時城ライ
時城ライ。 旧姓、神地ライ。
メイの双子の弟で、七歳の頃に時城家の養子に迎えられ現在は別々に暮らしている。
双子でも日本人的な容姿のメイとは対照的にライは、長い金髪に堀の深い顔、青い瞳と西洋的な見た目をしている。
身長はメイと同じでかなり高く、全身に筋肉が付いている分ライの方が若干高く見える。
全体的にイケメン俳優の様な見た目をしているため、異性からの人気は高いが同性からは嫉妬する声が度々聞こえてくる。
そんなライが突然現れた事に加え、複数の男達を一瞬で倒した事でメイは困惑する。
「どうして、ここに……」
メイが困惑しながら聞くと、ライは笑って左手の甲を見せてきた。
「こういうこと」
ライの左手には金色の小さな棒の様な物が握られていたが、それよりも目を引いたのは手の甲に刻まれた紋章だった。
ライの左手の紋章はメイと違い、雷と雲を模したような紋章であった。
「ライ……まさかお前も……」
「うん、そうだよ。まさか、兄ちゃんも選ばれていたなんてね」
ライが冷たい視線を向けてくる。
その視線に対してメイは、身構えつつも口を開く。
「あぁ……俺も自分で驚いてるよ……」
緊張しながらメイがそう言うと、ライは雰囲気を一変させてニコリと笑った。
「なに身構えているんだよ、兄ちゃん。兄弟で殺し合う気なんて、サラサラないよ」
「ふぅー、よかった……」
ライが普段の軽いノリに戻って、メイは緊張していた肩を撫でおろす。
そんなメイを見てライは落ち込んだ様な顔を浮かべたが、すぐに張り付いた様な笑顔に戻った。
「それで、兄ちゃんはどの神の後継者なの?」
「えっ? あぁ……一応アレクトが言うには『ハデス』らしい」
急に話題を変えられて困惑しつつメイが答えると、ライは納得したように頷く。
「ハデスかぁ……兄ちゃんらしい神だね。……で、アレクトって誰?」
「誰ってそこに……あれ? さっきまでそこに居たんだけど……アレクト?」
メイが呼びかけると、アレクトが不審者を見る様な目つきでライを見ながら現れた。
「メイ様ぁ……この男はいったい誰なんですか?」
「なにこの、小さくて可愛い女の子!」
「ひぃ!」
ライがアレクトを見た瞬間、前のめりになって近づいてくる。
それに驚いたアレクトは、メイの背中に隠れた後に少し顔を出してライを睨み付けた。
「アレクト……こいつは俺の双子の弟の、ライ。後継者に選ばれたらしいけど、俺と戦うつもりは無いから大丈夫だよ」
「まぁ、メイ様がそう言うなら信用しますけど……」
アレクトは不服そうな顔をしながら、ライに冷たい視線を送る。
「それで、この子がアレクト。まだ軽く説明を受けただけでよく分かってないけど、俺の案内役をしてくれるらしい……」
「はぁ……」
アレクトを紹介すると、ライは深い溜息を吐いて落ち込んだ。
「いいなぁ、兄ちゃんの案内役は女の子で……俺の案内役なんて、暑苦しい男だぜ」
「お呼びですか、ライ様」
ライの言葉を受けて、ハリウッド俳優の様な顔立ちをした執事みたいな格好をした男が現れた。
「呼んでねぇよ……ガニメデ」
「そうですか、申し訳ありませんライ様」
ガニメデと言われた男は、丁寧に深く頭を下げる。
「ライ、その人は?」
「えっ、あぁ……こいつは――」
ライが紹介しようとすると、それを遮ってガニメデは自己紹介を始めた。
「申し遅れました。私、ライ様の案内役を務めさせてもらわせております『ガニメデ』と申します。メイ様、アレクト様以後お見知りおきを」
「出しゃばりやがって……」
ライが不服そうにしているのを気にも留めず、ガニメデは二人に軽く頭を下げる。
「よろしく」
「……よろしく」
メイとアレクトがそう言って手を前に出すと、ガニメデは首を横に振った。
「申し訳ありませんメイ様。後継者同士の戦いを邪魔しないように、案内役は仕える後継者以外に触れる事が禁止されておりまして……」
「そうだったっけ?」
「アレクト……」
ルールを把握してなかったアレクトに、メイが冷たい視線を送る。
「はは……」
「このルールは始まるかなり目前に決まったので、冥界に伝え忘れたのかもしれませんね」
苦笑いをしたアレクトを、ガニメデが笑顔でフォローした。
「そ、そうですよ、メイ様。私はハデス様と、説明しに来られたヘルメス様の言った事は全部覚えてるんですから」
「本当に? まぁいいや、冥界に伝えられてない事が他にもあるかもしれないし……ガニメデ、ルールの説明お願いできる? いきなり襲われたから、ちゃんと説明受けて無くて……」
自分がルールを忘れていた事を誤魔化そうとするアレクトをスルーして、メイは細かいルールの説明をガニメデに求める。
「……ライ様」
説明を求められたガニメデは、少し悩んだ様子でライに視線を送った。
「うん? あぁ……教えていいぞ、兄ちゃんとは一緒に戦いたいと思ってたし」
「了解しました」