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宇宙人、一緒に星になる。


仕事だというのに、涙が溢れてしまった私‥。

当然だけどそんな私を心配したエトラさんはオロオロしながら、私の手を握った。


「イト!な、中庭に行こう!!」

「え?」

「アイスは後ね」

「ええ?」


耳をそれはもうバタバタと上下させたエトラさんは、私の手を引っ張っていつもお昼を食べている中庭に連れてくると、そっとベンチに座らせてくれた。


「すぐ戻るから!ここで待っててね!!絶対です!」

「は、はい」


エトラさんはパッと消えて、目を丸くした。

ちょ、ちょっと?!瞬間移動しちゃって大丈夫なの?

辺りを慌てて見回したけど、夕方だから人がいなくてホッとした。それからふと肩の力を抜いた。


嗚呼、やっちゃったなぁ〜〜。


我が家はお婆ちゃんと叔母のしいちゃんだけだから男性に大きな声を出されるのが本当に弱いんだよね‥。だからお見合いなんて!なんて思ったけれど、エトラさんはとても優しい人だからすっかり安心してた。そこへきていきなり怒鳴られてしまったから、ショックが大きかった‥。


「ううっ、月教授にも迷惑を掛けちゃった‥」


大人なのに。


大人になったら誰にも迷惑を掛けずに生きていけるとどこかで思ってたけれど、全然だ‥。しょんぼりとしていると、パッと目の前にエトラさんが現れて思わず「うぎゃ!??」と叫んでしまった。



「ごめんね。驚かしちゃった?」

「い、いえ、びっくりしちゃって、その、すみません」

「ううん、地球は人間は空間を移動しないからびっくりするよね」



そう言いながら私にフルーツの入ったアイスの袋を差し出してくれて、アイスとエトラさんを交互に見つめてしまった‥。



「あの、これ、」

「うん!アイス。イト、元気出してね」

「‥すみません。大人なのに、泣いてしまって‥」

「なんで?泣くのは悪い事じゃないよ」

「でも、仕事なのに‥」

「我慢しなくて良いと思うけど、イトは嫌だったんだね」



ふわりと笑って私の横に座ったエトラさんは、袋からアイスを取り出すと、


「地球って、いっぱい感情あるね」

「え?」

「宇宙にもあるんだよ?でもね、地球よりずっと穏やかなの」

「そう、なんですか‥。そっちの方がいいなぁ」

「そう思うでしょ?でも、時々もっと感情を味わいたいって思って宇宙人がやって来るんだよ」

「ええ?!そうなんですか?」

「ぼくも最初はそう思ってたけど、イトが嬉しいとぼくすっごく嬉しくなるし、イトが悲しそうだとすっごく悲しくなるの」


目を丸くしてエトラさんを見ると、エトラさんはアイスを咥えて、私のアイスの袋を開けて手渡してくれた。



「誰かが嬉しいと、こんなに嬉しくなるって知らなかった。すごく大発見!」

「‥それは、エトラさんがすごく、優しいからだと思います」

「イトもとても優しい!あととても素敵です!」

「そ、そうですか‥?」



惜しみない大賛辞に顔が赤くなってしまう。

でも、男性に怒鳴られただけで泣いちゃうんだよ?ひんやりとしたアイスの端っこを齧って自分の不甲斐なさに落ち込みそうになると、エトラさんはニコッと笑って、


「イトはとっても頑張りたいんだね」

「そう、かもです‥」

「でも無理すると疲れちゃう、です」

「それは、そう、ですね‥。気をつけます」


小さく頷くと、エトラさんは柔らかく笑ってまた空を見ながらアイスを齧った。

‥宇宙人って心が広いんだなぁ。そんなことを思いつつアイスを食べ終える頃には気持ちが少しずつ落ち着いてきて、夜空に上がる一番星が目に入った。



「‥一番星、見えましたね」

「本当だ。綺麗だねぇ、イトみたいです!」

「え、私?!」

「とてもキラキラしてます!」



キラキラした笑顔でものすごい事を言ってるけど、絶賛光ってるのはエトラさんだなぁ。金色の光が体から出てます。


「‥むしろ今エトラさんがキラキラしてますよ?」

「わ、いけない!」


エトラさんがちょっと眉を寄せるとパッと金色の光が収まって、ほーっと息を吐いて「地球、大変ね」としみじみ言うからぷっと小さく吹き出してしまった。


「ふふっ、エトラさんが宇宙にいる時はずっと光っている感じですか?」

「そう。でも皆も光ってるから全然大丈夫」

「そっか‥。綺麗なんだろうなぁ」


なにせ夜空を飛んで流れ星に間違われちゃうくらいだ。

きっと綺麗な光景なのかもしれない。‥サングラスは必須だろうけど。と、エトラさんは私を見て、



「そうだ!イト、星になってみましょう」

「へ?」

「一度手を握ってもらって良いですか?」

「え、え?」



エトラさんはアイスの棒をテキパキと片付けると、私の手をぎゅっと握って、


「行くよ!」


と、言った瞬間、私は街のかなり上空にエトラさんと浮かんでいて、



「わぁあああああ!!!」



目を見開いて、エトラさんの体に思わずぎゅっと抱きついてしまった。

だ、だって!!足元に街ってなに〜〜!??ドキドキしながら眼下に広がる街と、それからエトラさんを見上げると、カチッと固まったエトラさんから金色のシャボン玉がものすごく出ていた。‥ええと、それはどんな感情なんだろう。





星アプリ、面白いので夜空を見てますが、

星かと思ったら金星だった‥。

金星だったん!??て、驚きでした。

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