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俺は異世界で異物です!  作者: masatus
第一章 なんで召喚にこんな時間かかんだよ!
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0、プロローグ

――その少し前、異世界での出来事……


魔王軍一行は、近衛兵の攻撃を軽くいなしながら王都の謁見の間に到達した。

そこには王とその娘の聖女、側近たち、そしてわずかな護衛だけが残っていた。

床には淡く光る魔法陣の光が揺らいでいる。


――砦も騎士団も、すべて一日のうちにあっけなく無力化された。


「くっ……あと少しだったのに!」


聖女は唇を噛みしめ、悔しそうに杖を握りしめる。


「ほう、その魔法陣……勇者でも召喚するつもりだったかや? 面白そうなことをしておるのぅ」


魔王軍のリーダーが興味深そうに問いかける。


聖女は睨み返しながらも、強がった声で答える。


「そうよ。この召喚さえ成功すれば、あなたたちなんて怖くないんだから!」


*****


女神はアラートを受け、慌てて準備を始めていた。

本来このアラートは、神が地上に降り立った際、神界に向けての人材派遣要請の通知である。

何をどこでどう間違ったのが、現地で勇者召喚魔法として伝わり、今まさに人間が利用したのだった。


「……だるいのぅ、アルゴめ、こんなもん無視すればよかろうよ」


ごもっともだ。こんな誤用に対応する必要なんて全くないはずなのだ。

だが、アルゴノスシステム(神界の AI)は無視してくれない。


「まあ下界の生物をあっちからこっちへ移動させるだけのこと、


それもアルゴが勝手に指示してくれるのじゃから、


ま、適当にやっとけばええじゃろ……」


派遣対象が決まったようだ。人間の男性がスクリーン越しに移された。何やら料理をしているようだ。


「相変わらずアルゴが何考えているかわからんが、こんな頼りない人間で大丈夫なのかのう。


まあよいわ。すまんのう、これも仕事ゆえ」


女神はぽちっとスクリーンに映る男性をタッチした……


*****


俺は松平(まつだいら) 理央(りおう)、今年で 33 歳独身の身だ。IT 系のフリーランスとして働いている。都会の生活に疲れを感じ、亡くなった祖母の家に引っ越ししてスローライフを満喫している。


「今日はうまく焼けるかな……朝食抜いて待ってるんだ、


失敗したら悲惨だぞ。でも、今回は絶対うまくいく気がする!


頼むぞガスオーブン!」


今俺はアップルパイを焼いている。それまで料理なんかに興味は全くなかった。だが祖母の家の充実したキッチン周りが俺の好奇心とチャレンジ精神に火をつけた。気づけば趣味はお菓子作りになっていた。


「いやー俺が焼き菓子なんてねー。何がどうなるかわからないもんだ」


しばらくして部屋にはパイの焼けた甘い匂いが漂いだした。俺の鼻腔がそれをとらえるやいなや一瞬で意識が切り替わる。今日の仕上がり具合はどうだろう?待ち遠しくて仕方がない。タイマーを見ながら心の中でカウントダウンするが、なんともこの時間がもどかしい。


(ピーピーピー)


「よっしゃー!」


オーブンの扉を開けると、シナモンとリンゴのなんとも言えない濃厚な香りが爆発的に広がった。焼き色も完璧、形も崩れていない。これは、どうにも今までで一番の出来栄えではなかろうかと、ひとり胸の中で、自分のやったことに満足げに拍手を送った。


ミトンを両手にはめ、天板をゆっくりオーブンから取り出した。目の前のそれから感じられる放射熱を顔面いっぱいで受けながら、顔のにやけは止まらない。


どう切り分けて食べようか、紅茶沸かさなくちゃなぁ。残りは夕飯後、冷めてもおいしいんだよなぁ……

あまりに集中して今日の主役を見続けているうち、周りの視界がぼやけてふわふわと浮いたような錯覚に囚われた。


「これだよこれ、幸せってこういうことだ!俺は寂しくない、寂しくないぞーーー」


<理央の周囲がまばゆい光に包まれていく>


まさに雲の中を漂っている夢のような気分だ!重力から解放されたようだ!

さっきまで聞こえてきた鳥の鳴き声ももう聞こえない、アップルパイのとろけるような匂いも何も感じなーい!!

なんて素晴らしい一日だ……神様ありがとう、そしてありがとう!!


……いやちょっと待て


…………なんか変だ。


…………え、ちょっと待って……俺のご褒美の香りどこに消えた!?


*****


気が付けば、エプロンとミトン、両手には天板にアップルパイという立ち姿で、真っ白い何もない空間にぽつねんと立っていた。


初めての小説投稿になります。

普段は「小説家になろう」で読むばかりで、書くのはまったくの初心者です。

拙い文章かもしれませんが、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

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