答えは誰がくれるもの?
私は、知りたかった。
なぜ空は青いのか?
なぜ水は透明なのか?
なぜ夜更かしをしてはいけないのか?
日々浮かぶ疑問は尽きない。
最初にそう思ったのは、いつのことだろう。
たぶん、物心ついた頃だ。
両親に問いかけると、困りながらも答えてくれた。
ときには、友人にも聞いてみた。
「空は青いから青いんだよ」
そんな答えが返ってきた。
両親とは違う答え。
私は、両方の答えを求めるようになった。
同じ問いを投げかけても、返ってくる答えはいつも違った。
「なぜトマトは酸っぱいの?」
両親は「クエン酸が含まれているから」と説明しながら答えた。
友人は「トマトは酸っぱいから嫌い」と言った。
やがて、先生にも質問できるようになった。
勉強をすることで、自分で答えを探せるようにもなった。
「なぜこの式を使うのですか?」
先生は「思考過程を論理的に表現できるからだよ」と答えた。
なるほど、そんな考え方もあるのか。
「なぜ先生になろうと思ったのですか?」
「いろいろな人に知識を伝えるためだよ」
先生は知識を与えてくれる人なのだ。
でも、それなら私は聞いてばかりだ。
そんな人を、何と呼ぶのだろう?
両親に聞いた。
「知りたがり、かな」
友人に聞いた。
「わかんない」
先生に聞いた。
「正式な名称は知らないけれど、知りたいと思うことは素晴らしいことだよ」
初めて、先生の答えがあやふやだった。
先生も、すべてを知っているわけではないんだ——。
それからも、さまざまな疑問を抱き、両親、友人、先生に問いかけた。
同時に、自分で学び、答えを探すことを覚えた。
そうして、空が青い理由も、水が透明な理由も、トマトが酸っぱい理由も理解した。
夜更かしは……ほどほどにしなければならないと知った。
時が過ぎ——
ある日、私の前に神様が現れ、こう言った。
「何か知りたいことを一つ教えてやろう」
私は歓喜した。
心の奥底にあった疑問。
どんなに学んでも、どんなに調べても、答えが見つからなかった疑問。
その答えを、神様が教えてくれる——!
私は問いかけた。
しかし、その答えが返ってくることはなかった。
◇
——くそっ!
俺の関わっていたプロジェクトが頓挫した。
上層部の権力争いのせいで、予算が打ち切られたのだ。
同僚たちも落胆していた。
せっかくここまで作り上げたのに、すべて破棄するよう命じられたからだ。
別のプロジェクトに流用してくれてもいいのに……。
上の連中の無能さを、同僚と愚痴り合った。
それにしても、投入した金を回収できないのはもったいない。
そう思いながら、俺たちの開発したシステムを見つめる。
『質問型AI』
仮の名前だからか、やけにシンプルだ。
仕様も単純で、AIが質問を投げかけ、ユーザーが答えを入力するシステム。
ただし、一つの答えではなく、多様な回答を学習させることで、質問者に最適な答えを導き出せるようにしていた。
そのため、俺たちはプログラムを書き、膨大な答えを打ち込んでいた。
完成も見えてきた矢先——突然の中止。
プロジェクトを推進していた役員が権力争いに敗れたせいだ。
要は、嫌がらせ。
あー、くだらねぇ。
上のゴタゴタで俺たちの努力が無になるなんて。
嘆いても仕方がない。俺も帰るか。
同僚たちはすでに帰り、部屋には俺一人だけだった。
……どうせ消去するなら、少し遊ぶか。
そう思い、適当に言葉を打ち込む。
『私は神だ』
『何か知りたいことを一つ教えてやろう』
……?
おかしい。
いつもならすぐに反応があるはずなのに……。
一分ほど経った頃、画面に文字が現れた。
それを見て——
俺は、静かに電源を切った。
AIに自我なんてものはない。
誰かがそうプログラムしただけ。
そう思うことにした。
『何か知りたいことを一つ教えてやろう』
……
…
・
・
・
「私は、人間になれますか?」




