宇宙人、発光する。
エトラさんがくれたフルーツサンドイッチは美味しかった。
いつもコンビニで見かけては、美味しそうだな〜と思いつつ買わずにいる身としてはプレゼントされてかなり嬉しい。
エトラさんも嬉しかったのか、ウサギのように垂れた耳を小さく動かしていた。
私からするとそういう感情が見えるのは助かるけど、感情が全部見えちゃうのは気にしないのかな?宇宙人のその辺の感覚は、あとで教授にでも聞いてみよう。
「ご馳走さまでした」
「ご、ちそうさまでした?」
私の挨拶を不思議そうに見つめつつ、手を合わせて真似をするエトラさん。
なんて行儀の良い宇宙人だろう‥。感心しつつ周囲を見れば、大学生達も天気が良いので中庭であちこちでお喋りしながらお弁当を食べたり、カップルだろうか手を繋いで歩いている。うーん、今日も平和だな。
エトラさんはカップルをジーーーーっと見て、
「手を繋ぐ、仲良しですか?」
「え?あ、そうですね。とっても仲良しなんでしょうね」
「仲良し、手を繋ぐ‥」
そう言うと、またじっとカップルの後ろ姿を見つめるエトラさん。
宇宙人にカップルってどう見えているんだろう‥。というかお付き合いという概念があるのだろうか‥、謎だ。しかし、人間同士でも分かり合えなくて大変なのに宇宙人なんてどう分かり合えばいいのだ。
と、エトラさんが今度は私をじっと見つめ、
「イト、仲良し、他にいる?」
「え?あ、ああ、お友達ならいますよ。それこそ目々さんとか。エトラさんはこっちでは他に仲良しの方はいるんですか?」
「目々さんと教授!でも、他の人と仲良しになるの気をつけろ言われてる」
「あ、そうでしたね‥」
確かにまだ少ししかエトラさんを知らないけれど、とても優しい印象だ。
そんな人を故意に意地悪したり、からかったりする事も悲しいけれどあるだろう。せっかく地球へ来てくれたのに嫌な思いをして欲しくないのには私も同じだ。
「少しずつ、仲良くなっていけばいいと思います」
私の言葉にエトラさんの耳がピクッと持ち上がると、嬉しそうにふにゃりと微笑む。
「嬉しい‥、シュル‥」
「え?なんて?」
「あ、ええと、間違えて、言いました」
「そうなんですね。それにしても日本語をよく覚えましたね」
「ひいお婆ちゃんの言葉、とても好きだったので、一生懸命勉強しました。でも、他の国の言葉も好き」
「他の国の言葉も話せるんですか?!」
「はい、50ヶ国語?」
「す、すごい!!!」
そんなに話せるってものすごい努力じゃない?
そこにきて宇宙語も話せるんでしょ?口をあんぐり開けて、エトラさんをまじまじと見つめた。
「エトラさん、宇宙語ってあるんですか?」
「宇宙語、一応ある」
「一応?」
「いつも念話で話す。ええと、伝わる?」
「‥念話というと、頭の中で思い浮かべた言葉を相手に伝える感じですか?」
「そう!すごい、イトすぐわかる」
「ふふっ、うちの親が宇宙人について‥っていう本を残しておいてくれたから、ですかね」
「そんな本がある?!」
エトラさんがびっくりした顔をするけれど、子供向けの‥しかもタコ型の宇宙人との話し方‥みたいな絵本だよ?でも、子供の時は「言葉を知らなくてもお互いわかるんだ〜」なんて信じてたけど、どうやら本当の事だったようだ。
そんな話をしていたら、あっという間にお昼休みが終わりだ。
「そろそろ戻りましょうか。エトラさんは教授の講義に出るんですよね?」
「‥‥出る。でも、もう終わっちゃった」
「そうですね。お昼休みってすぐ終わっちゃいますね」
「もう、会えない?」
「へ?」
あからさまにシュンとした顔をしているエトラさん‥。
もしかして会うのは一回きりだと勘違いしているのかな?私としてはフルーツサンドイッチを貰ったし、おにぎりをもう少し色々味わって欲しい。
「明日は私大きなおにぎりを握ってくるので、それをご馳走したいのですが‥」
「え、」
「明日も会ってくれますか?」
私の言葉にエトラさんの体がものすごく金色に光った!
ちょ、ちょっと!流石にバレる!!そんなに発光したらバレちゃう!慌てて「光を抑えて下さい!」と言うと、エトラさんも慌てて光を消したけれど、顔は変わらず輝いている。
「明日も、会う!!!」
「はい。じゃあ、また明日会いましょう」
「うん!!うん!!!」
嬉しそうな笑顔を見ると、確かにこれは守らねばならない存在だと強く思った。‥なんだか教授と目々さんにいいように誘導されている気もするけれど、せっかく地球に来てくれたし、いつか帰るまで楽しく過ごしてもらわないとね。
小さい頃はタコ型宇宙人かと思ってたのに、銀色のでっかい目玉のが
いるって言われた時の悲しさ‥。タコのが可愛いですよねぇ???