1,初めての召喚、というか爆発
気が付けば、エプロンとミトン、両手には天板にアップルパイという立ち姿で、真っ白い何もない空間にぽつねんと立っていた。
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俺何してたんだっけ。たしかこれからパイ食べようとして、オーブンから取り出して……
周りを見渡しても白いばかりで何もない。意識ももやがかかっているというか、これは夢のつづきだろうか。
「……よ、…………そこ……人間……か?」
何かが語りかけてきているような気がする。
「お…、そこ…人間よ、聞こえておるか!こっちを向けい」
ゆっくり振り返ると、何か小さな光の塊が浮遊していた。
じっと目を凝らすと、だんだんと人型のシルエットが浮かびだし、
そこには、銀髪の…………例えば神話のイザナミのような姿をした女の子?がいた。
「やっと気が付きおったか、あー名前は松平 理央か。めんどくさいのう、リオンと呼ぶぞ。」
見た目と発言とのギャップに少しとまどいながら尋ねる。
「あ、あのどちら様で……」
「ああすまんすまん、女神キクリじゃ」
とけだるそうに名前をこたえた。本名:キクリ・アマリリス・セレスティア、女神である。
「悪いけどのう、リオンは今から勇者として異世界に行ってもらうことになるのじゃ」
「えーと、要するに異世界転移というものに巻き込まれたというわけですか」
「理解が早くて助かるのう」
異世界転移についてはライトノベルで読んだ記憶がある。まさかそんなものに自分がまきこまれるとは思わなかった。そもそもそんなものが現実にあるわけなかろう。
「まずその手荷物をそこにおいてくれるかの」
と、何もなかったところにテーブルが出現した。
……うながされるまま天板ごとアップルパイをそこに置いた。
「ではちょっと試しに行ってみてくれるかの」
と何やら宙に浮かぶ画面をぽちぽちっと押した。
「え、えええ、ちょっとま……」
(説明とか、チートもらえるとか、テンプレはー と声にならない叫びをあげるのであった)
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気がつくと、リオンは見知らぬ広間の中央に立たされていた。
前方には、緊張でこわばった表情の王族や側近たち。
そして背面にはには、不敵な笑みを浮かべる魔王軍の一団。
(やった、召喚魔法成功しました!!)(おぉーこれでわが軍も救われる)
(これが勇者かや、なんとも覇気が感じられぬのう)
まだ耳が慣れていないがそんな会話が何とか聞き取れる。
(なんだ。この緊迫した場面は!定番の出迎えセレモニーとかは!?)
と呆然としていると、周囲が明るくなり真っ白になっていく。
……いや、自分が発光している。袖から見える素肌がひび割れ、そこからとんでもない光と熱があふれ出し、周囲の視界を埋め尽くしていった
「ちょ、なんか、やばい、やばいやばいやばいっ!」
(え、ちょ、勇者様!?!?)
(おおー何か始まるのかえ?楽しみだのう!)
俺自身がこの世界の物質と反応しているようだった。
すさまじいエネルギーの塊となって、自分の体が爆ぜていくのをスローモーションのように感じていた。
例えるなら SF 映画の超新星爆発。人間の力では、どう逆立ちしたって抗えない、神の領域の暴力。
リオンを中心に放射される熱と光は、周囲の空間を津波のように押しのけ、あらゆるものを飲み込んでいく。
誰かの(勇者様の御力だ!ばんざーい)と叫んだ声が光とともにかき消されていく……
勇者、異世界が跡形もなくなるほどの甚大な大爆発を引き起こし、すべての争いを終結し、自身も消滅したのであった。。。
HAPPY END?
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「……な、なんとまぁ。ややややはりテストは大事じゃのぅ」
キクリは人生(神生?)で初めて青ざめるのであった
初めての小説投稿になります。
普段は「小説家になろう」で読むばかりで、書くのはまったくの初心者です。
拙い文章かもしれませんが、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
初回は2話投稿します。筆は早くないので気長に待ってもらえると助かります。




