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赤鬼

「お久しぶりです、メイ様」

 廃工場に着くとアレスの部下達の見張りをしていたガニメデが、メイ達を頭を低くして迎える。

「久しぶり、ガニメデ……って言っても一週間経ってないか……」

「そうですね、ヂンが攻めてきて以来からですから……五日ぶりくらいですかね」

 メイはガニメデと軽く言葉を交わすと、倉庫の柱に縛られているアレスの部下達に視線を向ける。

「……」

 アレスの部下達はメイの視線に気が付いたのか顔を上げたが、黙ったままメイ達を睨んだ後に再び俯いた。

「ガニメデ、あの日ここにヂンはここに来たのか?」

 アレスの部下達に冷ややかな視線を送ってから、ライがガニメデに問いかける。

「いえ、ヂンはここには来ませんでした」

「そうかぁ……そんでお前ら見捨てられたから、そんな湿気た面してたのか」

 ライは煽るようにアレスの部下達に笑いかける。

 そんなライの横を無言で通り過ぎてメイは、アレスの部下達に近づく。

 メイはアレスの部下達の目の前まで近づくと、腰を下ろして目線を合わせる。

「君達見捨てられたんだね……もうあんな奴に付いていく必要ないだろ? どうだ、俺たちにヂンの情報を教えてくれたらここから解放するよ」

「……」

 メイが光の消えた瞳をしながら笑いかけるが、アレスの部下達は顔を伏せたまま沈黙していた。

「……そうか」

 そう言うとメイは、暗い笑みを浮かべたまま近くに落ちていた錆びついた釘を拾う。

「もう少し太いやつの方がよかったけど……まぁ最初はこれくらいでいいか……」

「貴様、何を……」

 メイの目の前にいたアレスの部下が震えた声で呟くと、メイは冷たい視線を向けて微笑んだ。

「ぐっ、うぁぁぁ!」

 次の瞬間メイは勢い良く腕を振り下ろし、アレスの部下の太ももに錆びついた釘を突き刺した。

 アレスの部下の太ももからは一瞬血が吹き出したが、すぐに釘で塞がれ溢れた血が足を伝って地面に血だまりができる。

「どう、借り物の体だとしてもここまでされたら流石に痛いでしょ?」

 メイは右手で釘をぐりぐりとアレスの部下の太ももに食い込ませながら問いかける。

「うっ、うぅ……」

 アレスの部下は歯を食いしばって痛みに耐え、メイは吹き出した血で右手を赤く染めながら話しかける。

「別に俺は拷問がしたいわけじゃないんだ……ヂンの情報はサファルに聞けばすぐわかるしね」

「じゃ、じゃあ……何がしたいんだ……」

 冷たく落ち着いた声で話すメイに、アレスの部下が苦悶の表情を浮かべながら聞き返す。

「ただ知って欲しいだけだよ、ヂンと君の仲間が殺した皆が味わった痛みと苦しみを……」

 少しイラついた様子のメイは更に深く釘を刺しこんで話を続ける。

「……確かに君らはヂンに捨てられたし、ここに縛られてたから直接皆を殺したわけじゃない……だけど、俺達がここに縛ってなかったら君らも同じ様に殺したでしょ?」

「……」

 問いかけに対してアレスの部下は苦痛に耐えながら沈黙するが、メイは構わず話しかける。

「だからさ、こうやって皆が味わった痛みや辛さの十分の一にも満たないだろうけど……君達にも苦痛を与えることにしたんだ……」

 メイは再び冷たく微笑むと勢い良くアレスの部下の太ももから釘を引き抜き、場所をずらしてもう一度太ももに突き刺した。

「あぁぁぁぁ!」

「殺すのはヂンだけだから安心しなよ……君達を殺そうとすると体の持ち主も殺しちゃうからね。流石にそれは体の持ち主があまりに可哀想だからそこまではしないよ」

 そうしてメイは一人目が痛みで気絶するまで釘を刺し続けた。

 そして一人目が気絶すると今度は二人目の前に立ちはだかり、勢い良く踏んだり殴りつけて足元から順に気絶するまで骨を折っていった。

 メイは十一人いるアレスの部下一人一人に別々の方法で気絶するまで痛みを与えていった。

「皆が味わった痛みはこんなもんじゃないよ……ねぇ!」

 そんなメイをライは悲しそうな顔をして静かに見つめ、アレクトは見ていられないと言った様子で目を逸らし最終的には姿を隠していた。

 アレスの部下全員が気絶する頃には返り血で全身が赤く染まり、怒りの満ちた表情を浮かべるメイはまるで地獄の罪人に罰を与える鬼のようであった。

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