宇宙人、再会まであと少し。
あっという間に説明会当日。
朝から目が回るような忙しさに、私も目々さんも足が車輪のようになっていた‥。
「イトちゃん、玄関にボランティアの子達がもう待機してるから、名簿を渡しておいてくれる?」
「はい!」
「あとうちのダーリンが来ると思うけど、水色のシャツに眼鏡をかけて熊さんみたいに可愛い人が来たら教室に案内しておいて〜〜!」
「はい!!」
今回責任者になった目々さんの忙しさ半端ない。
しかも周年行事も重なってしまって、どれだけ会議して資料を揃えてもどこかでボロが出る。‥すごく、すごく大変なんだけど、これが終われば花火!エトラさんと花火大会だ!
メールをしようかと思ったけど、接触禁止だし説明会が終わってからがいいかな?と、思い直して何も送っていない。うん、ひとまず頑張って仕事しよう。
私も早速玄関の方へ向かえば、女の子達がきゃあ〜っと叫んでいて‥、彼女達の視線の先を見ればエトラさんが歩いているのが見えて、慌てて壁に隠れた。だ、だって接触禁止だし。
とはいえ、会わなければ平気‥だよね?
壁からちょっとだけ顔を出せば、瞳の色に合わせた深い紺色のチュニックに銀色の星の模様が刺繍されていて、紺色のパンツもゆるっとした感じなんだけど、ともかくものすごく似合っている!外国人かな?って思う顔立ちだから余計に!‥まぁ、宇宙人なんだけど。
「‥写真に撮りたい」
ボソッと呟いてしまうくらいには格好良くて、胸がぎゅうっと痛い。
早く仕事、終わらないかな‥。
好きだなんて言うつもりはないけれど、帰るまでくらい想っていたっていいよね。
と、向こうの扉から目々さんがさっき言っていた水色のシャツに眼鏡をかけた熊さんのような人がやって来た。
「あの、折田と申しますが‥」
「目々さんの‥!あ、失礼しました。目々さんにいつもお世話になっている星野イトと申します」
「ああ、イトさんでしたか!うちの家内によくお話を聞いてます。とてもいい子だと話していました」
「そ、そうなんですか?」
うわ、目々さん、普段何を言ってるの〜?!
照れ臭くて、ちょっと俯いてしまいそうになる。
って、今は仕事、仕事!顔を上げて、
「ええと、早速ですが教室にご案内しても?」
「はい!よろしくお願いします」
一緒に教室まで案内しがてら雑談をしたけれど、月教授とも懇意にしているようでそれもあって今回の説明会に突然手伝えと呼ばれたそうだ。月教授の人脈って広いなぁ。宇宙人さんまで知り合いでしょ?ちょっと謎だ‥。
「あ、こちらが教室で‥」
「ダーリン!間に合って良かった!」
教室のドアの前で目々さんが慌ててこちらへ駆け寄って来たかと思うと、
「‥法学部のジジイが余計な事をしくさって、展示の一部が壊れたの」
ものすごいドスの効いた声で旦那さんの肩に手を置いて静かに呟いた。
「「‥‥え?」」
「最近静かなのをいいことに放置してたら、さっきいきなりやって来て「なんだこの展示は俺だったらこうする!」と言って、ダーリンが作った展示物を一部損壊させた上に、やばいと思ったらしくてさっさと逃亡を決め込んだの」
「「ええええ!!??」」
「幸い、レイハナさんがなんとか一部だけ直してくれたけど‥、どうしよう」
言葉は困り切った感じなのに「あいつまじで許さんぞ」と、大変どす黒いものが目々さんの背景から流れていて‥、どうしようかとオロオロしていると、旦那さんは目々さんの肩にそっと手を置いて、
「なんだ〜。それなら大丈夫だよ。展示も大事だけどさ、星を好きになってね〜って伝えるのが今回の主旨なんだから問題ないよ」
や、優しい!
感動している横で、目々さんも感激したように目を潤ませていると、
「それに法学部の教授ならちゃんとわかってると思うけど、器物破損に逃亡罪もあるから、ちゃんと後できっちり仕留められるし、今後はそれをチラつかせて仕事すれば楽になるよ!」
「そ、そっちーーー!??」
「ダーリンのそういう冷静なところ、大好きだわ」
熊さんのようにほんわかした感じなのに、一切許してないね?!
目々さんがにっこり笑って私を見上げ、
「いい男でしょ?」
と、言うので素直に頷いておいた。
確かに目々さんにはぴったりな旦那様かもしれない。
「さて、説明会が終わったら花火大会もあるし、チャチャッとやっちゃいましょ!ね、イトちゃん!」
「‥‥そ、そうですね」
何故花火大会のことを突然私に振るのかな?
ドキッとしつつ目を横に逸らすと、旦那さんが「こりゃ頑張ってまきで行かないとダメな感じかな?」なんて言い出したので、
「あのっ、いつも通りでいいので!」
と、赤い顔で教室のドアを開いた。
‥これ、絶対エトラさんと一緒に行くってわかってるな。
花火大会は冷房の効いた部屋で見る派です。
(来年こそは見にいこっかな〜と思ってます)




