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宇宙人、星とキス。


エトラさんと私は、お互い誤解をしていた。

エトラさんは私に好きな人がいると思っていて、私は私で何かしてしまったのか思っていて‥。うん、地球人と宇宙人だしね。話し合いってやっぱり大事だね。


嬉しそうに金色のシャボン玉を浮かべるエトラさんにほんわかと和んでいたけれど、宇宙船から日本が見えてハッとした。


「そうだ!し、仕事‥!」


無断欠勤してしまった!

と、慌てるとレイハナさんがしれっとした顔で、


「大丈夫だ。目々さんにアクシデントがあったので遅れると話しておいた」

「え?いつの間に‥」

「優秀なので、これくらいなんでもない」

「レイハナさん、すごい‥」


感動していると、エトラさんが慌てて私の手を握って、



「イト!ぼくもなんでも出来るからね?」

「何を言う。お前は黙ってタバスコだけ飲んでいろ」

「ま、まぁまぁ‥」

「イトさん、うちの甥っ子は甘ったれだからビシビシ言って構わない。むしろもっと言っていい」

「え、甥っ子!??」

「あれ?言ってなかったけ?」



エトラさんとレイハナさんを交互に見るけど、だ、だって全然似てないから‥。驚いていると、エトラさんがレイハナさんを見て、


「僕ら、好きな姿になれるからね」

「へ?」


目を丸くする私にレイハナさんが自分とエトラさんを交互に指差した。


「生まれてからそれぞれ自分の好きな姿に変わっていくんだ。だから地球好きなエトラは人間寄りになった。私は違う星の記憶があるのでそっちに寄っている」

「違う星の記憶‥‥???」

「イト、少しずつ宇宙のことを知ればいいから。ともかくぼくとレイハナは家族なんだ」

「家族‥、あ、そういえばエトラさんのお父さんは?」


私の言葉にエトラさんとレイハナさんの空気が静かに凍った。

あ、あれ‥?



「エトラの父親は私の手でしっかりこってり絞った上にタバスコと唐辛子を盛り合わせたものを飲ませておいたから心配するな」

「いや、どう考えても心配ですよ?!」

「ううん、ぼくの話を聞かず宇宙船で駆けつけて、家に連れ戻そうとしたからそれくらいでいいんだ」

「え、エトラさんまで?!」



でもタバスコに唐辛子なんて、体を壊さない?

心配しかないんだけど‥。胃薬とか渡しておいた方がいいかな?と、思っていると、エトラさんとレイハナさんが交互に私の頭を撫でた。な、なんで?と思ってからハッとした。


「考えを読みましたね?」

「イトが可愛くて‥」

「そうだな。イトさんは可愛い」

「そ、そこ!二人で結託しないで下さい!地球では空気を読みますけど、人の考えは読んじゃダメです!‥きっと?」


そう言うと、二人は小さな生き物が動いているのを見つめるような慈愛に満ちた瞳で私を見て、



「「可愛い‥」」



同時に呟いたけど、だからダメだってば〜〜〜!

鞄で顔を隠してみたけれど、きっと無駄だろう。でも今の私の武器は鞄のみ。と、エトラさんが私の手を握って、宇宙の方を指差した。


「イト、あっちの方に金色に光っている星が見える?」

「え?」

「ぼくの星なんだ。いつか一緒に行こうね」

「一緒に‥」


そう言われて、エトラさんのように光る金色の星をじっと見つめた。



「綺麗ですね‥」

「そうでしょ?すごく綺麗なところだよ!」



嬉しそうに笑うエトラさんに微笑むと、エトラさんの耳がピャッと飛び上がり、


「‥イト、シュルツシュエ」

「え?」


今、なんて言ったの?

エトラさんを見上げると、慌てて「なんでもない!」って言ったけれど、時々そういえばそんな単語よく言ってたなぁと、思っていると、レイハナさんがしれっとした顔で、



「大好き、結婚したいという意味だ」

「え」

「レイハナーーーーー!!!!」



ものすごい発言をぶちかまし、私は驚きで目を丸くした。

‥それ、結構出会ってすぐに言ってなかったっけ?私はまじまじとエトラさんを見上げると、顔を手で覆っているけれど、その隙間から赤くなっているのがはっきりわかる。



「‥‥もっと格好良く言いたかったのに、」

「そ、そうですか‥」



結構前から私を好きだったのを知って、かなり驚きである。

そして結婚してって言ってたんなんて‥。同じくらい赤くなる私にレイハナさんが可笑しそうに笑って、


「じゃあ私は先に帰る」


そう言うとパッと消えてしまって‥。

ちょ、ちょっと、このタイミングで消えちゃうの?と、慌てると、エトラさんが私の手をギュッと握るので、心臓が恥ずかしさで暴れそうになる。わぁああ、どうしよう!なんて言えばいい?どうすればいい?



と、固まる私の目の前で星が流れていくのが見えた。

エトラさんの手を握り返し、星を指差した。



「エトラさん!星が‥」

「うん、綺麗だね」



そう言いつつ、エトラさんの視線は星でなく私で‥。

いつもと違う優しいのに、どこか甘さを含んだ視線にドッと心臓が大きく鳴った。そんな赤い顔の私の唇に、エトラさんは静かにキスを落とすと、



「でもイトの方がずっと綺麗だよ」



ふわりとエトラさんが笑いかけられて驚く私に、流れ星が落ちる瞬間に願いを込めるように私にもう一度キスをしたのだった。





次で最終話です〜。

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