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②スコットの最愛

「モイモイ、僕たちはずっと一緒にいようね。絶対だよ」


 モイモイことモイラと婚約した時、僕はそう言ってモイラの指先に口付けをした。

 十二歳の子供にしてはませていたかもしれないけど、どうしてもそうしたかった。だってその頃にはもう、僕はモイラを手放せなくなっていたから。


 僕ことスコット・ストレプトカーパス公爵子息がモイラ・ダンドリオン侯爵令嬢と初めて出会ったのは、二人が五歳くらいの頃だった。

 お互いの両親が仲が良かったことと、僕とモイラが同じ年であること、領地が隣同士だったこともあり、もともと仲が良い家族だったが、それから更に家族ぐるみの付き合いが始まった。


 物心が付く頃には、僕はすでにモイラが好きだった。恋愛的な意味で。

 真珠の様な白い髪に珊瑚色の瞳、そして白い肌。知的な眼差し。ちょっぴりツンツンした性格。でも困っている人は放っておけずに手を貸し、でも僕には特別に優しいところ。

 全部好きだ。


 それからモイラは植物、特に毒草や薬草と呼ばれる、普通の貴族令嬢が好き好む草花とは真逆のものに興味を持った。植物図鑑を片手に、庭を散策する日々。

 僕も、外で遊ぶことが好きだったから、遊びに行った時はいつもモイラに付き合った。


 それから十一歳になった頃、僕は毒に倒れてしまう。

 毒と言っても誰かに盛られた訳ではなく、魔蟲に襲われて左腕を刺されてしまったのだ。

 普通なら子供とはいえ大事にはならないのだが、この時僕は風邪気味で抵抗力が落ちていた。だから数日寝込むことになってしまった。刺された左腕は赤黒く腫れ上がり、最悪切断の危険もあったらしい。


 そこへ颯爽と現れたのは、モイラ。


 僕が刺された魔蟲の解毒に効果的な薬草から解毒薬を作ってくれた。調合したのは、彼女の贔屓にしている魔法薬師だったが、その材料を集めたのはモイラだったのだ。

 おかげで僕は回復し、左腕を切断することもなかった。

 それ以来、僕はもっと彼女に惚れてしまい、彼女以外の女性は目に入らなくなった。


 王家からモイラに婚約の打診が来たのは、僕が回復してから数日後のことだった。

 モイラは断ったらしいが、僕は非常に焦った。

 よくよく考えれば、僕たちの世代は女子の数が少ない。なら、今婚約者のいないモイラと、従兄弟である第三王子のリチャードとの婚約話が持ち上がるのは当然だ。

 僕は、急いで父上にお願いし、モイラに婚約を申込に行った。

 そして、了承をもらえた。


 良かった、本当によかった!


 というか、元々、僕とモイラを結婚させる予定だったから、モイラの父であるダンドリオン侯爵は、婚約を断ったらしい。父上もそのつもりだったとか。

 早く言ってよ〜。僕だけ焦ってたじゃないか〜!


 そんなわけで、それから次期公爵の勉強の時間以外は殆どモイラと過ごした。一緒に過ごすうちに僕も薬草に興味を持ち、一緒に研究し始めた。

 そして、栽培が難しいとされる薬草たちを次々に栽培可能にし、お互いの領地の特産品になった。


 おかげで、両家の繋がりは強固なものとなったのでした。


 ★


 それから、僕たちは十五歳になり、王都にある学園へと入学した。

 学園は主に貴族の子息令嬢が三年間通うもので、優秀であることが認められれば平民でも通うことができる場所だ。

 そこでも僕たちは、一緒に過ごす。

 学園長にちょっぴり圧力をかけて、三年間ずっと同じクラスにしてもらったのは内緒だ。


 友人もできたし、特に問題なく過ごせた学園生活。

 一つ気になることといえば、第三王子のリチャード殿下が、モイラに対して当たりが強かったこと。モイラは、昔婚約を拒否したからだと言っていたが、ボニー嬢と親密となっても態度が変わらなかったので二人して首を傾げるばかりだった。

 まあ、おかげで、モイモイに害虫が付かなくて良かったけど。

 だから、卒業パーティーでも穏便にしてあげたのだ。感謝してほしいね、従兄弟くん。


 隣国の王女との婚約話もあったのだが、リチャード殿下に愛する人ができたらしいということで、話はなくなった。それを機に相手の王女も好きな相手に告白して、成就したらしいので特に問題にはならなかった。


 そして、あの卒業パーティーでの出来事。

 なるほど、リチャード殿下は、モイラが自分の婚約者だと思い込んでいたのか。

 それなら、学園でのあの態度も理解できる、かな?

 一度でも、モイラと話し合えば卒業パーティーで恥をかかずに済んだというのに。

 そもそも、たとえ婚約していたとしても、一度もお茶会も夜会もエスコートしていない上、プレゼントどころか手紙のやり取りすらしていないのに、よく勘違いできたな、と。まあ、一度でも手紙のやり取りをしていれば、こうならなかったな。


 結局、全てはリチャード殿下の勘違いだったので、王家からお詫びの手紙と巻き込んだことによる、僅かばかりの慰謝料が僕とモイラの屋敷に届いたが、僕もモイラもお詫びだけ受け取り、お金は返した。

 別に家名に傷がついた訳でもなく、リチャード殿下のアホさ加減が露呈しただけだったからね。


 その後、リチャード殿下は本人の望み通りボニー嬢と結婚し、彼女の家に婿入りした。王都からはかなり離れた所にあるから、彼らに会うのは年に数回程度となるだろう。

 ボニー嬢の家の領地はのどかな田舎で、領主といえど肉体労働に駆り出されるらしく、リチャードも日々酷使されているらしい。リチャード本人は文句はあっても、そういった生活が肌に合っているのか、日々生き生きとしてるらしいし、王都に戻りたがっている様子はないらしい。

 まあ、収まるべき所に収まってくれて良かったのだろう。



 そんなことを思いながら、隣に寝ているモイラの寝顔を観察する。

 書類上の結婚は済んだが、式は半年後。お互い、準備があるからね。

 でも僕は我慢できなくて、すぐにモイラを僕の屋敷に迎え入れ、初日から一緒に寝てしまった。

 モイラも、恥ずかしそうにはしていたものの、拒む事はしなかったので良かった〜。ここで拒否されたら、十日間は立ち直れないからね。


 だから調子に乗って、速攻いただいてしまったのは申し訳なかったと思う。だって、十年以上我慢してたんだよ? そんな相手と一緒に寝るんだよ? 

 我慢なんて出来ないじゃない?

 

「……ん? スコット?」


 視線に気付いたのか、モイラが起きてしまった。


「起こしちゃった? ごめんね、無理させて……」

「──あ」


 寝る前に起きた出来事を思い出したのか、モイラは真っ赤になってしまった。

 そんな彼女も愛おしい。

 いかん、下半身がまた──。


「モイラ、愛してる」

「え? わ、私もスコットのこと、愛してる……」

「よし! 我慢できない(しない)! も一回シよう?」

「は!?」


 そうして、一緒に暮らすようになって毎晩そんなことをしていたら、結婚式の前にモイラが妊娠してしまった。 おかげでドレスをお腹に負担のないタイプに直したりと、ひと騒動あったりしたけど俺たちは幸せです!






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― 新着の感想 ―
リチャード、アホだったけどちゃんと真実の愛ではあった?のかな? いいところに落ち着いたようでよかったです。
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