の瞬間、迫っていた野盗は上下2つに別れて血を撒き散らしながら吹き飛んでいた。


 場が静まり返る。その静寂を破ったのは首を傾げた子供の声だった。



「さっきの奴らより脆い…?見た目はこっちのが頑丈そうなのに…。」



 その手にはいつの間にか金属で出来た棍棒のようなものが握られている。



「うわあああああああ!」



 野盗の一人が悲鳴を上げて逃げ出す。その野盗はたいして離れてもいない私のところにたどり着くよりも前に、突然炎に包まれた。



「ぎぃやあああああ!」



「逃がすわけないでしょう。」



 一瞬前とは違う理由で悲鳴を上げる野盗に子供が呆れたように言い放つ。いったいどうやったら人を突然炎上させられるのだろうか。そしてどうしてそんなに平然としていられるのだろうか。



(怖い…。怖い怖い怖い怖い…!)



 あの子供が攻撃しているのは野盗だ。私はきっと助けられているんだと思う。それでも恐怖を抑えることができず体が震える。目を離したらあの武器で叩き潰されるのではないか、まばたきをしたら自分の体が燃え上がるのではないか。そんな想像が頭に浮かんでしまう。



「お前…いったい何なんだ…。なんで…俺らを攻撃する。」



 野盗たちのリーダーが震える声で子供に問いかける。



「なんでと言われても、あなた達みたいなのは見かけたら潰して当然では?」



「ひっ…」



 子供の答えに野盗の一人が声を漏らす。この子供にとってはただ当たり前のことをしているだけなのだ。野盗はその場で殺しても罪には問われない。たしかに当たり前のことだけど、小さな子供が、圧倒的な力でそれを行っているのはただただ恐怖だった。




「な、なあガキ!今こんなとこに居るってことはお前も訳ありなんだろ!?俺らと組まねえか?自由に使える人手があったらお前も便利だろ?なあ!?」



「答えはわかりきっているでしょうに、時間稼ぎですか。今ここに向かってる10人程度がそちらに加勢したところで結果は変わりませんよ。」



 野盗のリーダーの言葉を子供は一蹴する。そして手に持った武器を持ち上げて野盗たちに迫っていく。





「領軍だ!双方武器を下ろせ!」



「…え?」



 もう少しでまた野盗が殺されるというところで私の後ろから声が響いた。


 その言葉に対して子供が気の抜けた声を出したのを聞いて、緊張の糸が切れた私の意識は暗転するのだった。





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