宇宙人、特別製?
どうなるかと思ったお昼休みだったけど、思いのほか楽しくてホッとした私。
エトラさんを教授の部屋まで送ってから事務室へ戻れば、目々さんがニコニコしながら私を手招きした。
「どう?すごくいい子でしょ!このまま友達から進展してお付き合いしない?」
「とても優しい方ですけど宇宙人ですから‥」
「宇宙人からしたら私もイトちゃんも宇宙人だから一緒だよ」
「そう言われると‥。でも、私は発光はしませんよ。そもそも目々さんも教授もどうやってエトラさんと知り合ったのか聞きたいんですけど」
「そこは守秘義務があるので!」
「‥守秘義務かぁ‥。それを言われると追求できない」
事務員をしていると守秘義務は絶対だからね。
まぁ、観測していた地球に実際に生活を体験したいという目的は教えて貰っているからいいのかな?
「そうだ!イトちゃん。さっき月教授が書類の不備があったから注意したらプラネタリウムのチケットをお詫びとして貰ったの。でも私もう散々行ったんだ‥。だからあげる!」
「え?いいんですか?」
「‥教授がプラネタリウムの監修をした時、散々付き合わされてね‥。今でも一字一句間違えずに案内できるわ」
教授〜〜〜!何をしているのだ‥。
でも確かに目々さんも事務員なのに星とか星座の事、すごく詳しいもんね。星の学芸員にそれこそなったらいいのに‥なんて思ったくらいだ。
二枚あるチケットを見て、ふとエトラさんを思い浮かべた。
明日もお昼に一緒に食べようって言ったらあの喜びようだもんなぁ。
プラネタリウムに誘ったらどんな反応をするんだろう。絶対金色に光るな‥。というか、宇宙人だから星を見ても意味がない‥‥?
「エトラさん、地球から見える星も見たいと思うよ〜」
「え?!」
目々さんがニコニコ笑って「郵便局行ってきまーす!」と可愛らしく宣言して事務室へ飛び出して行った‥。絶対それ目的で渡したな。‥まぁ、目々さんお子さんもいるからエトラさんを連れて行くのも難しいか?そう思いつつチケットをスケジュール帳に挟んでから鞄にしまった。
うん、プラネタリウムは逃げないし、その前に仕事である。
パソコンと書類とにらめっこをしていると、あっという間に退勤の時間だ。‥お休みもあっという間だけど仕事も忙しいとすぐに時間が過ぎてしまうな。
「お疲れ様でした〜」
退勤時間を打刻して大学の校門を出れば、女の子達が指を指してヒソヒソと話している。何があるんだろう?と、その指の先を見つめればエトラさんがどこかふわふわした足取りで歩いている。
「ね、まじでイケメンじゃない?講義に出てたけど、留学生かな?」
「彼女とかいるかな〜、どうする話しかけよっか!」
「え、エトラさーーーーーん!!!!」
守らねば、あの優しき宇宙人を!!!
思わず声を掛けて駆け寄ると、振り返って私を見つけたエトラさん。
パッと顔を輝かせたが、
「光!光を抑えて!!それで、こっち!こっちから帰りましょうね!」
「え、は、はい」
急いで人通りの少ない道へ腕を掴んで連れて行ってから、周囲を見回せば、おじさんがの〜んびりと自転車に乗っているくらいだ。ホッと息を吐くと、エトラさんが私を不思議そうに見つめ、
「何かあった?イト、大丈夫?」
‥それは主にエトラさんかなぁ。
私はキョロキョロと周囲を見回して、
「今大丈夫になりました。そういえばエトラさんはどこに行こうとしてたんですか?」
「ぼく、家に帰ろうとしてた」
「家‥、どこかに借りたんですか?」
「ううん、借りたかったけど難しかったから、持ってきた」
「持ってきた?」
エトラさんが指を上に向けるので、私も釣られて空を見上げると、一瞬だけ大きな丸い銀色のお盆が現れ、スッと消えた。
「あ、あれって‥」
「ぼくの宇宙船。ちょっと小さいけど住むの十分」
宇宙船!!!
まじまじとエトラさんを見つめ、本当に宇宙人なんだな‥と、実感した。
「え、ええと、素敵な船、ですね?」
「ありがとうございます。自分で作ったので嬉しい」
「自分で、作った‥?!」
地球の言葉は喋れるし、宇宙船を作っちゃうし、エトラさんってすごい人‥いや、宇宙人なのでは?それともそれが標準なの?目々さんは同じ宇宙人って言ったけど、私はやっぱり全くの別次元の世界の人だと思うなぁ‥。
エトラさんは宇宙人の中でも器用な人って設定です!
宇宙船乗ってみたい‥。