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宇宙人と髪の毛座。


どうなるかと思ったお出掛けも結構楽しかったのに、駅まで戻るとエトラさんはそれはしょんぼりした顔をした。どうしたんだろうと聞いてみると、


「もう終わっちゃった‥。とても楽しかったから寂しいです」


などと可愛いことを供述しており‥、私はちょっと悶えてしまった。

宇宙人てみんなこんな風に可愛い存在なのだろうか。絶対守る、この可愛らしさ。


「そういえばエトラさんはどれくらい地球にいる予定なんですか?」

「‥一応、半年です」

「そうなんですね。じゃあ、冬までかな?」

「うん、地球に行くの両親はあまりよく思ってないから」

「そうなんですか?」


地球の観測を代々しているのにあんまりよく思ってないのがちょっと意外で目を丸くすると、エトラさんは少し言いにくそうに目をウロウロさせて、



「地球、怖い人もいるから‥。心配って言われて」

「それは、そう、ですね‥」

「でもイトはすごく優しい!全然怖くない!」

「それは良かったです。私も宇宙人ってどんな方かわからなくてちょっと心配でしたけど、エトラさんはすごく優しくて、素敵だなぁって思います」

「そ、そう?」



目を輝かせ、ついでに体も輝かせたエトラさん。

‥こうなることを予測して、少し見えにくい駅前の端っこの方へ移動しておいて正解だった。自分の先読みの行動に満足していると、エトラさんは私をじっと見つめ、


「‥あの、月曜になったらまた会える?」

「え?」

「‥お昼に話すの、すごく楽しいから」

「私はいいですけど、エトラさんは他の方や教授とは話したりは‥」

「教授は講義の後でいっぱい話すから大丈夫!」

「そ、そうですか。じゃあ、お昼にまたお弁当食べつつお話しましょうか。花火大会の話もしたいし、あ、あと他に美味しそうな物があったら持っていきますね」


私の言葉にエトラさんはそれはもう目をキラキラと輝かせ、


「うん!イトありがとう!とっても嬉しいです!あ、そうだ、あの‥手を」

「手?」


嬉しそうに手を差し出すエトラさんに首を傾げる。

宇宙式の何か挨拶だろうか?手を私も差し出すと、エトラさんは大きな手で私の手をぎゅっと握ると、ふにゃりと嬉しそうに目尻を下げ、



「‥仲良くしてくれて、ありがとう」

「あ、ええと、こちらこそ?」

「また学校で。気を付けて帰ってね」

「は、はい」



エトラさんの体から金色のシャボン玉がふわふわと飛んで、パチンと弾けると、そっと大きな手が名残惜しそうに離れて、もう一度私に笑いかけてくれた。握手する文化って、宇宙にもあるんだな‥とか、意外にもあったかい手だったなとか思いつつ、私もエトラさんに微笑んだ。


「‥‥約束ね」


ちょっと寂しそうにエトラさんは微笑むと、パッとさっきのシャボン玉のように消えてしまって目を丸くした。宇宙人、すごいな?!


なにはともあれ今日は一日楽しんで貰えたようで良かった。

地球人代表としては一安心である。夕方の帰り道をなんだかふわふわした気持ちで歩いて帰り、空を見上げれば一番星が目に入った。



ピカピカと光るその星がなんとなくエトラさんに似ているなぁ〜と思った。

嬉しくて光って、楽しくて光って、どこにいてもわかってしまう。‥宇宙人とお見合いなんて驚いたけれど、こんな風に楽しく過ごせるなんて思わなかった。



と、ポコッとスマホにメールがやってきた。

エトラさんからだ。スマホをスワイプすると、



『今日は、本当に楽しかったデス。沢山ありがとうございました。髪の毛座、とても好きになりました。空を見てイトを思い出します』


「う、うわぁああああ‥‥!」



なんだかすごくロマンチックなことを言われているぞ?!

じわじわと顔が赤くなって、思わず頬を抑える。‥いや、これはエトラさんの感謝の気持ちであって、好意の気持ちではない。そこを勘違いするなよ私!とはいえ、そんな風に言ってもらえて嬉しい。


地球での思い出が良いものであって欲しい。


『私も楽しかったです。今度はエトラさんの星についてもっと教えて下さいね』


そう返信すれば、『いっぱいお話する!!』と返信が来て、小さく笑ってしまう。こんな心がくすぐったくなるようなやり取り、いいな。



足取り軽く家に帰って、部屋の窓を開ければさっきより一層明るく光る一番星が目に入った。花火大会が終わったら、夏の星座を見に山に行ってみるのもいいかもしれないなぁ‥なんて、呑気に思っていた私。



その晩、髪の毛座付近で謎の飛行物体がピカピカと光って飛んでいたと、いうニュースを翌朝知って、「絶対エトラさんだ‥」と、思わず呟いた。本当に気に入ったんだなぁ。





ピカピカ光る新星!?と、星マニアが驚いていたとかそうでないとか‥。

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