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10話

 


 一週間が経った。



 制作を依頼した翌日には防具のほうを受け取って、とりあえず金砕棒を持ってダンジョンに行く気になっていたのだが問題があった。


 金砕棒は重すぎて手に持って歩く以外に保持する方法がないのだ。



 刃物ではないとはいえ往来で武器を手に持って歩くのは間違いなくアウトだ。魔法使いの短杖(ワンド)くらいまで小さくすれば腰に提げることも出来るがそれでは武器を持ってるように見えないので駄目。



 結局良い方法が思いつかなかったので剣が出来上がるまで待つことにした。


 この一週間はミスティの授業を一緒に聞いたり、ハイゼン家が保有している本で許可を貰ったものを読んだりしていた。


 考えてみれば5歳でミスティア大森林に捨てられてから初めての落ち着ける時間だった。ダンジョンに行けなかったことで、意図せずちゃんと休めたのは素晴らしいことだったと思う。



 そして今日、ついに完成した小剣を受け取りに行ってダンジョンに向かう日である。



「おはようございます。剣の受け取りにきました。」



「おう、来たな。ばっちり完成してるぜ。よい、せっと!」



 ランドさんが声を上げながら剣をカウンターの上に置く。見た目は小剣の中でも小さいくらいの剣なのに物凄く重そうだ。



「理屈はまったくわからんが重魔鉄だけで作ると重量が想定の倍くらいになってな。魔導具で調べた強度も同じくらい上がってたぞ。まあ、お前さんなら問題はなかろう。」



「不思議なこともあるんですね。あ、見た目は普通の鉄剣なんですね。」



 ぱっと見は前に見本として見せてもらった普通の鉄剣と変わらない。



「重魔鉄も元はただの鉄じゃからな。並べればちっと色味が違うぞ。それで、付与は本当に頑強と加重でいいのか?」



「はい。その二つでお願いします。」



「そうか…。まだ重くするのか…。いや、すぐに付与してしまおう。」



 重魔鉄の剣に付与できる数は二つだ。素材のランクで付与できる枠が決まるらしいのだが、私は剣の付与枠も重さと頑丈さを上げるものをお願いした。


 ランドさんはカウンターの脇に置いてある紙を剣の上に置くと、その上から瓶に入った液体を垂らした。剣が光り、それが収まると紙は無くなっていた。



「おー。」



「完了だ。一応振ってみな。」



 ランドさんに促されて剣を手に取り、その場で何度か素振りをしてみる。ちゃんと習ったことがあるわけではないので適当だけど。同じサイズの金砕棒よりは軽いけどしっかり重さを感じる。



「本当に何でもないように振り回すな。お前さんの体重より遥かに重いはずだが一切体が流れてないのもスキルか…?」



 それを見てランドさんが呟いているがその辺は私もわからない。一緒に首を傾げておいた。



「まあいい。後こっちが剣帯と鞘だ。剣が重くなりすぎたから鞘には収めた剣の重量を軽減する付与をしてある。それでもアホみたいに重いから剣帯は壊れないように頑強を付与した。」



 説明を受けながら装備していく。剣を鞘に収めて軽く動いてみるがとくに違和感なく動ける。



「ばっちりです。良い物をありがとうございます。」



「おう。まあ良いもん作るのが仕事だからな。年に何回かは修復陣で直すようにな。この街にいる時はうちに持ってくればいいが他の街ではちゃんとどんな武器なのか説明してからにしろよ。」



 事故で大怪我する奴が出ても不思議じゃねえからな、というランドさんの言葉に頷いてからその場を後にし、ギルドに向けて歩き出した。







 §




 カラカラとドアベルが鳴る。その音に反応して手を止めチラリと入り口を見る。


 早朝に張り出された依頼を冒険者たちが受けて出ていき一息ついたタイミングだった。ギルド内に残っている冒険者はもともと今日を休みにしていたパーティといい依頼を取りそびれたパーティだ。



 開いたドアから入ってきたのは小さな女の子だった。革鎧を身に着けて剣を提げているので冒険者だとは思うが…。



(子供の登録は10歳になる年の春のはずだし…、冬に子供が別の町から来たとも思えないけど…?)



 子供はギルドに入るとキョロキョロと周囲を見回し、そのまま依頼の貼ってあるクエストボードに向かう。


 ギルド内で騒がしく飲み食いしていた冒険者も子供の方を見ていた。



「おいガキ。お前が受けられる依頼はそんな上の方にはねえぞ。」



 子供の様子を見て冒険者の一人が近づき声をかける。顔は恐ろしいし言葉も乱暴だが子供が好きなことで有名なヴァイスという冒険者だ。よく子供に親切心から声をかけて泣かれてはヘコんでいる。


 子供はすぐに振り返りしっかりヴァイスさんの顔を見て返事をした。



「心配してくれてありがとうございます。でも大丈夫ですよ。私Cランクなので。」



「は?」



 聞き間違い、だろうか。ヴァイスさんの顔を見て、あの小さな女の子が泣かなかったことが衝撃で幻聴が聞こえたのだろうか。



 固まったヴァイスから目線を外した子供は軽くジャンプして依頼を剥がし、受付まで持ってきた。



「これ受けるのでお願いします」



「は、はい。ギルドカードを確認しますので提出してください。」



「はい、どうぞ。」



 子供からギルドカードを受け取る。名前、リスティア、年齢は12、そしてランクは…C。依頼受付の確認に魔導具に通すが、間違いなく本物のギルドカードだった。



「Cランク冒険者、リスティアさん…ですね。手続きは完了です、お気をつけて。」



「はい。いってきます。」



 処理を完了してなんとかいつもの見送りの言葉(定型文)を絞り出す。笑顔で返事をしたリスティアさんが依頼へ向かう。



 ギルドの中に音が戻ったのはそれからしばらくしてからだった。







 §




「ふざけやがって、あのガキがCランクだと?」



「あれがCランクなら俺らはなんだ?Aランクか?」



「チッ、おままごとじゃねぇんだぞ。」



 最近この街にきた冒険者パーティの男達はそう吐き捨てながら酒を飲んでいた。冬で魔境に入れなくなった上に、普段から金を貯めてもいないのでダンジョンがあって冬でも稼げるこの街にきた。だが同じことを考える者が多く、ここに来てからは割のいい依頼を受けることが出来ていなかった。


 しかたなく面倒な依頼をこなし、金がある間はギルドで酒を飲む。そんなことを繰り返しているときに来たのがリスティアだった。あんな子供がCランク、何年もDランクから上がれない自分たちより上だなどと納得できるわけがなかった。



「どんなカラクリかはわからんがギルドが認めてんだからCランクではあるんだろうよ。クソッ、気分ワリィな。」



「どうするよ。潰すか?Cランクでも囲めば殺れるだろ。」



「先にどうやってCランクになったのか吐かせてからな。スキルがどんだけだろうと、あの年でCランクなら絶対に何かある。」



 ギルドの隅で酒を飲みながら、男達の不穏な話し合いはその後も続いた。





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