90 徐々に戻る日常
男ってさ、単純なんよ…。
スタンピードから5日後。
3日経ってもジョンの死を引き摺っていた俺は、昨日一日かけてマリ姉とニーニャに慰められた。
あの手この手でドロドロになって甘やかされた俺は、俺がニーニャに出した条件を自ら破る手前までいき、そこでようやく「このままではいけない!」と立ち直るに至ったのである。
スタンピード後初めての二人との営みだったがマリ姉は言うに及ばず、ニーニャがとにかく積極的でヤバかった。
具体的にはニーニャの纏う雰囲気が未成年のそれではなく、…端的に言ってエロかった。
…いや、それ以前からも俺のオーク棍棒が反応してしまっていてはいたのだが。
それでも何というか…こう、俺に女として意識されようと一生懸命に頑張る微笑ましさがあったというか…。
オーク棍棒を反応させておいて「…さてはオメー、ロリコンだな?」と思われるかも知れないが、マリ姉の魅惑の肢体と外部からの刺激に対する生理的な反応であると言い訳しておく。
…のだが、昨日のニーニャはそういう言い訳が出来ない程、明け透けに言うなら俺の生物の雄としての本能が「この雌を孕ませろ!」と激しく訴えてきていたのだ。
…まさか二人との営みにおいて、マリ姉を見て理性が戻るなどという倒錯した体験をするとは思わなかった。
また、俺が一線を越えなかったことで物欲しそうな顔をしたニーニャに、捕食者の姿を幻視するとは…俺の精神が弱っていたせいだろう。
うん、きっとそうだ。
というわけで弱っていてはいられないことを痛感し、いつまでもクヨクヨしていてもジョンの奴が草葉の陰でニヤつくだけだろう。
そんなこんなでいつもの調子に戻った俺は、昨日以来雰囲気が変わったような気がするニーニャと、ヤり過ぎでちょっと歩き方がおかしいマリ姉の二人を連れ、冒険者パーティー〈白の大樹〉はギルドに顔を出した。
「あっ!皆さんお揃いで。」
「やあ、リタ。」
「ん。」
「リタちゃん、こんにちは。」
ギルドにやって来た俺たちをカウンターの向こうから迎えてくれたリタに、俺たちはリタに各々の挨拶をする。
「丁度良かったです、ギルマスがラストさんに用があるそうです。」
「…そうか。今訪ねても?」
ギルマスが俺に用事があるとは…スタンピードの戦後処理が粗方完了したタイミング的に、俺には思い当たることが一つしかない。
「はい、ラストさんが来たら執務室に通すようにと。
…ついでにマリアさんとニーニャさんもお願いします。」
マリ姉とニーニャもスタンピードで活躍したそうだから、特別報酬でも出るのだろう。
特別報酬の受け渡しは受付で行えるのだが、マリ姉とニーニャでは面倒事が起きる可能性が高い…というか確実に起きる。
だから俺のパーティーメンバーとして、他の冒険者の目が無い執務室で“ついでに”報酬の受け渡しを行うのだろう。
…………………。
…………。
…。
「お、来たな。……まぁ、座れ。」
リタに案内され執務室を訪れた俺たちを見て、何か言いたげなギルマスに着席を促される。
「…よし、お前らに来て貰ったのは他でもない。
スタンピードの功労者の特別報酬についてだ。」
まぁ、予想通りだな。
「お、予想通りって顔してんな?
ならさっさと終わらせるか。」
ごそごそ…
冒険者ギルドに別にそういうのを求めているわけではないが、実にあっさりとした何の儀式的やり取りも無く、おそらく用意されていたであろうお馴染みの革袋を2つ取り出すギルマス。
「んじゃニーニャとマリアの報酬からだ。
マリアは参加報酬100万に加えて、魔物討伐功労で100万追加だ。」
ドンッ、ジャラッ…
袋の膨らみやコインの崩れる音からして、金貨二枚では無く他の硬貨も入っているのだろう。
「ニーニャは参加報酬の100万だな。」
ドンッ、ジャラッ…
意外なことにニーニャには特別報酬が出なかったようだが、袋の膨らみは隣に置かれたマリ姉の報酬袋と変わらない。
つまり、袋の中身は大銀貨が100枚が基本で、マリ姉の報酬袋には金貨が1枚紛れているのだろう。
「んでニーニャの扱いなんだが、今のランクはGランクで固定だろ?」
報酬袋の中身について予想していたら、ギルマスがニーニャの冒険者ランクについて訊ねてくる。
…とはいえニーニャが獣人基準でも未成年者である以上、ギルドの規定でFランク固定なのはギルマスが分からない筈も無い。
「だがニーニャは明らかにランクに見合った実力では無いことが、スタンピードで証明された。
これについてギルド内協議の結果、ニーニャは〈白の大樹〉でのパーティー活動時に限り E ランクと見なされることが決定した。」
実際誰かが答えるまでも無く話を続けたギルマスだが…
「うおおっ、ニーニャ凄いじゃないか!」
「ええ本当に、昇級おめでとう!」
限定的とはいえニーニャの昇級…しかも一段飛ばしの昇級に、俺とマリ姉はニーニャを褒め称えた。
「???……えへへっ…。」
何故俺たちが興奮しているか理解出来ていないようなニーニャだったが、何か凄いことをしたということは理解できたのか、頬をほんのりと朱く染めて控えめに笑う。
「「ングッ…!?」」
そのニーニャの笑顔の破壊力たるや、俺とマリ姉を一撃で行動不能にする程であった。
「今日はやけに寒いな~」なんて思いながら執筆した今話ですが、書き終わって一応熱を測ったら39.8℃だった件。
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