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宇宙人、反省タイム。


お昼のチャイムが鳴って事務室へ戻れば、目々さんが書類とにらめっこしていて、私を見るなりホッとした顔をした。


「ごめーーん!イトちゃん、ちょっと2階の準備室の備品を持ってきて欲しいんだけど、いいかな?」

「もちろんです。右奥の部屋ですよね?」

「ありがとう!これ、備品のチェックリストです」

「じゃあ、すぐ持ってきますね」

「助かる〜!」


どうやらいよいよ忙しくなってきたようだ。

私だけがのんびりしてたなぁ。急いで準備室へノックして入れば、そこにはレイハナさんが腕を組んで立っていて‥、



「レイハナさん?どうかしました?」

「教授に言われて、ファイルを探しに来たんだけどどこにあるかわからなくて‥」

「ああ、なるほど。リストって持ってますか?」

「これなんだが‥」

「これは、こっちの棚の上ですね」



小さな脚立を運んで、レイハナさんの肩の上くらいにあるファイルに手を伸ばす。と、レイハナさんが心配そうに私を見上げ、


「大丈夫か?私が‥」

「大丈夫ですよ。いつもこれくらいやっていて、」


指を伸ばしたその時、ドアが開いて、


「レイハナ!資料は見つかりましたか?」

「エトラさん?」


横を向いたその瞬間、ファイルと一緒に脚立から落ちそうになった。


「わ!!」


バサバサとファイルと一緒に落ちる!と、思ったら咄嗟にレイハナさんが抱きとめてくれた。けど、その際に棚に足をしたたかに打ち付けてしまった。


「い、いた〜〜〜!!」

「イト!大丈夫?!」

「だ、大丈夫、ですっ」

「でも足が痛そう‥」


エトラさんが心配そうに私を見つめると、レイハナさんは私をヒョイッと横抱きした。


「え!??」


お、お姫様抱っこされてる?!

でも私結構重いですけど?目をまん丸にする私を見て、「安心しろ軽いぞ」と言ってくれたけど、まだ何も言ってない‥。レイハナさんはエトラさんに視線を移し、



「医務室へ行ってくる。エトラはそこのファイルを月教授に届けてくれ」

「それならぼくがイトを‥」

「適切な距離は大事だと言ったろ」

「‥‥でも、」

「エトラさん、すみません。ついでに目々さんにも少し遅れる旨を伝えて頂けると‥」

「それなら‥、うん、わかった」



不満そうな顔だったけど、渋々頷いてくれたエトラさんにホッとして、私はそのままレイハナさんと医務室へ向かった。‥しかし、宇宙人さんって力持ちなんだな。


医務室には人はいなかったけれど、何度か備品を届けた事があるので湿布の場所は知っていた。棚から出して足に貼ると、少し痛みも楽になる。湿布を使ったと書き置きだけしておこうとペンを取ると、ガラッと先日私を怒鳴りつけたあの教授のおじさんが勢いよく入って来た。



「なんだ‥、保健医はどこだ?」

「あの、今留守をしているようで‥」

「なんだと?!肝心な時にいないな!お前、薬の場所はわかるのか?」

「ええと、何の薬でしょう‥」

「痛み止めだ!そんなのわからないのか!!」



そ、そんなぁ〜〜〜!!

聞いただけで何でそんなに怒鳴られないといけないんだ!

泣いてしまいたくなるけれど、レイハナさんにまで飛び火しないようにしないと‥と、思ってチラッとそちらを見ると、


「人が話をしているのに何で聞いてない!!」


ビクッと肩が跳ねたその瞬間、



バン!!!



と、窓が一斉に大きく鳴った。



「え‥‥、」



ガタガタとしなる窓の方を教授と私が見て、それから教授の後ろをもう一度見れば、エトラさんが目を釣り上げて教授を睨んでいて‥、驚きのあまり目を見開いた。エトラさんが、怒ってる?



「エトラ、抑えろ」



私の隣に立っていたレイハナさんに言われ、エトラさんはハッとすると同時に窓がピタリと静かになった。レイハナさんは私の肩に手を置いて「安心してくれ」と、言うと教授の方に視線を向けた。


「申し訳ないが、彼女も怪我をしてたまたまこちらに来ただけだ。薬なら保健医とやらが戻って来てから改めて取りに来て欲しい。イトさんすまないが、もう一度体を持ち上げるぞ」

「は、はい‥」


ヒョイッとまた軽く私を横抱きしたレイハナさんは、驚いたままの顔の教授の横をすり抜けて医務室を出ると、エトラさんもふらふらとした足取りで後ろを付いてくるのが見えた。



そうして、誰もいない廊下まで来るとレイハナさんは足を止めてゆっくり後ろを向いた。後ろを見ればエトラさんが俯いていて、顔がよく見えない‥。



「エトラ、お前はイトさんとしばらく接触禁止だ」

「え?」



私はレイハナさんとエトラさんを交互に見ると、エトラさんは泣きそうな顔で私を見つめた。



「お前の力で、イトさんや人を傷つけたらどうするつもりだ。少しは反省しろ」

「‥それ、は」



エトラさんが言葉に詰まると、レイハナさんはまたクルッと向きを変えてカツカツと廊下を歩いて行ったけれど、私はどうすることもできなくて‥、ただ廊下の向こうで佇むエトラさんを見つめるしかできなかった。




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