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俺は異世界で異物です!  作者: masatus
第二章 マナ料理への挑戦
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17、勇者のチート魔法

神が世界を作ったとき、最初はただ静かな世界が広がっていた。


あるとき神は、その世界の理とは全く違う次元を見つけ、虚次元と名付けた。それは、物質も時間も存在しない、無の空間のような場所だった。この次元に神の力を与えると、相反する二つの状態のエーテルが生まれた。二つは互いに引かれるように合体し、消滅した。そして、神の力を一瞬で放出した。合体しないように離してみても、ゆっくりと同時に消滅した。神はこの二つのエーテルを便宜上、陰と陽と呼ぶことにした。


次に神は、陰と陽を大量に生成し、隔離してみる。二つどのような法則があるのか興味があったのだが、蝶の羽ばたくがごとく、フラフラと動き続け、その挙動にはなんの意味も見いだせなかった。


いつもはこの二つを別々の容器に保管していたが、ある時、陽のみ開放し、陰を容器にそのままにしてしまったことがあった。


すると、驚くことに、陽は陰と一定の距離を保ち、まるで見えない糸で繋がれているかのように安定したのだった。


*****


リオンは貴賓室のバルコニーからぼんやり城下町を眺めていた。

先日の危機を救った礼として、王から報奨を用意するとの話だったが、魔族との協定を結ぶのに忙しくなるから、しばらく待つように言われた。特に何もしてないからと遠慮したのだが、


「手柄を上げた者への褒美を怠れば、


臣下たちの士気が下がり、


国政に支障をきたす恐れがある。」


という王の言葉に押し切られた。あれから 1 週間ほど立つが、特に連絡はないため、のんびりとさせてもらっている。

ロウェナの姿もあれっきり見ていない。あんな馬鹿げた決闘なんて忘れてくれてればいいのだが。


そういえば 3 日ほど前から立ちくらみがするようになった。食事はきちんと取れているのだが、栄養になっている気がしない。満腹感は満たされても、飢餓感は日に日に増していく。キクリには一応調べてくれと連絡してある。何か原因がわかるといいのだが……


「リオン様、今大丈夫ですか?お茶でも一緒にいかがですか?」


「ああ、アナスタシアさん。いまそちらに……」


部屋に向かおうとした瞬間、目の前が暗転し、ぐらりとリオンはその場に倒れた。


「リオン様、リオン様!……」


アナスタシアの声が遠くなるのを感じながら、意識は闇に沈んでいった。


*****


気がつくと俺は神界にいた。


「おおリオンよ、気がついたようじゃの」


「ここは?神界ってことは、リセットしたのか?」


話を聞いてみると、今俺の体は意識を失って倒れているらしく、直接会話ができないため夢の中でコンタクト取っているとのこと。ちなみにこの方法は神界のマニュアルにはないらしく、アルゴに調査してもらって見つけた方法じゃ!とキクリが自慢していた。


「お主の体調不良のことだがのう、


理由がわかってな、


アルちゃん、説明してくれぬか」


《キクリちゃん、任せて!


あのねリオン、簡単に言うとね、


あなたの体を構成する反マナがね、


どんどん減ってるの!》


しばらく沈黙ののち、


「省略しすぎだろ、それじゃどうしていいのか全然わかんねーーーよ!」


アルゴによると、まず俺をマナから守っている「保護膜」や「マナ反転機能」は、発動するために俺の反マナを常時使っている。そして食事の際、マナを反マナに反転させ、栄養として吸収しているらしい。現在の体調不良は、補充が全く追いついてないってことだった。


《つまり、


リオンは反マナをエネルギーとした魔法を


常に使っている状態ってこと!》


「そこで妾は、


『保護膜』を『マナ・シェル』


『マナ反転機能』を『マナ・ロンダリング』


と名付けたのじゃ。


どうじゃ?かっこよかろう!」


《キクリちゃんと私で一生懸命考えたの!


良かったね、リオンにもチート魔法があったよ!》


「やかましーい!


そんな地味なバフ魔法、


ちっともチートになっとらーん!!」


そもそも「シェル」はわかるとしても、「ロンダリング」って何なんだよ。資金洗浄みたいで、なんかちょっぴり悪いことしている気分になるぞ?普通に「コンバート」とかで良かろう?と突っ込みたいが、ここで話を広げたら終わりが見えない。俺は深呼吸して、なんとかその衝動を抑え込んだ。


「名前とかどうでもいいから


で、なんで食事からの反マナ補充が間に合わないんだよ


そっちが本題でしょ!」


《それはね、


リオンの元いた世界の反マナ密度はとっても濃くて、


今の世界のマナ密度はとっても薄いの!》


「つまりじゃ、


この世界の食材はほぼマナが薄いと言うこと


リオンは濃いマナ食材を手に入れるか


自分で作るしかないってことになるのう」


《ちなみにアップルパイの反マナはとっても濃かったの


それをマナに変換したから、


あれはとっても濃いマナ料理になっちゃってたってこと!》


リオンは頭を抱えた。アップルパイの話題を聞くだけで、あの時味見すらできなかった悔しさが蘇る。


「アップルパイの話はするなーーー!」


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