3,女神は現場猫だった
俺は投げつけたミトンを拾い、手にはめた。ミトンをわざわざつける必要なんてないのだが、まだ頭が混乱しており、その奇妙な行動に気が付かない。
「そもそも何で爆発するんだよ」
「それがのぅ、童にもわからんのじゃ。こんなの初めてなものでなぁ。
ちょっとアルゴに聞いてみようかのう」
そういって女神はシステムの端末らしき画面を何度もタップし、時々“うーん”と首をかしげている
「さっきから触っているそれは何?」
「ああこれは通称アルゴノスシステムといってな、
何でも勝手に考えてくれる非常に便利なものじゃ。詳しくはしらん」
どうやら神界の知識を収集・解析しいろいろ作業をサポートしてくれるいわゆる AI のようなものらしい。女神はそれを操作するオペレータみたいなものか。
「うーん、どうやらリオンの世界の物質は……反マナで構成されており……?。
それをマナ世界?に放り込むと…大爆発が起こるらしい。
いったいなんのことやらさっぱりわからんのう」
おまえシステムに聞いただけでなんにも理解してないじゃん!とは突っ込まないでおこう。話がそれる。
「何でそれを最初から把握してないんだよ!」
「そんなこと言われてもじゃな、アルゴは聞いてみないと教えてくれんのじゃ。
それとな、反マナってなんなんじゃ。初めて聞いたぞ?
お主の世界、ちと特殊すぎるじゃろ」
元の世界では「物質」「反物質」が存在し、それが互いに接触すると対消滅とともに質量がエネルギーに変換され大爆発を起こす。という物理現象は存在する。マナ、反マナも似たようなものだろうか。
「しかもなんでアルゴがわざわざそんな危険なお主を転移の対象に指定したんじゃ。
こいつたまにわけわからんからのう。壊れとるんかのう」
そんなこと言われても困る。大体そういった場合、大概はシステムじゃなく使用者の問題だけどなー……とは突っ込まないでおいた。
「まあ今更作業は中断できないので、何とか対処法見つけていかんとのう」
そういって異世界への転移オペレーションを成功させるべくトライアンドエラーが始まったのだった。
*****
「まず反マナとやらをマナに変換できないか、試してみようかのう
アルゴよ、変換!」
そういってキクリはアップルパイの方向をむき、パネルをタッチ。
「どうやら問題ないようじゃ」
「おい!俺に相談なしにいきなり何やってんだ!失敗したらどうする、
俺の私物だぞ!楽しみにしてるんだからな!!!」
「では次リオンじゃな、ぽちっ
……ふむ、なんか確認が出とるな。まあええじゃろ、ぽちっとな」
あかーん、こいつ確認メッセージもろくに確認しないで実行しやがった!うかつにもほどがある。
それで世界が2度も消滅したばかりだというに!
こんな現場猫みたいなやつ運用にしちゃいかんだろ、どうなってるんだ神界は!
そう心の中で突っ込んでいると、妙に体がふわっと軽くなった。変換が成功したのか?
『おい、もっと慎重にやってくれよぅ。頼むからさーーー』
キクリは俺を見上げて言った。
「どうやら生きているものには無理みたいじゃな」
俺の眼下にはキクリと、自分自身の体があった。
これは……
『あほかーい、幽体離脱しとるやないかーい!』
思わず関西風に突っ込んでしまった。
「わるいわるい。ぽちっとな」
体の重量感が戻り、俺の魂は無事元のさやに納まった。このくそ女神め!!
初めての小説投稿になります。
普段は「小説家になろう」で読むばかりで、書くのはまったくの初心者です。
拙い文章かもしれませんが、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。




