22、キクリは娯楽に飢えている
そこは真っ白いおなじみの空間、俺の体は透けている。どうやら神界の方からコンタクトしてきたみたいだ。
「なんでまた夢の中なんだよ」
「いやのう、声だけで話すより
顔合わせたほうが話しやすいと思うてのう」
まあ、たしかに相手の表情も見えるし、アルゴの端末も見える。俺がキクリと会話すると、アナスタシアがどうも何か勘ぐってるようだし、まあいいかと思い会話をすすめる。
「ところで今日はなんの用?
まだ引っ越したばっかりで、
実験なんにも手がついてないんだけど」
「そうじゃ、ちょっとな、
あーかいぶ見てて気づいたことがあってのう
アルちゃんお願いなのじゃ」
《了解、キクリちゃん、ちょっと待ってね!》
あーかいぶ?アーカイブのことか。ずいぶん神界はデジタルなんだな。そう考えているうちに、目の前に半透明の画面が現れ、ちょうど俺がミトンを間違って、ロウェナに投げるところが写っていた。キクリが操作すると、映像は動き出した。
「リオン、お主投げるの下手じゃのー
このロウェナの、
ぽかんとした様子、
何度見ても飽きぬのう!」
とキクリはゲラゲラ笑い出す。おまえ、何度もみて楽しんでるのか。アルゴの使い方間違ってないか?
「なに笑ってんだよ!
なんか話があったんじゃないのかよ!」
「ああ、すまぬすまぬ
つい、見入ってもうた」
とキクリは頭をコツン、ウインクをして、「てへぺろ!」と舌をぺろっと出した。
俺は一瞬何が起こったのかわからなかった。いや確かにお前の外見は可愛い。それは認めてやる。しかもその表情も完璧だ。おかしいのはな、こいつはこんなことする奴じゃなかったはずだ!
《おいアルゴ!
キクリに何教えてんだよーーー!》
「アルちゃん、
リオンが怒っとるぞ?
教わったとおりやったつもりじゃがのう」
《リオン、許してー、てへぺろ!》
俺を置いてけぼりにして、二人して笑い転げていた。
*****
「で、本題なんじゃがのう
ここを見てほしいのじゃ」
今度こそ本当に本題だろうなとムスッとして画面を見ると、そこはミトンを投げる前、俺ががっかり勇者だったと好き放題言われている場面だった。これは今思い出してもムカつく!
「これが何なんだよ!」
「そう拗ねるでない、
ほれリオンからなんかモヤが見えるじゃろ?」
《これね、多分反マナが溢れ出そうになってると思うの!》
つまりこういうことらしい。俺はこのとき馬鹿にされ、とても感情が不安定になっていた。その感情に反応するように、マナ・シェルが不安定になった結果、反マナが漏れたのではないか……と
「つまり?」
《リオンの魔法って
もしかしたら、意識的に
操作できるようになるかもよ!?》
*****
俺はいつもより早くに目が冷めた。まだ辺りは薄暗い。さっきまで夢の中で会話していたせいか、目はぱっちり冴え渡っている。意識的に魔法が操作できると言ってもなあ、常時勝手に発動しているから、全く実感がない。
「ちょっと試しにやってみるか」
とベッドから起き出し、寝間着のまま色々試してみる。まずは座禅を組んで瞑想。深呼吸をし、無の境地に達しようと努力するが、すでに誰か料理しているのか、パンの香ばしい匂いに邪魔される。
次に太極拳のモノマネ。両手をゆっくり動かしながら「気だ、気をかんじるのだ」とつぶやくが、すぐに太ももがぷるぷる震え出した。
「次はこれだ!」
と、両手で適当な印を結びながら、陰陽師の真似をしてみる。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前
か・○・は・○・波ーーー!」
何も起こらなかった。
「あほらしい。
動いたらお腹空いた」
と独り言をブツブツと言って部屋を出た。
*****
「アルちゃん、
今のリオンの動きはなんじゃ?
面白かったのう」
《キクリちゃん、これもアーカイブしておくね!》
「結構あーかいぶがたまったのう
他の女神にも、
見せてあげたいのじゃ……」
《……じゃあ、
みんなで見れるよう
えすえぬえす作ってみる?
地球で流行ってるの!》
「リオンの世界の流行?
面白そうじゃ!」




