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83 油断投擲

ゲリラ連投


オークA「ブゥ、フゴフゴ?」

    (ナァ、俺ラ空気ジャネ?)

オークB「…フゴフゴピギュ、フゴゴ?」

    (俺ラモ人間ナッタ、主役?)

オークA「プゴ、フゴッ!」

    (ソレモウ、オークナイ!)

オークA&B「「ブヒャヒャヒャッw、…ブフゥ。」」

      (アハハハッw、…ハァ。)

 ジョンを見送りタイマン勝負になった途端、エレファントボアは俺の挑発に乗るように接近して来た。


ドガドガドガッ…!


 突進と言うよりはもう早足と言った方が正しく思える速度のエレファントボア、その横腹に俺はジョンから預った槍を突き出す。


ドッ…


「ブギッ!?」


(む?)


スポッ


 しかし突き出した槍は毛皮と分厚い脂肪に遮られ、脂肪層の下の肉には穂先が浅く入っただけで、エレファントボアが動くとすっぽ抜けてしまった。

 一応「全く効いていない」ということは無いだろうが、奴を倒すにはやはり目や口内などを狙った方が現実的だ。


ズンズンッ


「ブブフゥ~ッ…」


 俺が避けたどころか大したダメージにならないとはいえ反撃までしてきたことに、納得いかな気に鼻息も荒く振り向くエレファントボア。

 いくらボス個体へと至ったとはいえ所詮はボア脳、自身がそれほど弱っていることを理解し切れていなかったらしい。

 

「ブ…、ブフォオオォッ!」


ズンッ!ズンッ!ズンッ!


 一度無駄に体力を消耗したことでその事にようやく思い至ったのか、気合いを入れるように吼えたエレファントボアは“先ほどよりは”勢い良く俺に向かって来る。


(良し、よく狙え…。)


 前進することに全神経を集中していそうなエレファントボアに、俺は槍を入れ替えてタイミングを計る。

 折れてしまった俺の槍だが幸い穂先は健在で、折れたことで投擲槍として丁度良い長さになっている。

 これで狙うのは左目。

 はからずも右目を潰せたことで、左目も潰せば視界を奪うことができる。

 しかしいくら前進に集中しているとはいえ、あまり距離がある内に攻撃しても外されてしまうだろうし、近過ぎても槍を投げた後に俺が逃げられない。

 

ズンッズンッ!


 避けを軸に軽く一撃を入れるのとは違い、さほど速くなくとも今の方が緊張を感じる。


ズンッ!ズ…


 右前脚を踏みしめ、左前脚を浮かせたタイミング。


(今だっ!)


ブンッ…!


 食らえ俺の30万ゴールド!

 

「ブゴッ!?」


 ははっ、今更気付いても避けられまい。

 …と、調子に乗り過ぎたのがいけなかったのか。


グイッ


「なっ!?」


 重心が偏った右側に、更に反るように顔を背けるエレファントボア。


グサッ!


 俺がギリギリ避けられる距離まで粘ったかいあって、投擲した槍は確かにエレファントボアに命中した。

 しかし槍が命中したのは左目では無く、左側の首筋であった。


(誘われた…!?)


 ゴブリンの投擲に、俺が自棄糞で投げた盾。

 エレファントボアは“飛んで来る物体が危険である”と学び、俺が持ち替えた槍を警戒していたのだ。

 目と首、どちらへの負傷がより重大であるか?

 エレファントボアは俺が槍を投げて当たるまで、その刹那の瞬間で視界を優先したということになる。

 …首も生物全般で重要な部位ではあるが、人の槍などエレファントボアからしてみれば小枝のようなものなのだろう。


ブンブンッ、スポッ!


 実際、悲鳴を上げたエレファントボアであるが行動自体に支障は無いらしく、激しく首を振って槍を抜いてしまった。


ピュッ…ピュッ…


 首の太い血管が僅かに傷ついたのだろう。

 心臓の脈動に合わせるような一定のリズムで傷口から血が噴き出るが、その量はすぐさま失血死に至るものでは無い。


(ってヤバ─)


「ブイイイィッ!」


ドッ、グワッ!


 エレファントボアを暢気に観察している場合では無いことに気付き跳び退る俺だが、全てが遅かった。

 

「がはっ…!?」


 『魔弾』など比較にならない強い衝撃と、直後の浮遊感。

 空から地面そしてまた空、上から下へと流れて行く視界。

 そこにいた天を仰ぐエレファントボアの姿を見て、俺は自分が奴にかち上げられたのだと理解した。

 理解したからといって空中では何を出来るわけでもなく、空中遊泳を楽しむ間も無く俺の身体は地面に向かって落ちて行く。


ドスンッ…!


「ぐぇっ…。」


 背中から全身を強打したが、墜落死は何とか免れたようだ。


(この身体じゃなければ死んでいた…。)


 エレファントボアが散々証明しているのが皮肉っぽいが、俺の天然アーマー(呪いのような脂肪)も捨てたものじゃ無いらしい。


「うぐぐ…、いっ!」


 とはいえ本来なら「当たれば終わり」のエレファントボアの攻撃を食らって無事で済むわけは無く、何とか立ち上がると打撲の鈍い痛みででは無い鋭い痛みに襲われる。


「ひゅー、ゴッ!?」


 痛みを落ち着かせるために呼吸しようとして、胸に走った激痛に噎せる。


「っ!…カハッ」


ベシャッ…


 口の中に込み上げてきたものを吐き出すと、それは赤黒い色をしていた。


(これは…、(あばら)がいかれたな。)


「ひゅぅ…、ひゅぅ…」


 必死に空気を身体に取り込もうと呼吸するが、聞こえるのは空気が漏れるような情けない音で、呼吸しているのに逆に苦しくなってきているような気もする。

 負傷も含めて、これではエレファントボアの攻撃を回避は疎か、逃走すら満足に出来ないだろう。


ドスン、ドスン…


 たった一度の攻撃で満身創痍で立つのもやっとな俺を見て満足したのか、エレファントボアが俺に背を向け遠ざかって行く。


(…助かった、のか?)


 突然興味を失ったかのように思えるその行動だが、そもそも何故俺があれ程執拗に狙われたのかも分からない。

 願わくばそのまま森の奥に引き隠って欲しいところだが…。


ドスンッ、クルッ…


 ある程度俺から離れたところで脚を止め、俺に向き直るエレファントボア。

 

「…ふぁっきゅー。」


 俺は異世界語で「くたばれクソ野郎」と呟いた。

 

 


 






 



エレボア「帰るとでも思った?違うんだなぁ。

     NDK、…NDK?」


エレファントボア の 上げて落とすクソムーヴ。

ラスト の 戦意 が グーンと 上がった。

ラスト は 逃走不可状態 になった。



いつも読んでいただきありがとうございます。


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