79 孤・群 奮闘 ※別視点あり
現在の状況
││
↓↓ ││☆オーガ ↓↓
ゴブリン ││○勇者一行 ゴブリン
☆ボア││
左翼部隊 ││ 憲兵隊 右翼部隊
↑↑ ││ ↑ ↑↑
┏弓隊┓ ││ ┏━弓隊━┓
┗━━┛ ││ ┗━━━━┛
※以降、流入した魔物と防衛部隊が交戦
─ 「勇者」ワタル視点 ─
ドゴッ、ドゴンッ!
「くそっ、厄介な…!」
何回か打ち合っては、距離を取って仕切り直し。
ストーリー『旅立ち』編のボスくらい〈ソウルイーター〉があれば余裕で倒せると思っていたけど、やっぱりまだ強化が足りないみたいだ。
「セラフィアさんっ、僕に『剛力付与』を!
ジャンヌさんは撹乱を頼みますっ!」
強化が足りないなら足せば良い。
そして卑怯かも知れないけど、僕達のパーティーにはせっかく前衛が二人いるのだから、有効打にならなくても手数を増やすべきだ。
「はいっ「勇者」様!
彼の者に力の加護あれ『剛力付与』!」
ポワッ…、グッ…!
「良しっ!」
ストーリー終盤に仲間に出来るようになるだけあって、セラフィアさんのバフは効果が高い。
…ただまぁ、お国柄仕方ないのかも知れないけれど、毎度僕を持ち上げるのはどうにかならないかな?
今のエンチャだって、僕に一々返事をせずに魔法の詠唱をした方が早いと思うんだ。
「私は「聖女」様の護衛騎士だ!
こんな戦場のど真ん中で「聖女」様から離れるわけ無いだろう?」
そしてジャンヌさんは僕の指示を拒否。
確かにポッと出の僕より、姉妹同然に育ったセラフィアさんを優先する気持ちは分かる。
でもセラフィアさんが僕に夢中だからって、嫌がらせのように僕に反抗するのはどうかと思う。
「「勇者」、もう一回『ホーリーソード』?やって見せて。」
リズリットさんもリズリットさんで、魔法での援護をそっち除けで僕の観察に余念が無い。
リズリットさんは異世界の知識や「勇者」のスキルの研究を条件に同行してきたけど、同行させるにあたって僕らに力を貸すという約束は守って欲しい。
あと『ホーリーソード』はゲームでは一回の戦闘に付き一回の制限があって、この世界では感覚的に1日は打てなさそうだ。
…有名なゲームの人気キャラと実際に旅を出来るのは嬉しいけど、プレイヤーにある意味絶対服従だったゲームと違って、こんな風にそれぞれの意思で行動するのは一長一短だと思う。
「ガァアアァッ!」
ダンッダンッ!
吼えたオーガが丸太の棍棒で地面を叩く。
オーガは威嚇のつもりなんだろうけど、僕には僕一人を倒せないことに苛ついて地団駄を踏んでいるように見えた。
「ブゴオォッ!」
ドシーンッ…!
僕の左手の後ろで、何故か出現したイベントボスのエレファントボアが暴れている。
「君もムカついているんだろうけど、僕には他にも倒さなくちゃならないモンスターがいるみたいだ。」
エレファントボアはイベント用のボスなだけあって、ステータスがオーガよりも高く設定されていた。
始まりの街に留まっている程度のモブパーティーでは勝てないだろう。
「君程訓練に適したモンスターもいないんだけど、速攻で決めさせて貰うっ…!」
ダッ…!
「ガァア…ッ!?」
強化された脚力による踏み込みは、オーガの反応を上回った。
(討った…!)
─ ニーニャ視点 ─
「キューッ!」
「うわっ!?」
角兎の突進をばたばたと避ける、いつもギルドの酒場に居る男の人。
「チュッチュ~ッ!」
「このっ、…当たらねぇ!」
最近増えた新顔に、偉そうに「冒険者のなんたるか」を話していた(自称)歴戦の剣士のおじさんは、歯鼠に遊ばれている。
(…弱い。)
この人達は皆、ご主人と同じ E ランク冒険者らしいけど、魔物の群れと戦いに行ったご主人と同じ強さだとは思えない。
「プキューッ!」
フッ…
「ニーニャちゃん危ないっ!」
ザシュッ…!
私が小さいから弱いと思ったのか、私に突進してきた角兎を斬る。
(…今まで良く生き残ってた。)
動かなくなった角兎を見て、この危機感の鈍い角兎以下の冒険者に落胆する。
「…何?」
近くに魔物が潜んでいないことをサッと確認して、私を呼んだリタに用件を訊ねた。
「いや、えっと…。」
何故か戸惑ったような様子のリタを見て、私はご主人がリタを気に入る理由が分かった気がした。
「がっはっはっ!
分かってはいたが、ニーニャの嬢ちゃんは強いな!」
豪快に笑ってそう言ったのはリタの父親のギルマス。
ペタン
(…うるさい。)
余りにも大きな笑い声に、私は耳を伏せてギルマスから離れる。
「オットー、今は笑っている場合では無いんだぞ!」
笑うギルマスに注意したのは、憲兵隊隊長のバーンだった。
ギルマスとバーン…この二人を最後の砦に、私達は門前で前から流れて来る魔物と戦っていた。
「『ゴガァアアァッ』!」
「ッ!」
ビョッ、ズサァ…
「お?何だ、ちっこいの。」
森の方から聞こえた恐ろしい声に飛び退った私を、確か…ホラフキーとかいうゴブリンと歯鼠を混ぜたような顔の冒険者が揶揄ってきた。
(ご主人っ…!)
角兎以下の冒険者の中でも更に下の危機感のホラフキー(?)は放っておいて、私はあの怖い声の主と戦っているかも知れないご主人を心配する。
「グアウッ!」
「ひっ…!」
「ウルフまで来やがったぞ!?」
「前の奴らは何してるってんだ!」
歯鼠や角兎に苦戦する冒険者達に、ウルフの相手は確かに大変だ。
「ニーニャちゃん!」
「ん!」
バッ!
マリアの掛け声に合わせて、私は前に出る。
ズバズバッ!
「「キャイィンッ!?」」
私が脚を斬り付けたウルフが2体、悲鳴を上げて止まる。
「久しぶりに遠慮なく行くわ!
火よ、我が意に従い敵を討て『火球× 2』ッ!」
ボッボッ…!
マリアの両手から、それぞれ一発ずつの火の玉がウルフに命中する。
「「ギャワワワ~ッ!」」
あっという間に黒い塊になる2体のウルフ。
私が足止めをして、マリアが魔法で止め。
それは多少の違いがあっても、いつもの狩りのやり方だった。
遅刻スマヌ。
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