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宇宙人、大丈夫だよ?


真っ白い長い髪にピタッとした黒い服を着たスレンダー美女のレイハナさんは、地球の観測をしている同僚だそうだ。無表情のレイハナさんはエトラさんをジッと見つめ、


「私も昼を取るから一旦離れるが、月教授の元で世話になる予定だ。あとでしっかりと報告書を読ませて貰うからな」

「‥わかりました」

「なんだその顔は。お前は本当に昔から感情が顔に出過ぎだ」

「ちょ、い、今そういう話はいいですから‥」


照れ臭そうに耳をパタパタさせるエトラさん‥。

しかし、私は昔からエトラさんを知っているという言葉に胸がチクチクと痛くなる。そ、そっかぁ、昔からの知り合いなのか。それに軽口を叩き合う仲でもあると‥。


あ〜〜!ダメだ!

落ち着こうと思うのに、全然落ち着けない!なるべく気付かれないようにそろりとエトラさんから離れておこう。まさか心の中で心頭滅却火もまた涼し!なんて唱えるなんて思いもしなかった‥。


そんな私を知る由もないレイハナさんは慌てるエトラさんに小さく笑って、「またな」と言うとカツカツとヒールを鳴らして大学の構内の方へ颯爽と向かっていった。ううむ、まさか宇宙人に二人も会うなんて思わなかったな。



と、エトラさんが恥ずかしそうに私を見て、


「‥あの、突然ごめんね」

「いえ、あの、びっくりしましたけど、優しそうな方ですね」

「うん。レイハナ優しい‥です。時々厳しいですけど、頼りになります」


ふわっと微笑むエトラさんに胸がまた痛くなる。

だ、だめだぁ!すぐ心がぐるぐる動いちゃうよ〜!なんとか心をグッと抑えて、「良い同僚さんがいて心強いですね」と、話したけれど、私ちゃんと笑えてたかな‥。


と、ナイスタイミングでお昼の終了のチャイムが鳴った。


良かった!

天の助け!ホッとして、エトラさんを見上げた。


「チャイムも鳴ったし、そろそろ戻りましょうか!」

「‥うん」

「エトラさん、どうかしましたか?」

「お昼の時間、短い‥」


ちょっと唇を尖らせたエトラさんに、今度は違う意味で胸が痛くなった。

だ、だから〜〜〜!!私の心をかき乱さないで欲しい!

でも、これはあくまでも素直で感情表現なストレートなだけだから‥!好意とかじゃなくて、ただ残念がっているだけだ。そうわかっているのに、つい可愛い!と、心の中で叫んでしまう。



「‥明日、また一緒に食べましょう」

「仕事、大丈夫なの?忙しいの終わったの?」



パアッと光り輝くエトラさん。

眩しい上に、好きだと自覚したらますます眩しく感じる‥。

あと良心の呵責もすごい。


「は、はい。ひと段落ついたので‥」

「そうなんだ!嬉しい!!」


ううっ、眩しい。ともかく眩しくて顔がまともに見られない。

私は頑張ってもエトラさんの首辺りしか見られない。

中学生だった時、友達が「好きな人の顔が見られない」なんて言ってて、なんでだろうって思ったけど、本当だった。気恥ずかしくて全然見られない。


咄嗟に俯いたその時、お弁当箱が入ったバッグから貰った飴がぽろっと落ちてしまった。



「あ、飴が‥」

「あ、ぼくが‥」



二人同時に屈んで飴を取ろうとして、指が触れそうになって‥、

慌てて手をパッと上にあげた。


驚いた顔のエトラさんに、


「あのっ、すみません!!さ、触ったらいけないってレイハナさんが言ってたから‥」

「それは、ぼくがイトに対してだから大丈夫だよ」

「い、いえ!男性相手でも同じですよ!」


慌ててそう言うと、エトラさんはなんとも言えない顔をして、飴をそっと渡してくれた。



「‥‥イトなら、ぼくは大丈夫だよ」

「そ、それは、そのっ、ど、どうでしょう‥」



誤解!誤解しちゃうからその言い方はだめだってば!

顔が赤くなりそうで、拾ってもらった飴をギュッと握る。こ、心を落ち着けるんだ私!目をウロウロさせている私の頭上でエトラさんが寂しそうに私を見つめていたなんて、当然気が付くはずもなく。


「明日も、一緒に食べるの楽しみにしてます」

「は、はい」


顔を上げた時には、いつもの優しい笑顔にホッとして思わず小さく息を吐いた。



「あ、そうだ。明日は何か食べたい物はありますか?」

「え?」

「せっかくだから、興味がある物を作ってこようかなって‥」

「いいの!?」

「む、難しいのはちょっと検討させて頂きますが、」

「嬉しい!イト、シュ‥あ、えっと、ありがとう!」

「いえ、せめてもの気持ちというか‥」



主に償い?

なんて思いつつ、エトラさんと一緒に歩いていくけれど、三日ぶりに横を歩くエトラさんの嬉しそうな金色の光に安心してしまう私であった。




今日も読んで頂きありがとうございます〜!

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