2,そう簡単に異世界に行けるものではない
気が付けば、エプロンとミトンという立ち姿で、真っ白い何もない空(以下略
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「さっきのは何だったんだ……、さっきも来たここはなんなんだ……」
祖母のキッチン、この真っ白い空間、見知らぬ広間……
俺は何が現実なんだか、それともすべて夢なのか混乱していた。
「おい、そこの人間よ、聞こえておるか!こっちを向けい」
ゆっくり振り返ると、何か小さな光の塊が浮遊していた。
俺はそれがなんだかすでに知っている。
「松平 理央よ、呼びにくいのでリオンと呼ばせてもらうぞ。」
「あのー、さっきのは一体何だったんですかねっ!」
「うん?何を言っておるのじゃ。夢でも見ていたのかのう」
「いや俺、確かに広間の真ん中で大爆発しましたよねっ!」
「……いやそんなことないはずじゃぞ、まあいい、ちょっと試しに行ってみてくれるかの」
と何やら宙に浮かぶ画面を今度は慎重に指差し確認しながらぽちっと押した。
「ちょちょちょちょっとまってーーーーーー」
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「また爆発か。うーん、ただの転移ミスってことではないようじゃのう……」
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エプロン姿のおっさんと、雰囲気だけは神々しい女神が無言で見つめ合う。
「あのさぁ!何でこっちの意見も聞かずいきなり転移するんだよ!!」
「おい、ちょっとまて。お主とは初対面のはずじゃぞ」
「初対面じゃない。お前キクリだろ?それにさっきテーブルの上に置いたアップルパイがそこにある!!」
……しばしの静寂のあとキクリがめんどくさそうに話し出した。
「……あー、まさかとは思ったがのぅ……
お主記憶があるみたいじゃのう……」
「そうだよ!さっきからポンポン転移させて、挙句に爆発ってなんなんだよっ!!」
キクリはしぶしぶ説明を始めた。
「異世界間の移動はな、簡単じゃないんじゃ。
体が動かなくなったり、毒に侵されたり……
髪がごっそり抜たり、性転換が起こったり……
最後はなぜか喜ぶやつもいるがのう」
なので、いったん転移先の世界をテストモードにし、転移後、なにか問題があればもとに戻すを繰り返して安全確認。無事問題がなければ、本番モードで転移。ということらしい。
通常、この空間に戻ってくるたび記憶はリセットされるのだが、リオンにはそれが効いていない。
「だからっていきなり説明もなしに転移ってありえなくなくなくなーい?」
「いや、どうせ忘れるからと思ってめんどくさくてのぅ……」
思わずミトンをキクリの顔面めがけてブン投げた!
「わし、これでも女神なんじゃがのう……こんな仕打ち、初めてじゃ……」
キクリは顔にミトンが当たったまましばらく固まっていたが、やがてぽろりと落ち、べそをかきそうな顔があらわになった。
初めての小説投稿になります。
普段は「小説家になろう」で読むばかりで、書くのはまったくの初心者です。
拙い文章かもしれませんが、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。




