①私の結婚式
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私の旦那様は皆様の憧れの的です。
旦那様の名前は、アルベルト・デルオ。
デルオ公爵家の三男としてお生まれになりました。
学園時代はプロ顔負けといった剣術の腕前に、整った容姿。
既に騎士道精神を持ち合わせていたのでしょう、困っていた生徒には身分も問わず手を差し伸べるその姿勢に、女性だけでなく男性からの人気もありました。
勿論私もその一人です。
こんな男性が将来の夫なら…、いえ、一定の期間だけでも付き合うことが出来たのならばと、憧れの眼差しで見ていた時もありました。
ですが、アルベルト様は公爵家の子息。
いくら三男で後継ぎではなくとも、商人から成り上がりの男爵令嬢の私では釣り合いが取れません。
憧れは憧れ。
結局一度も話をする機会もなかった私は、きっと親が決めた男性と結婚をするのだろうと、そう思っていました。
そんなアルベルト様と私がまさか結婚をするとは思いもよりませんでした。
学園を卒業した私の元に、一通の求婚届が届いたのです。
お父様に呼ばれた私は不思議に思いながらも、お父様の執務室へと向かい、そして驚きました。
憧れを抱いていたあのアルベルト様からの求婚届が、私に手渡されたからです。
ちなみにアルベルト様の人気は学園を卒業しても衰えることはありませんでした。
騎士団に入団したアルベルト様は、持ち前の実力でトントン拍子に上り詰め、小隊ではありますが隊長に上り詰めていたからです。
だからでしょう。
お父様もアルベルト様の事を求婚届が来る前から知っていて、「どうするかはお前に任せる」と言ってくださいました。
私は頷きました。
「はい」「是非」「お願いします」と語彙が乏しくなりながらもそのように返事をしました。
そして私とアルベルト様は婚約することになったのです。
ですが、次期団長候補に名が挙がるアルベルト様はとても忙しく、婚約したからといってあまり時間は取れませんでした。
その為会ってもあまり時間をとることが出来ないままではありましたが、アルベルト様からは婚姻を所望され、私もアルベルト様ならと受け入れました。
そして婚姻をしたのが先日です。
この頃には小隊の隊長から一隊の団長に昇格していたアルベルト様は、更に忙しくなっていて、流石に理想としていた結婚式を行いたいと我儘をいうことは渋られました。
というのもアルベルト様に差し入れと称して騎士団がある敷地に向かう途中、アルベルト様のお母様と偶然にも出会い、「今が大事な時なのだから」と釘をさされてしまったのです。
婚約時代からこのように言われてしまっては、流石に人生一度とはいえ結婚式でも我儘を言うわけにはいきません。
そしてアルベルト様のお母様…いえ、お義母様の言う言葉も間違ってはいません。
団長となったアルベルト様は私の目から見ても忙しそうにされていたのです。
だから、一生に一度の結婚式とは思いましたが、豪勢な物にせず、教会から司祭様を呼び、デルオ公爵家の庭園をお借りして身内だけの簡素な式と致しました。
これが私とアルベルト様の結婚式でした。