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俺は異世界で異物です!  作者: masatus
第一章 なんで召喚にこんな時間かかんだよ!
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9、勇者VS魔王国王女!

玉座の間が騒然としているなか、勇者の『アルゴーーーー、キクリ呼んでーーー』という言葉に、ただ一人聖女だけが反応した。彼女はその瞬間、はっと目を見開いた。


「あれは、失われた古代の言葉、


召喚魔法の研究で読んだ古文書に記載されているものと同じものだわ!


やっぱり彼は勇者よ!ちゃんと成功したのよ!!!」


聖女は勇者の発した聞き慣れない言葉を即座に分析し、折れかかっていたプライドをなんとか持ち直した。ここは聖女らしく、なんとか勇者を丸め込んで、この場を有利にしなければいけない!と即座に意識が切り替わり、勇者に駆け寄ろうとしたそのとき……


「俺にどうしろってんだーーー!!!」


と勇者はその場に膝から崩れ落ちた。

ちょっと、それは私のセリフじゃない!いったい何から手を付けていいんだかさっぱりわからないわよ!!とアナスタシア。

ロウェナは勇者を横目に呆れた様子で口を開いた。


「で、そこの女よ、こんな弱っちい勇者を呼びつけてどうしようというのじゃ」


「そこの女って失礼ね、アナスタシアって名前があるわよ!


ちょっと今考えてるんだから、待ってなさい、脳筋女!」


「ほほぅ、なかなか言うではないか。女、いやアナスタシアよ。


わっちは魔王の娘、ロウェナぞ?


そのような無礼な言いよう


宣戦布告として受け取ってよいのかえ?」


そんな両者の言い合いを皮切りに、周囲も口撃合戦が始まった。

「こんなひ弱な呼びつけてどうするきだ?ユグレナ国さんよー」「こんなのに頼らなくたってお前らなんてどうにかなるわい」「これが勇者って、冗談きついわー」「はなから期待なんかしとらんわ」と、勇者の気持ちなんて放置で言いたい放題である。


それを聞いて、あまりにも身勝手な異世界人に無性に腹を立て、リオンはゆっくり立ち上がった。

俺はな、お前らが自分勝手に実行した魔法でここに無理やり立たされているんだ。しかも爆発体質で、お前らを巻き込みたくないがために色々検証してからやってきてるんだぞ?挙句の果にチート無しと来た。そんな気持ちも知らないで……


怒りに震えていたリオンは気が付かなかったが、彼の反マナを保護する膜は、彼の気持ちと共鳴し不安定になっていた。反マナが気体となって微量に漏れ出していたが、保護膜の働きでマナとの反応は防がれていた。


勇者からまるで瘴気に包まれたかのようなただならぬ雰囲気を察し、騒然としていた周囲は再び沈黙を取り戻し、皆、勇者に注目した。


「お前らなー、好き勝手言いやがって、


こっちの気持ちにもなりやがれーーー」


と怒りのぶつけ先がわからず、思わずポケットのミトンを取り出し、地面に叩きつけた。


そう、叩きつけたつもりだった。


上空に大きく振りかぶったあと、地面に叩きつけられる予定だったミトンは途中でリオンの手をするりと抜けて、エネルギーが与えられた方向にまっすぐ飛んでいく。


やがて何かにぶつかり、運動エネルギーを失ったミトンはしばらくその場に留まり、ぽとりと落ちた。


そこから現れたのは、完全に虚をつかれ、躱すことすらも思いつかず、あっけに取られたロウェナの顔であった。


*****


「このわっちに、手袋を投げつけるとは、人間の分際で……」


ロウェナの表情は一気に怒りに燃え、魔族側は一気に緊張感が走った。王国側は『これはさすがにマズい』と目をそらすしかなかった。


「勇者様……、なんてことをしてくださるのですか!!」


聖女は思わず声を上げた。

その様子に、自分がやってしまったことにようやく気がついたリオン。彼の表情からは血の気がうせ、同時に暴走寸前だった保護膜も、ようやく正常運転に戻った。


「いやっ、その、これは手違いと言うか、なんと言うか」


リオンは必死に弁明を試みる。


「ふ、ふふふ、面白い!貴様、これが魔族で何を意味するか


知っての狼藉であろうな!!」


「ロウェナ様!?冷静になってください!!


こんな挑発に乗ってはいけませぬ。


魔族国でも前代未聞の事態ですぞ!」


と側近らしき人物がロウェナが次に起こすであろう行動を予測し、必死に止めようとしていた。


「爺、黙っておれ!余計な口出しは無用じゃ!


勇者よ、名を名乗るがよい。


わっちはナイトブルーム国第一王女


ロウェナ・シビラ・ナイトブルーム――」


ロウェナの宣言に、玉座の間は一瞬静まり返り、次の瞬間ざわめきが広がった。


「この決闘、受けて立とうぞ!」


リオンは事態の急展開に、呆然と立ちつくす。


どうしてこうも全てがうまく行かないんだ……


*****


《キクリちゃーん、なんか面白そうなことになってるよー!》


「どれどれアルちゃん、おほーこれは愉快じゃのう!


もう一度最初からお願いじゃ!」


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