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プロローグ~神々の会議~

 ―― 17年前 ギリシャ神界 ――

 神話の時代が終わって久しく経った現代。

 人々からの信仰が薄れた事と、単純な老いによってオリンポスの神々の力は全盛期に比べて遥かに衰えていた。

 そのことを案じたゼウスを始めとしたオリンポス十二神はこの日、数百年ぶりに集まって会議を開いていた。

 会場であるオリンポス山の山頂では、真っ白な石造りの円形の机に沿って神達が鎮座している。

「これから生まれる人間の子に、ワシらの力を与えて後継者にする」

 会議が始まって早々、真っ白なギリシャ風のキトンに身を包んだゼウスがそう言うと他の神々は騒然とした。

 ヘラクレスの様な自分と人間との子を後継者にするのならまだしも、神の血が一滴も入っていない人間に神の力を与えてその上後継者にしようというのだから当然である。

「何言ってんだよ親父、人間共に力を与えるなんてよ! あいつらに力を与えてロクなことになるはずがねぇ!」

 真っ先に剣闘士の様な鎧に身を包んだアレスが立ち上がり、父であるゼウスに反論する。

 他の神達も黙っているが、アレスと同じくゼウスの意見には反対であった。

「そもそも俺達の力が衰えてきてると言っても、今すぐ誰かを後継者にしないといけないほどじゃないだろ!」

 アレスが反論を続けるが、ゼウスは涼しい顔を浮かべている。

「そう騒ぐなアレス……それとも何か、お前がワシの後継者になりたいのか?」

「えっ……まぁ親父がどうしてもって言うなら、なってやらない事もないけど……」

 ゼウスの言葉に満更でもなさそうなアレスを、他の神々は呆れた目で見つめていた。

「そう期待するなアレス、さっきのは冗談だ。ワシにはお前を後継者にするつもりなど微塵もない」

 ゼウスが馬鹿にした様にそう言うと、アレス以外の神達は全員失笑した。

 一方、笑い者にされたアレスは拳を強く握りしめ、殺意のこもった目でゼウスを睨み付ける。

 その殺気に気付いたゼウスだったが、焦る様子も戦う素振りも見せずに自身の話を続けた。

「まぁそう殺気立つなアレス。お前を後継者にする気はないと言ったが、お前が力を与えた人間によっては主神になる可能性はあるぞ」

 ゼウスの発言で、アレスの殺気は一気に弱まった。

「どういうことだよ、親父……」

 アレスが聞き返すと、ゼウスは少し口角を上げて楽しそうな顔で説明を始めた。

「なに、ただ力を与えて後継者にするだけでは面白くないと思って少し人間共を使って遊んでみる事にした」

「遊び?」

 アレスが聞き返すと、ゼウスは指をパチンと鳴らして机の上にチェスの駒の様な人形を出現させた。

「そう遊びだ、力を与えた人間達には殺し合いをさせてその時の順位によって序列を決定する。最後まで生き残った者には主神の座と褒美として何か一つ願いを叶えてやろう」

 ゼウスが話し終わると、会場は静まり返った。

 そんな中ゼウスの正妻であるヘラが、静かに右手を上げた。

「私ゼウスのアイディアに賛成。数千年ぶりに面白いモノが見えそうだし」

 ヘラがそう言うと他の神達もゼウスの意見に賛成し、先程まで反対していたアレスも最終的にはゼウスのアイディアに賛成することになった。

 そして満場一致で、オリンポスの神々の後継者達による殺し合いが行われる事が決定した。

「それでは準備期間は一ヶ月。その間に各々準備し、一ヶ月後の同じ日に生まれる赤子にそれぞれの力と魂の一部を与える……そして力を解放させてゲームを始めるのは17年後でいいな」

「「異議なし」」

 そうして神達は自分の後継者にふさわしい人間の選別と、力を与える準備を始める為に解散した。

 アレスは自身の後継者に勝たせて、自分を主神の座に就くことを願わせようと考えながら不気味な笑みを浮かべて会場を後にした。



 他の神々も会場を後にし、ゼウスとヘラ、そしてヘルメスの三柱だけが会場に残っていた。

 会場に残ったヘラは何かを思い出した様に、会場を離れようとしていたゼウスとヘルメスを呼び止めた。

「あっ言おうと思って忘れてた。ゼウス、私の後継者はゲームには参加させないから」

「どうして? さっき賛成してたろ」

 ゼウスに聞き返されると、ヘラはゼウスに近付いて腕を組んだ。

「ゲームには賛成よ、ただ私と貴方の後継者が殺し合うのは見たくないの。だから私の後継者は貴方の後継者の恋人にするわ」

「はぁー、そういうことなら分かったよヘラ」

 ゼウスは深いため息を吐いた後、渋々ヘラの要望を聞き入れた。

「ありがとうゼウス」

「だったら帰った全員にヘラが参加しないことを知らせないとな……ヘルメス!」

「承知しました」

 ゼウスが呼びかけると、執事のような格好をしたヘルメスが頭を下げながら返事をした。

「あっ、ちょっと待って。皆には知らせない方が面白そうじゃない?」

「……確かに面白そうだけど、力を与えるタイミングで一人少なくてバレないか?」

 ゼウスが問いかけると、ヘラは妖艶な笑みを浮かべた。

「だったらハデスを参加させればいいじゃない、どっちみち冥界の管理も後継者が必要だし」

「……ハデスかぁ、まぁワシの頼みと言えば参加するだろうし……妥当か」

 ゼウスは少し考えてからヘラの提案を了承し、ハデスを参加させることが決定された。

「そういうことだ、ヘルメス」

 ゼウスがそう言うと、ヘルメスは頭を軽く下げた。

「承知いたしました。それではこれよりハデス様の下へと行って参ります」

「あぁ、くれぐれも他の者には見つからないようにな」

「はい」

 そう言ってもう一度頭を下げると、ヘルメスは一瞬で姿を消して冥界へと向かった。

「会議って言うから退屈しそうだったけど、なかなか面白いことになったわね……今から17年後が楽しみ」

「……そうだな」

 楽しげに笑うヘラに対し、ゼウスはどこか不安げな顔を浮かべていた。

(……まさかハデスが参戦する事になるとは……)

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